こんにちは!うのです。
「Instagramの企業活用=アカウントの運用」というイメージがありますが、株式会社エイチ・アイ・エス(以下、H.I.S.)は「Instagramでファンコミュニティを作る」という新しい取り組みに挑戦しています。
H.I.S.は、以前よりInstagram公式アカウント()を運営していましたが、若い女性と交流を深めるのが難しかったそう。そのため、別アカウントとして立ち上げられたのが、旅好き女子のハッシュタグコミュニティ「タビジョ()」です。
フォトジェニックですよね。当初の狙い通り、女性から絶大な支持を得ており、これまでに「#タビジョ」がついた投稿は40万枚を超えています。
どうでしょう、すごくないですか?
そこで今回は、公式Instagramの運用におけるコツや、コミュニティ形成のノウハウなどを、H.I.S. コーポレート・コミュニケーションチーム 丹下陽一郎さんと三瓶佳奈子さんにお話を伺ってきました。
ボリューミーな内容になっていますので、要点だけをおさえたい方は、運用のコツまとめからご覧ください!
ハッシュタグ投稿を増やすコツは、公式インスタグラマーの採用にあり
写真左:丹下陽一郎さん
写真右:三瓶佳奈子さん
うの:半年前は約10万件だった「#タビジョ」のユーザー投稿が、今では40万件まで伸びましたね。何かコツはあったのでしょうか?
丹下:1万件突破まで半年ほどかかったのですが、Instagram運用は忍耐が必要だと実感しました。
それ以降は右肩上がりで、2万件突破までは45日、3万件突破までは30日といったスピードでした。直近ですと投稿が1万件増えるスピードは5日くらいになっています。タビジョレポーターや公式インスタグラマーを選定し、その活動をInstagramで紹介し始めてから、フォロワー数とハッシュタグ投稿数が伸びるようになりましたね。
▼タビジョレポーターの投稿
うの:女子旅や旅女子といった言葉がすでに存在している中、なぜ「#タビジョ」という造語を新しく作ることにしたのでしょうか?
丹下:「◯◯ジョ」という言葉が他のInstagramのアカウントで使われている事例を知っていて、それを参考にした部分もあるのですが、何よりもInstagramが好きな女性たちが、何と呼ばれたら喜ばれるのか、はすごく考えましたね。
うの:公式インスタグラマーを6名選定されていますが、何か選定基準のようなものはあったのでしょうか?
丹下:当初は、「#タビジョ」が付いた投稿写真を紹介し続けているだけでした。そのうち私たちが「いいな」と思う写真を投稿している人が固定化されてきてたんです。その人たちのコンテンツをオウンドメディアの「Like the World」に流用できないかと思いました。そこで、まずは綺麗な海の写真を投稿される石垣島在住の方に「石垣島の良さを簡単な記事にしてみませんか?」と声をかけてみたら、快諾してもらえて。
書いてもらった記事が通常の記事よりもSNSのシェア数が良く、「ユーザーを巻き込む施策は、ユーザーにも喜んでいただけ、且つここにしかない情報を発信できるんじゃないか」と思ったんです。そこで、とくに反響が良かった人と、こちらの施策に常に反応していただける関与度が高い人を、公式インスタグラマーとして選ばせていただきました。
うの:ある程度ハッシュタグ投稿が増えてきたら、次の段階でどのような施策を行えばよいのでしょうか?
丹下:オフィシャルハッシュタグ以外に、派生ハッシュタグを増やすことをおすすめします。タビジョでも、「#タビジョ」以外に「#tabijyo_wallart」や「tabijyo_movie」などの派生ハッシュタグを設けています。
派生ハッシュタグは、分かりやすい投稿テーマにすることで、写真が投稿されやすかったり、コミュニティをより大きくしていけるのではないかと考えています。
「フォロワー数はあえて少ない人も」ーーユーザー投稿紹介で意識していること
うの:最初の頃はどうやってユーザーを見つけ、投稿紹介の許諾を得ていましたか?
丹下:立ち上げ当初は「#タビジョ」がついていない投稿でも、タビジョの世界観にあっているアカウントを見つけたら、コメントでアプローチしていました。ただ途中から、Instagramのユーザー数が急激に増えたからか、コメントに気づかれずスルーされやすくなっていると感じたので、DMを送るようにしました。
「#タビジョ」のついた投稿が一定数集まるようになってからは、ハッシュタグがついた投稿の中から選ぶようにしています。
▼タビジョのInstagramアカウントは、すべてユーザーが投稿している写真
うの:DMで許諾を取る際、ユーザーの反応はいかがでしたか?
