カワイイだけ、写りがいいだけじゃダメ――バロックジャパンに聞く、インハウスインフルエンサーの可能性

2019 2.27

こんにちは。kakeru編集部の珍田(ちんだ)です。

普段はインフルエンサーマーケティングを中心に活動しております。数年前には聞き覚えのなかった「インフルエンサー」という言葉が一般化し、プロモーションやマネジメントなど、インフルエンサー事業を行う会社や代理店は年々増えています。

一方で、消費者側もインフルエンサーによる商品紹介に対して、本物かそうでないかを見極める目も肥えてきました。そうしたなかで、インフルエンサーも「本当に自分が良いと思うものだけを発信している」と公言する方も出てきています。

インフルエンサー自身の世界観にファンが生まれ、購買に繋がっていく「インフルエンサーマーケティング」は、今後どのように回っていくのでしょうか?

そんな中、自社でインフルエンサーを育て、自社のブランド価値をインフルエンサーの発信とともに高めているアパレル企業があります。 MOUSSYやSLYなど10代~20代の女性に圧倒的な支持を得ているアパレル企業・株式会社バロックジャパンリミテッド(以下、バロックジャパン)では、ビジュアルスタッフと呼ばれる「ショップ販売員兼インフルエンサー」を自社で育てています。 その中には、Instagramで27万人のフォロワーを持つ伊原葵さんも在籍し、彼女が紹介する自社ブランドは即日売り切れるなどその影響力は絶大です。

今回、株式会社バロックジャパンリミテッドでSNSマーケティングの専門部署を立ち上げた、EC事業本部 E-マーケティンググループ・松本つかささんに、自社でインフルエンサーを育てることのメリットやノウハウを伺いました。

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松本つかさ:
株式会社バロックジャパンリミテッド EC事業本部 E-マーケティンググループ
北海道生まれ、横浜育ち。高校卒業後に美容専門学校へ進学するが、美容師にはならず2008年3月に「スライ(SLY)」横浜店の販売員となる。さまざまな店舗を渡り歩き、ルミネエスト新宿店で働いた後、2012年7月から本社勤務に。「スライ」事業部のSNS運用担当から始まり、2018年、SNSチームのグループリーダーに。

認められるまで3年。社内初のSNSチームができるまで

珍田:本日はよろしくお願いいたします! まず、どのようなお仕事をされているか教えていただけますか?

松本:SNSチームのグループリーダーとして、バロックジャパンの主要ブランド(一部を除く)を担当しています。メンバーはアルバイト・インターンを含め8名で、ブランドごとのSNSのクリエイティブや運営管理や、ビジュアルスタッフと呼ばれるインフルエンサー兼販売員のサポートを行なっています。

珍田:どういった経緯でSNSチームを立ち上げたのでしょうか?

松本:立ち上げたのは6~7年前で、私はもともとSLYのショップスタッフをやっていました。 その頃は、Instagramではなく、Facebookが主流でした。ショップスタッフとして働く傍らFacebookにスナップ写真などを載せていたんですが、その反応がよくてSNSを使ったプロモーションは伸びていくと確信しました。すぐに立ち上げるべきと思い、SLYの営業部内でSNSの運営をスタートさせました。

珍田:はじめは一つのブランド、かつ営業部内で立ち上げたんですね。

松本:将来的には他ブランドも立ち上げて専門の部署を作りたいと思っていました。ブランドによってマーケティングの差もあったんですよね。そこからInstagramが急速に普及していって、SNSの必要性が社内にも浸透していき組織化していったという経緯ですね。

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珍田:SNSマーケティングをスタートさせてすぐに結果が見え始めましたか?

松本:いえ、最初の数年は結果が見えづらかったですね。ここ3~4年ほど前からSNSからECショップや実店舗への導線が強くなってきたと感じます。長くInstagramをやっているのでフォロワーが蓄積されてきたことや、情報発信源が雑誌などの紙媒体からSNSに移行したことが要因だと思います。

珍田:SNSマーケティングの効果について、どういった点に手応えを感じていますか?

松本:SNSだけで購買が発生している点ですね。ビジュアルスタッフたちに投稿してもらった商品が次の日に売れたり、自社ECショップのデータを見てもSNSからの流入による効果が明らかにでています。

ビジュアルスタッフが発信することでブランドイメージが継続していく。カリスマ店員の必要性とは?

