こんにちは、ファッションライターの石井リナです。
ファッションの流行の多くは、パリコレクションやミラノコレクションで発表されたものを多くのブランドが真似していくトップダウン形式で生まれるものですが、日本には原宿系ファッションを筆頭とする根強いボトムアップの文化があります。
原宿系ファッションを取り扱うメディアには、「チョキチョキ」や「TUNE」「FRUiTS」など『人』にフォーカスしたものも多く、きゃりーぱみゅぱみゅさんのような世界に発信されるファッションアイコンも誕生しました。
そんな原宿ファッションカルチャーを語るうえで、ここ数年欠かせなくなってきたのが、ショップのバイヤーや読者モデルなどの「インスタグラマー」の存在。
今日は、その中でも代表的なインフルエンサーのみなさんに、『SNS』についての本音をインタビューしてきました。
(1番左)コンボイ/DOG 店長 兼 バイヤー
LADYGAGAも訪れる大人気ショップDOGのバイヤー兼販売員。原宿のリアルドンと呼ばれるほど、原宿の人々から頼られる存在。DOGの商品をInstagramで紹介する『ハイテンション商品紹介』が面白いと話題。
(真ん中左)カズキ/スピンズ バイヤー
アパレルや美容師を中心に、1回で600人程の集客を誇る、人気クラブイベント『YOLO』のオーガナイザー兼DJとしても活躍。TUNEなどのスナップ雑誌にも常連のファッションインフルエンサー。
(真ん中右)まにたす/NADIA バイヤー 兼 販売員
Instagramのフォロワー数は14,000人以上を誇り、様々な雑誌でも活躍する読者モデル。独特なファションセンスにより彼女が紹介したものが、売れ続ける原宿のカリスマ販売員。
(1番右)ひろみ/NADIA 販売員
ベビーフェイスと独自のファッションセンスで、オーラを放つ読者モデル。Instagram上でのファンとのコミュニケーションを大切にする、等身大なファッションアイコン。
SNSはInstagramしか使わない
リナ:みんな暇なときってスマホでなに見てる?やっぱりSNS?
まにたす:うん、でもFacebookはほとんどみないかなー。Twitterも1日に1回開くかどうかでほとんどインスタ見てる。
カズキ:確かに、ほとんどインスタかな。We♥Itっていうアプリはよく使ってる。お洒落な写真収集してインスタにあげたり、どんなアイテムをバイイングするか参考にしてる。
ひろみ:ほとんどインスタです。Facebookはたまに見るくらい。
リナ:へぇー、そうなんだ。なんでFacebook見ないの?
コンボイ:人に興味ないんですよね(笑)。結婚したとか子供生まれたとか、興味ない。
まにたす: TwitterとかFacebookって地元の友達多くて、興味ない人の投稿多い(笑)。
一同:(うなずく)
リナ:確かにFacebook、Twitter、インスタってそれぞれコミュニティ違うイメージなのは分かるかも。趣味とか感性とかが1番近い人達が集まっているのがインスタだよね。ちなみにインスタのいい所ってどこに感じる?
カズキ:たいていの人がタグが付けられてて、簡単に飛んで見れて、その人のアカウントとか見られるのは便利。
ひろみ:写真メインなSNSだから、他のSNSと違って人の顔を覚えやすい。よくコメントくれる子とか、Twitterだと覚えられなかったけどインスタだと覚えられる(笑)。
リナ:あー、確かにそうかも。ちなみに、インスタやってる一番の理由ってなに?
コンボイ:自己満だね。
ひろみ:うん、自己満ですね(笑)。
カズキ:あと、自分の場合商品作ったりバイイングしたりしているから、それをみんなに買ってほしいと思うからかな。商品をインスタでPRしてる。
リナ:それをショップのアカウントじゃなくて個人アカウントでやるのはなんで?
カズキ:自分で作ってる商品もあるし、本当にカワイイと思うから!
リナ:なるほど、仕事人だね(笑)。ちなみにみなさんハッシュタグは使う?
まにたす:んー、使うけどあんまり(本来のハッシュタグ的な)意味はない。文章として使ってる。もはや身内ネタな感じ。分かるだれかに分かればいいと思ってる。
まにたすのインスタアカウント()。ハッシュタグには本音が見え隠れ?
リナ:あ、その感覚わかるかも。そういう身内ネタの遊びだよね。その日に盛り上がった話とか、何人かにしか分からない様な内容で、一種のコミュニケーションになってるよね。
カズキ:(ハッシュタグは)あんまり使わないかな。フォロワーは増やしたいけど、こいつフォロワー増やしたいんだなとか、がっついてるなとか思われるのは恥ずかしいから、『♯Selfie』『♯Outfit』とか、ブランドの名前とか書かない(笑)。
リナ:そこはそっちの気持ちが勝つんだ!
カズキ:うん(笑)。
リナ:でも、その見栄の気持ちもなんとなく分かるな。
ひろみ:私もあんまりハッシュタグはつけてないですね。でも、髪の毛の色とかネイルとか化粧品とかはハッシュタグで検索します。今の髪色とかもインスタで検索しましたし。
買い物・行く場所を決めるきっかけはインスタ
リナ:ちなみに、インスタ見て買い物することってある?
