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韓国では死語なのに、なぜいま日本でブーム?「オルチャン」の歴史にフォーカスしてみた。

2015 10.28

こんにちは。kakeruの韓国担当、イイヅカミチカです。

みなさん、「オルチャン」という単語を聞いたことはありますか?


日本で「オルチャン」という言葉がメディアに現れ始めたのは、第2次韓流ブームがピークを迎えた2013年頃。それ以降、美容系のWEBメディアや若年層向けファッション雑誌などで、「オルチャンメイク」や「オルチャンファッション」は定期的に取り上げられ、話題になりました。

韓流ブームがすっかり落ち着いた2015年の今でも、女子高生向け雑誌などで「オルチャン」というワードを目にすることは珍しくありません。 日本では「韓国風美少女(イケメン)」といったニュアンスで使われているこの「オルチャン」という言葉、実は発祥元の韓国ではもはや死語となりつつあります。  

しかし、なぜか日本では、今日も「オルチャン」志望の若者たちが、Twitterに自撮りをアップしまくっているのです。  

 

オルチャン自撮りの集まるハッシュタグ「#お世辞でもオルチャンって言ってくれる人RT」は、1日で平均1000件近くも言及されています。また、オルチャンを目指す若者達が集まって作られた「オルチャン団体」なるものも存在するのだとか……。

一体なぜ、今、海を越えた日本で、「オルチャン」文化が再加熱しているのでしょうか? その秘密は、韓国での「オルチャン」文化の成り立ちにありました。

「オルチャン」という言葉の発祥

そもそも「オルチャン」とは、韓国語で「”オル“グル(=顔)」が「”チャン“(=最高)」の略語。つまり、「美男美女」を指す言葉です。2003年ごろにインターネットスラングとして流行し、その後一般社会でも使われるようになったと言われています。

自撮り文化の発展

韓国での自撮り文化は、90年代末~2000年代初頭に流行した「ハドゥリ」と呼ばれるビデオチャットサービスから始まったと言われています。ネットに熱中する若者たちが、ハドゥリ専用のアプリケーションを使い、WEBカメラで撮影した自撮り写真や動画をインターネット上にアップするようになりました。

↑先日入隊した東方神起のユノ(ユンホ)も、その昔、ハドゥリを使って自撮りをしていた模様。

オルチャン角度」と呼ばれる、盛れる自撮りの角度研究が行われるようになったのも、ハドゥリが流行してからのことだそうです。その後、自撮りブームが巻き起こった韓国では、「小型デジタルカメラ」が流行。携帯電話のカメラ機能が向上するまで、若者たちは小型デジカメを持ち歩いていたのだとか。

Photoshopの普及

インターネット黎明期の韓国では、違法なファイル共有掲示板サイトが大量発生(いまだにたくさんありますが…)。違法サイトを通じ、高価なプログラムを一般人が簡単に手に入れることができる環境にあったことで、Photoshopなどのプロ用の画像編集ソフトが若者にも普及していきました。

そして、自撮りで撮影した写真の色味を買えるだけでなく、お肌の色を白くしたり、目を大きくしたり、輪郭を変えたり…魔改造、もとい「奇跡の1枚」を作り出す技術を身につけけていきました。

ちなみに「オルチャン+すっぴん」で画像検索を行うと化粧と画像加工の力は偉大です…。このように、Photoshopの力を借りることで、ごくごく普通の少年少女達も、簡単にオルチャンに変身できるようになりました(もちろん、加工抜きで十分過ぎるほどの美貌を持つオルチャン達もいますが)。そして、インターネットを通じて有名になるオルチャン、通称「インターネットオルチャン」達が大量発生するようになったのです。

元祖SNS「サイワールド」の流行

2000年代中盤、10代を中心とした若者たちの間で流行していたのが「サイワールド」というSNSサービス。現在は風前の灯火と化していますが、最盛期の2007年には会員数が2000万人を超えていました(注:韓国の人口は5000万人)。

サイワールドでは、「ミニホムピ」と呼ばれる、日記やアルバム、掲示板などの機能のついたホームページを持ち、友人のページを行き来して、書き込みをし合いながら遊ぶことができました。日本でいうと、mixiと個人携帯ホームページを混ぜたような概念のSNSです。

↑つい先日、サイワールドの主要機能の一部がサービス終了。WEBサービスは国が違えど諸行無常です……。

当時、若者たちの自撮りのほとんどがこの「サイワールド」にアップロードされていました。実名制の会員サイトだったためなのか、ユーザー達は「ネットに自分の写真をアップする」ことに対して特に危機感をもつことがなかったようです。実際には、公開設定をしていなければ誰でもページを見ることができたんですけどね…。

インターネットオルチャン」の多くも、サイワールド上での投稿を発端に有名になりました。「隣の●●高校の●●って人、オルチャンらしいよ」という噂から、サイワールドのアドレスが友人内で回り、有名になっていくこともよくあったそうです。

特にファンが多かったり、写真が多く出回っているオルチャン達は「有名オルチャン」と呼ばれ、モデル・芸能人デビューしたり、自身のファッションECサイトのオーナーになるなど、リアルの世界でも活躍するようになりました。オルチャンは、当時の韓国の若者たちのインフルエンサー的存在だったのです。また、若くして成功を手にしていく同世代のオルチャン達を見て、「私もオルチャンになりたい!」「有名になりたい!」という承認欲求から、積極的に自撮りを上げる若者達も多かったようです。

 

…さて、勘の良い方は既にお気づきかも知れません。

そう、オルチャン文化は、①写真撮影装置の普及 ②一般ユーザーによる画像編集技術の向上 ③若者間でのSNSの普及(+SNS上での承認欲求の増大)と共に勢いを増す文化なのです。

そして今、日本の若者たちはちょうどそのフェーズにいます。

ケータイ・スマホの保有率が高まるにつれて、誰もが常にカメラを持っているのが当たり前になりました。また、スマホが普及したことで、ガラケー時代には使えなかったPhotoshop並の画像編集アプリをタダで使うことができるようになりました。要は、いつでも誰でもどこでも、盛れた自撮りを撮れる時代が到来したということです。

更に、現在、日本の若者の多くがTwitterなどのSNSを利用しており、その中でも一部のユーザーは「自分の容姿で(SNS上で)有名になりたい」という承認欲求を持てあましています。そんな彼・彼女たちに、かつて韓国で流行したオルチャン文化が、韓流ブーム最後の追い風に乗った今このタイミングで、自然に受け入れられているのでしょう。

「オルチャン」文化の局地的流行は、ある種起こるべくして起きている現象なのです。

ちなみに現在韓国では、サイワールドは「黒歴史貯蔵所」と呼ばれています。先日、SNL研究班・ちゃおたんが前略プロフィールを振り返る記事を書いておりましたが、SNS上での若者間の流行は、国・世代を問わず黒歴史を生産しがちな傾向があるようです。皆様、流行に乗ったSNS投稿にはくれぐれもお気を付けて……。


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