高まる中国ビジネスの需要から、これまで中国に触れる事のなかった人も関わる機会が急増している。だが、現地の言葉も感覚もわからないままでは不安である。
今後触れるであろう中国のリアルな生活事情を初心者にもわかりやすく、日常会話にのせて紹介していきたい。
主人公は、ミレニアルズ世代の二人の女の子。
彼女たちのリアルな会話にも注目してほしい。
主な登場人物
陳さん 23歳 独身 日本在住。
新卒で来日。帰省するたびに最近のトレンドをチェックしている。
今回の連載の狂言回し的な役割であり、本編は中国の春節(旧正月)後に帰省した彼女の視点から現在の中国事情をお届けする。
朱さん 25歳 独身 上海在住。
上海在住。陳さんの元ルームメイト。中国のトレンドに詳しい。
移動はやっぱり滴滴(DIDI)?
その日久しぶりに上海に帰った私(陳)は朱さんと食事に出かけた。
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「朱さん!久しぶり!」
「今日は近所に新しくできたフォトジェニックなカフェに行こうよ」
「いいね、どうやっていく?自転車?電車?滴滴する?」
「OK、私が呼ぶね」
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最近の中国都市部での移動手段は大きく3つある。
遠くに行く時は電車、近場や自宅から駅までの道のりは自転車(シェア自転車)、それ以外は車。
ここで紹介したいのが「滴滴(DIDI)」である。
画像出所:http://www.xiaojukeji.com/news/newslist
滴滴とは北京に本社を置く中国の配車サービスアプリで2012年にサービスを開始。それ以来、配車、相乗り、タクシー手配、代行等あらゆるサービスが包括され瞬く間に全国に普及。
生活者の「タクシーを呼ぶ」というセリフでさえ、いつの間にか「“滴滴“しよう」という固有名詞に進化した。
呼べる車は、多様性があり、乗り乗車か単独乗車の選択も充実している。
画像出所:http://www.xiaojukeji.com/news/newslist
なかでも面白いのが車の代行サービス。
夜になると繁華街や飲食街周辺で滴滴の代行ユニフォームを着たスタッフが電動自転車や電動キックボードで街を徘徊している。代行する際は電動自転車を折りたたみ、トランクに入れて代行してくれる。とても便利である。
後述するが、もちろん支払いはWeChatPayかAlipayで解決する。
画像:筆者撮影
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「ありがとうございました。いい評価つけてくださいね」
「はーい」
対応のいい運転手に陳さんは思わずアプリの評価を満点にした。
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▶▶DIDI公式HP
送金も配車もチケット購入もSNS!?
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お腹いっぱい中華を食べた二人。
「いくらだった?」
「20 ! 10元とばしといて」
「ありがとう (WeChatでピピピ….っと)送った!」
「店もフォトジェニックだったけどご飯も美味しかったね」
「ね!ご飯の写真、タイムラインにあげたらいいねめっちゃきた!」
「え!?ずるい私もアップするもん」
「移動しながらやろ(笑) 滴滴呼ぶね!」
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彼女たちの日常生活で行われる金銭のやりとり、写真のアップロード、タクシーの配車、それらを担うのが微信=WeChatである。
よく日本ではWeChat=LINEと比較されがちだが、WeChatの機能はLINEをはるかに超えている。利用者数全世界約7億人!といえば壮大だが、実際どういうものなのだろうか。
こちらがWeChatの画面だ。(スライドできます)
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「ねえねえ朱さん、WeChat とWeiboってよく聞くけど、どう使い分けてるの?」
「基本はWeChatで生きてるね。“チャットが出来る財布”みたいなもんかな。タクシーを呼んだり、お会計したり。仕事のやり取りも彼氏との喧嘩も全部WeChat(笑) …あ、私はアカウントを仕事用とプライベート用で2つ持ってるよ。ほら、会社の人にプライベートのタイムライン見られたくないじゃん!あと、アカウントごとに登録してる銀行カードも分けてるよ、乗っ取られた時のリスクヘッジかな!」
「なるほどね。WeChatはマルチアカウントを使い分けてるんだね。Weiboは?」
「Weiboはやってる人しかやってないかな。アカウントはみんな持ってるけど、WeChatのタイムラインが流行ってからは、あんまり更新しなくなった気がするけど、よ。でもトレンドとか口コミ情報は見に行くかな。あとは、インフルエンサーを見に行くっていう感じ。私は好きな芸能人とかモデルといっぱいフォローしてみてるよ!」
「なるほどね〜(WeChatは生活インフラで、Weiboはメディアっぽいのかな)」
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Weiboの画面はこのようになっている。(スライドできます)
お年玉もSNSで荒稼ぎ!?
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「ところで、最近正月だったけど、SNS周りで何か面白かったことある?」
「今年はWeiboのお年玉のばら撒きキャンペーンがあったよ!」
「え?お金がもらえるの!?」
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2011年にローンチしたWeChat、2013年にWeChatペイメント機能が実装され、2014年正月の「お年玉キャンペーン」が火付け役になり、ペイメント機能とSNSでの送金が一気に普及。
Weiboのローンチは2009年と実はWeChatよりも早かった。だが、Twitterのようにモーメントの投稿がメインで、それ以外の機能が色々と実装され始めたのは去年頃からだった。
そんな中、2018年の春節にWeiboがお年玉キャンペーンを打ち出した。(スライドできます)
企業・タレント・個人が現金をタイムラインにアップ。タイムセールのような仕組みで、決められた時間にクリックをするとランダムでお金がもらえる。まさにお年玉争奪戦である。企業は現金以外に自社で使えるサービス特典も配布可能でPRにはもってこいの施策だった。
また、このお年玉キャンペーンは、送金長者と入金長者がランキングで発表される。 企業最高額バラマキ最高額は141万元! 個人のバラマキ最高額は5万元だ。
(2018.3.1時点)
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「わー…規模が違うね….企業はまだわかるけど、個人で約100万円も放出してるってこと?う〜ん。もしかして中国のインフルエンサーの稼ぐお金も桁違いなの?」
「じゃあその話はまた今度ね!(笑)」
続く。
(イラストレーター:)