珍田:バロックジャパンさんは、社内インフルエンサーとして、店舗の看板スタッフを”ビジュアルスタッフ”として採用されていますよね。どのように選出しているのでしょうか?

松本:ブランドによって違いはあるのですが、社内でオーディションをして選んでいるブランドもあります。 自薦他薦は問わず、とにかくやる気のある子を選んでいますね。カワイイだけ、写りがいいだけじゃダメで、大事なのはSNSが好きなこと。

店舗での接客もあるので、両立できずに「明日も投稿しないと……」と追い込まれて挫折する子もたくさん見てきました。

珍田:ビジュアルスタッフのケアやマネジメントも松本さんのチームでされているんですよね?結構大変なのではないでしょうか……。

松本:そうですね(笑)。365日ずっと張り付いていますね。ファッションが好きで楽しくやれて、向上心があることが必要不可欠なので、彼女たちにいかに向上心を持たせるかを日々意識しています。

珍田:なるほど。ビジュアルスタッフは店舗とSNSの2つの接客があると思うのですが、どのように評価をしているのでしょうか?

松本:評価は、店舗販売員としての評価とビジュアルスタッフとしての評価を分ける仕組みにしています。後者は本社で評価していますね。

珍田:そういった体制はSNSマーケティングの部署ができてからすぐに整えられたのでしょうか?

松本:いえ、徐々に作っていきました。はじめの頃は「小売なのに自撮りばっかりあげて」と、社内でも言われることがありました。

ですが、5年くらい続けていくうちに売り上げが伸びてきて、「彼女たちはブランドに重要な存在」と必要性を感じてくれるようになりました。最初の3年はいつも携帯ばっかりいじっていて、遊んでるように見えていたと思います(笑)。

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珍田:最近では、フォロワー約27万人のビジュアルスタッフである伊原葵さんが注目されていますよね。

伊原さんはフリーモデルとしても活躍されていますが、社内ではどういった位置付けなのでしょうか?

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松本:葵ちゃんはバロックジャパン全体のアンバサダーといった感じですね。もともとは神戸の三宮で働く販売員でした。自発的にSNSをはじめて彼女自身で研究して、フォロワーが伸びて行って、オファーが殺到して本社のサポートが必要となって東京に出てきました。

葵ちゃんのInstagramでは自社のブランドだけではなく、彼女が本当に好きなものを紹介しています。 あと、社内にはYouTuberとして活躍している子もいます。かんだまという子なのですが、動画を1本アップするだけで自社ECサイトのランキング上位を総なめしてしまうほどの影響力を持っています。

珍田:すごいですね!独立することも容易にできるのではと感じてしまいます。

松本:おっしゃる通りで、ビジュアルスタッフの必要性が社内で理解された頃に、今度はビジュアルスタッフが会社を辞めて独立してしまう、ってことが起きたんですね。だからこそ、葵ちゃんのように働きながらインフルエンサーとしての環境を作れるように体制を強化してきました。

珍田:なるほど。だからフリーでの活動も認めているわけですね。社員のインフルエンサーを育成することの一番のメリットはなんなのでしょうか?

松本:彼女たちによって、バロックジャパンのイメージがずっと継承されていくことですね。彼女たちがバロックジャパンの社員として発信してくれることで、あのスタッフみたいになりたいからわたしも働きたいと思ってもらうことが増えています。

ブランドの継続には、常に次世代が憧れてるというサイクルが大切です。彼女たちが発信により、半永久的にこのサイクルが続き、ブランドも継続していくと思っています。そのために、社内体制を強化してサポートしていくことも大切です。

珍田:ブランドイメージの継続や、人材採用にとても良い影響を与えているんですね。

松本:そうですね。求人サイトや自社サイトで情報を流すよりも、Instagramのストーリーで求人を流す方が断然効果的です。今の若い子たちは、マルチな才能に惹かれる傾向にあると思っていて、「販売員なのにインフルエンサー」というギャップに、共感と憧れが生まれるのかなと思っています。

インフルエンサーのパーソナルトレーナーという仕事。発信力をつけることで会社も個人も可能性が広がっていく。

珍田:具体的にどうやって彼女たちのマネジメントを行なっているのでしょうか?