丹下:「#タビジョ」の投稿が1万枚超えるまでは結構そっけなかったです(笑)。最近は「タビジョが憧れでした!」とか、「リグラムされるのが今年の目標でした!」と仰ってくださる方もいて感動しています。SNSはよく企業とユーザーの双方向のコミュニケーションが大事だと言われますけど、なかなかここまで皆さんのお声を実感できたことはありませんでした。タビジョを運営してお客様に喜んでいただけて本当に嬉しいです。
うの:リグラムする投稿を選ぶ基準はあるのでしょうか?
丹下:とくにレギュレーションは設けていませんが、「#タビジョ」がついた投稿の中から何をリグラムするか迷ったときは、フォロワー数が多い人ではなく、むしろフォロワー数が少ない人を選んでいましたね。その方が喜んでいただくことも多く、タビジョを好きになってくれる可能性が高いと感じましたので。ただ、フォロワー数よりも、私たちとのコミュニティとの関わりを最重要視しています。仕事の案件が多い方や、関わりがそこまで密じゃない方を選ぶことは少ないかもしれません。
Instagram上でのコミュニティ形成はリアルイベントが効果的
うの:タビジョを招待するリアルイベント(MEET UP)を頻繁に開催されていますよね。どのような目的でリアルなコミュニケーションの場を設けていますか?
丹下:リアルイベントの一番の目的は「コミュニティ強化」です。Instagram上でアカウント名で呼び合っていたような方々が、実際にMEET UPで会われると、一気に仲が深まるんですよ。タビジョ同士の交流を後押ししたいと思ってます。
▼MEET UPの様子
▼イベント後にMEET UPの模様を参加者が動画にして配信
うの:タビジョ同士で仲良くなって、一緒に旅行に行ってくれるといいですね。
丹下:そういうケースもでてきているようです。Instagram上のタビジョコミュニティからMEET UPを通じて親しくなり、まずは都内のカフェで何度か会って、バリ島に旅行に行かれたという話をうかがいました。こういうケースが増えていくと、リアルとSNSを上手く連動させられて非常に有難いなと思います。
タビジョへの関心度を高めるためにInstagram Storiesを活用
うの:タビジョレポーターがInstagram Storiesを活用して動画を発信していますが、なぜこのコンテンツをあえてStoriesで発信しようと思ったのでしょうか?
丹下:Instagram Storiesは通常投稿とは異なる切り口から、旅をするきっかけを提供することを目的にしています。よりリアルタイムかつ、臨場感のある表現で情報を発信できれば、タビジョへの関与度が高まると思い、始めました。
うの:H.I.S.のオウンドメディア「Like the World」で記事をアップしたときも、Storiesでお知らせしていますよね。
丹下:Instagram Storiesから記事への誘導はできている実感がありますね。以前は、新着記事を通常投稿でお知らせしていましたが、エンゲージメントは低くて。しかし、Instagram Storiesが実装されてからは、新着記事のお知らせはInstagram Storiesに委ねています。すごく反響が高いんです。
▼InstagramStoriresの「もっと見る」ボタンで記事誘導
うの:Instagramには通常の投稿、Instagram Stories、LIVE配信の3つの機能がありますが、どのように使い分けていますか?
丹下:Instagram StoriesとLIVE配信を使い分けている感覚はありません。LIVE配信に関しては、旅ならではですが、時差の問題もあって適切なタイミングで見られていない感覚があり、配信方法はもっと考えていかなければいけません。また、LIVE配信でなくてもIstagram Storiesで事足りることもあるので、使い分けの線引きも明確にしていきたいですね。
うの:タビジョレポーターや公式インスタグラマーのLIVE配信やStoriesは普段からよくご覧になっていますか?
丹下:見ていますね。魅力がある、影響があるインスタグラマーを観察していると、写真の投稿とStoriesを上手く使い分けている人が多いです。LIVE配信は深夜のラジオと似ていて、お葉書紹介コーナーのように、誰かが質問して、配信者がそれに答えて会話を繰り広げるという。「今日は誰と飲んだの?」とか「最近お化粧変えました?」とか、たわいもないやりとりにコンスタントに返している人のほうが、エンゲージメントが高くなりやすいなと。
タビジョのコミュニティ形成によるビジネスインパクトとは
うの:今年から、話題のフォトジェニックスポットを巡る「タビジョツアー」の販売が始まりましたが、反響はいかがですか?