カズキ:すっごいある!しかもすぐに買いにいきたくなる。友達のお店の場合、すぐ在庫確認する。
まにたす&ヒロミ:全然ある!!!
コンボイ:あるけど、インスタからEC通販で完結はしないかも。お店に見に行くなー。
リナ:でも購買のキッカケがインスタになることはみんなあるんだね。
一同:あるねー!
リナ:確かに、ファッション雑誌見てるような感覚で買い物したくなるよね。みんなアパレル関係で洋服を販売する側だと思うけど、実際インスタ見て買い物しにくるお客さんって多いのかな?
カズキ:すっごい多い。こないだは、まにたすがうちのカラーサングラス買ってくれて、インスタに写真あげてからめちゃめちゃ売上伸びた。特に原宿の有名人たちがまにたすのインスタ見て買いにきて、そのインスタを見たファンの子たちがまた買いに来る、っていう。
コンボイ:うちもインスタ始めて、ハイテンションで商品紹介を動画でするようになってから売上がすごく伸びた。来客は20%位増えて、売上は30%増くらい。
convoy_dogさん()が投稿した動画 –
ハイテンション商品紹介はNAVERまとめにもまとめれるくらい人気。15秒の動画を3時間かけることもあるそう。
まにたす:地方のお店に来れない子とかは、お店に来れなくても、欲しいとか買いたいってコメントすごく来るよ。
リナ:売上130%って凄い。ちなみにカズキくんはアパレルとか美容師の友達とクラブイベント運営してるけど、かなり盛り上がってるよね。集客はインスタだけなの?
カズキ:ほとんどインスタだけかな。Facebookページあるけど全然動かしてないし、HPとかもない。
リナ:それ、すごいよね。
カズキ:もちろん「(お店に)来てね」ってLINEはするけど、情報が集約されてるのはインスタのアカウントだね。盛り上がってる感とかを出すためにインスタ活用してる。
リナ:それ見て来ました、っていう子もいるってことだよね?
カズキ:そうだね。友達が友達連れてくる事も多いけど、インスタ見て来ましたって子も全然いる。
リナ:インスタで集客するにあたって、なにか気をつけてることってある?
カズキ: みんなでイメージ写真撮ったり、物販の撮影をスタジオでするとか、載せる写真にはすごくこだわってるよ。インスタって写真綺麗とかが大事だと思うから。かっこいい人とカワイイ人使うとかね!(笑)
yolo_tokyoさん()が投稿した写真 –
イベントの運営メンバー本人たち(美容師やアパレル店員)によるPR写真。
リナ:そこまで力入れてるのすごいよね。さすがインスタジェニックを気にするインスタ世代だな〜って感じ(笑)。
インスタ発インスタグラマーは「本物」じゃない?!
リナ:最近インスタ発のインスタグラマーって言われる人が増えてきたけど、これについてはどう思う?みんなもフォロワー数多いからインスタグラマーになるのかもだけど。
コンボイ:インスタグラマーはリアルじゃない!セルフブランディングがいくらでもできるものだから、本当の原宿のインフルエンサーではないし、俺は認めたくないな。原宿にいるやつが本当の原宿のインフルエンサー。だから俺!なんだよね。
一同:(爆笑)
まにたす:確かに「なんでこの子がこんなにもてはやされてるんだろう?」みたいな違和感はあるかも。
一同:(うなずく)
リナ:そうなんだ、すごく意外。
コンボイ:フォロワー何千人とかが凄いんじゃなくって、本当のファンみたいな人が何人かいてくれるだけでいいし、もっとリアルな繋がりとかその人の中身を大切にしたい。「フォロワー数=人の価値」ではないでしょ?
リナ:そうだね。みんなすごくインスタ使いこなしてるんで、もっと「SNS大好き!」みたいな感じかと思ってた。
コンボイ:あとそれで言うと、ファッション誌もWEBじゃなくて、この次は絶対紙に戻ると思ってる。雑誌に育てて来てもらったし、紙が好きだから。
リナ:へえ〜、それも意外。私ももともと紙が好きなので、なくならないとは思うけど、デジタルネイティブのみなさんがそんなふうに思っているとは思わなかったなぁ…。
今日は、お忙しいところどうもありがとうございました。
インスタは楽しんで使うけど「インスタグラマー」には違和感
インタビューして思ったことは、彼らの行動や購買はいまやすべてインスタきっかけといっても言い過ぎではないということ。それくらい影響を受けていて、買う洋服も、行くイベントも、インスタを見てから意思決定しているということでした。
ただ、その一方で『インスタグラマー』の様なインスタ発のインフルエンサーの存在、SNSで作り上げられたアイドルたちには違和感を感じるという本音も。
デジタルネイティブな彼らが、『紙媒体』や『直接会うこと』などのリアル体験を大切にしているというところは意外な気もしますが、オンラインだけでなくオフラインのコミュニティでもインフルエンサーとして注目される彼らだからこそ、SNSとリアルのギャップを強く感じているのかもしれないですね。