松本:目標設定は各々個別で設定しています。年内にフォロワー数を何万人にしよう、など常日頃から目標を共有し合っていますね。特に同じ年頃の女の子のフィードバックは効果的ですね。

珍田:なかなか能動的に動かないようなスタッフの方々はどのように対応しているのでしょうか?

松本:もちろんこちらも全力でサポートはします。とはいえ、発信をすることが苦手な子や活動を続けた上で向いていない子にはやめてもらうこともあります。やっぱりSNSが好きでやる気がある子たちがグンと伸びていくんですよね。なので、常に新人発掘には目を向けていますね。

珍田:そういったビジュアルスタッフのSNS運営やサポートなど、属人的な感性が必要な部分もあると思うのですが、どのようにノウハウをチームで共有しているのでしょうか?

松本:現在30名前後のビジュアルスタッフをSNSチームで振り分けており、写真の撮り方や投稿の工夫など、基礎はマニュアル化して共有しています。それ以外の部分は人によって伸ばすべき部分も違うので、LINEグループを作ってその子にあった提案を日々していますね。

珍田:まるでインフルエンサーのパーソナルトレーナーのようですね!ちなみに、社外のインフルエンサーを活用される場合もありますか?

松本:ありますね。instagramのDMやパーティで知り合ってお願いすることが多いのですが、その場合もバロックジャパンの商品を好きな方に紹介してもらうことを基本としています。1~2ヶ月に1回は社外の子にお願いをしてますね。

珍田:実際に社外のインフルエンサーを起用するとき、どういったことを重視されてますか?

松本:その子の世界観を重視し、「この子に着てもらったら素敵になるな」って思えた子にお願いをします。そのために、ブランドの世界観のプレゼンも、ひとりひとりにしています。そこがズレてしまうと、その子自身や、フォロワーのみなさんにとってもよくないですし、ブランドにとっても効果的じゃなくなってしまいます。ブランドとインフルエンサーの世界観がうまく交わることが大切ですね。

珍田:松本さん自身は、ビジュアルスタッフとしてのインフルエンサーを育てていくことに、どういった思いを持たれているのでしょうか?

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松本:他のインフルエンサーに埋もれない真の影響力と個性を身につけてほしいと思っています。揺るがない影響力を持っていれば別の媒体でも活躍できるし、その子自身の可能性が広がっていきます。たとえば、最初はビジュアルスタッフをしたいだけだった子が発信力を身につけると、視野が広がって夢ができていくんですね。ブランドを立ち上げたいとか、デザインをしたいとか。私たちがサポートをすることで、彼女たちがなりたい姿の後押しをしてあげられる。そういう思いで彼女たちと向き合っていますね。

珍田:たくさんのインフルエンサーで溢れる時代だからこそ、真の影響力を持つためにサポートをしてくれる体制というのは欠かせないことだと思います。最後に、今後どのようにSNSを活用していくか展望はありますか?

松本:動画に力を入れていきたいですね。媒体はまだ検討中ですが、YouTubeやIGTV、ストーリーに最適化した動画制作をやっていきたいと思っています。シーズンカタログを紙媒体で作っていましたが、それを動画やInstagram用データに最適化するなど、時代にあった施策を常に実践していきたいと思っています。

珍田:常に時代を見つめ、若い女性に人気のあるブランドを作り続けるバロックジャパンの今後の施策も注目していきます!今日はありがとうございました。

まとめ

自社で育てているからこそ、簡単にインフルエンサーを変えるわけにはいきません。そのためには、彼女たちと密なコミュニケーションをとり続けることによって、ブランドとしても、個人としても発信力が高まっていくのだと思います。

また、自社でインフルエンサー育成を行わないにしても、インフルエンサーを起用する際にフォロワー数やリーチ数、エンゲージメント率といった「数字」だけをみるのではなく、1人1人の得意分野を知り、密なコミュニケーションをとることで、適切なインフルエンサーをアサインしていくことが、改めて大切だと感じました。

これからインフルエンサーマーケティングを検討している企業や代理店の方は、インフルエンサーのパーソナルな部分にも注目されてみてはいかがでしょうか。

 

Interviewer 珍田明裕
Writer 前田さほ
Photo きょーいち
Design 會川誠也


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