三瓶:おかげさまで、タビジョツアーの売上は好調です。もっとも売れているのは、オーストラリアのメルボルンを周るタビジョツアーです。
▼メルボルンを旅するタビジョレポーター
三瓶:インスタ女子の「人と違う体験をしたい」とか「写真を投稿して自己ブランディングしたい」というニーズを叶えることを意識して、ツアーパッケージを提案しています。タビジョツアーの売れ筋ベスト3はメルボルン、ゴールドコースト、ハワイの順番なんですが、オーストラリアが上位を占めるなんて、普通のH.I.S.の順番とはまったく違うんです。フォトジェニックなカフェが多い韓国がランクインしていないって意外じゃないですか?
うの:すでに人気がある韓国ではなくて、人とは違う写真を投稿できるオーストラリアが選ばれているんですね。
三瓶:そうなんです。そういう意味では、インフルエンサーの方々が、オーストラリアの新たな魅力を開拓してくださっていますね。オーストラリアといえば、コアラやエアーズロックのイメージが強いかもしれませんが、実はメルボルンって、パリよりもカフェが多いといわれているくらい、カフェ文化が根付いているんですよ。
うの:実際にタビジョツアーで旅行に行かれる方は、20代~30代の女性が多いのでしょうか?
丹下:意外だと思われるかもしれませんが、実際にタビジョツアーを購入されるのは50~60代の方もいます。店頭でおすすめの旅行先を尋ねられた際に、販売スタッフがいくつかツアーパッケージをご紹介するんですね。その際に、ビジュアルが良いタビジョツアーを選ばれるケースが増えてきています。そのため、年齢問わず、ビジュアルで旅先を選ぶということは新しい旅行の見つけ方なのかもしれません。
うの:購買の可視化は進めていますか?
丹下:タビジョツアーには独自のツアーコードがありますので、そのツアーコードを細かく集計するようにしています。今週どのくらい売上があがったとか、このときまでにはこのくらい売上を目指そうとか目標をもってやっていますね。
現在、フォロワー数やエンゲージメント率の指標は追わずに、月間の売上をKPIとして見ています。Instagram経由での購買を推進しており、社内での期待も高まっていますね。
これから期待しているのは、PinterestとYoutubeの活用
うの:すでにタビジョはコミュニティとして確立していると思いますが、次はどこに向かうのでしょうか?
丹下:タビジョはInstagramのコミュニティというイメージが強いと思いますが、そこのみから脱却して、いろいろなメディアでふさわしいコミュニケーションが取れるようなコミュニティに発展させていきたいと思っています。PinterestとはMEET UPを開催し、さらにYoutubeにて「タビジョチャンネル」をまもなくオープンします。
※編集部注釈…「ハッシュタグ検索できないことは、Pinterestが解決してくれるかも?」で紹介している通り、今、Pinterestブームが再燃しています。
▼PinterestでのMEET UPの様子
▼まもなくオープンする「タビジョチャンネル」の動画一例
丹下:日々、タビジョたちのコメントを見ていると、「これからは動画だよね」という声が結構あったんです。そこで開催したのが、タビジョ向けに動画の作り方を学んでいただくイベントです。今まで何度もイベントを実施していましたが、動画の作り方のイベントが1番好評でしたね。
うの:ドローンで有名なDJIさんと動画コンテストを実施していましたよね。
丹下:そうなんです。「オズモモバイル」というスマホで動画を撮るときに便利なアイテムがありまして、タビジョレポーターに活用して頂いて、動画レポートを増やしています。
▼オズモモバイルで撮影した動画はこちら
うの:見た目は自撮り棒の頑丈版みたいですね。スマホでもここまで綺麗に動画が撮れるなんて…!
丹下:タビジョレポーターさんに向いていますよね。
うの:ユーザーの旅動画投稿が増えていきそうですね。今後の展開もすごく楽しみにしています!
最後に
運用のコツまとめを再掲します。
今回のインタビューを踏まえて、Instagramの企業活用には様々な手法があることが分かりました。ブランディング目的でInstagram運用を実施している企業はたくさんあるかと思いますが、H.I.S.のようにユーザーを巻き込んだコミュニティ形成もブランディング手法の一つではないでしょうか。
先日、国内MAUが2,000万人を突破し、ますます進化を遂げるInstagram。
こちらの記事で、ケビン・ウェイル氏(Instagram 最高製品責任者)が、Instagramとネット通販とを連携させる取り組みを「日本でも近日中に始める」と明言していました。
今後のInstagramは、動画の活用と購買への導線づくりが鍵となりそうですね。
引き続き、Instagramのトレンドを追っていきます! それでは、また。
**お問い合わせはページ下部の「お問い合わせ」よりお待ちしております。