すべては、今いるファンに楽しんでもらうために。ケビンばやしさんが考えるファンベース

2019 7.8

クリエイターにとって、一番大切なことは何でしょうか?

作品をつくるための才能、時間、スキル、お金etc…。どれも大事なことですが、日々大量のコンテンツが生み出されては消費される世の中では、どんなに時間やお金をかけて作品をつくっても、あっという間に忘れられてしまう可能性もあります。

そんなときに、人々の記憶に残り愛され続けるにはどうすればいいか、悩んでいるクリエイターは少なくありません。

「ファンベース」の著者・佐藤尚之さんは、情報過多な時代には「ファンベース」の考え方が必要だと伝えています。ファンベースとは、「全顧客の上位20%が売上の80%を生み出している」というパレートの法則がありますが、この上位20%のファンを離さないように、関係を構築をし、自らの市場価値を上げていくという考え方です。

今の時代のクリエイターにとっても、このファンベースの考え方は有用なのではないでしょうか。

今回お話を伺った、ケビンばやし(@minami5884373)さんは、ミスID2019の受賞歴を持ちながら、画家・イラストレーターとしても活動し、オンライン・オフラインでファンを楽しませるための様々な工夫をされています。

同じクリエイターでもあるざきよしちゃん(@mihorinxza)が聞き手となり、ケビンばやしさんが多くのファンに長く愛される秘密を探っていきました。

自分をさらけ出す発信をしたきっかけは、ゆうこすと野菜!?

ケビンばやし/1997年12月14日広島生まれ。関東在住の20歳画家、イラストレーター。女の気持ちや監禁された実話漫画などを描く。2010年よりオリジナルのイラストレーションを制作。2014年12月に参加した企画展をきっかけに作家活動を始め、以来全国でイベントや展示に精力的に参加。2017年6月に大阪で初個展開催。2018年7月に東京で開催した個展では3日間で全ての作品とグッズが完売した。講談社主催オーディション ミスiD2019で『メタモルフォーゼ賞』、『クリエイティブ復讐賞』をW授賞。

ざきよしちゃん:今回はケビンばやしさんが、普段ファンとどのような関わり方をしているのかについて、いろいろお伺いしたいと思います。まず、画家・イラストレーターでありながらミスiDに出場されていますよね。なぜ出場しようと思ったんですか?

ケビンばやし:「ケビンばやし」としての活動を始めたときは画家・イラストレーターの一本でいこうと思っていました。ただ、発信して行く中で、作家自身が表にでることも大事だと思い、「人」として注目される必要もあるなと考えたんです。そこで、ミスiDに出場しようと決めました。

ざきよしちゃん:なぜ、自分をさらけ出さなきゃと思われたんですか?

ケビンばやし:ゆうこすさんの存在が大きいですね。彼女は発信がとてもうまく、憧れの存在だったんです。アイドルをやめてニートになった話とか、イベントに3人しかこなかった話とか、過去のエピソードを聞いているだけでも、どんどん引き込まれていく。ライブ配信も定期的に行なっていて、ファンとの距離がとても近く、その関係性がいいなと思ったんです。そこから、私も過去のことを話したりや実際に絵を描く作業風景などを配信するなどして、自分をさらけだすようにしてきました。

ざきよしちゃん:ゆうこすさんも、ミスiDに出場されていましたもんね。配信でいうと、僕もファンのために、週1回程度インスタライブをやっています。継続して配信することで、ライブの視聴者がイベントに来てくれるようになったり、逆にイベントに来ていただいた方が、インスタライブを見に来てくれたりとお客さんとの接触時間が伸び、気づいたらファンになってくれているんですよね。

ケビンばやし:そういうループありますよね。自分をさらけ出すような発信をしようと思った理由がもう一つあって。「野菜」と同じだと思ったんです。

ざきよしちゃん:…野菜???

ざきよしちゃん/主にSNSを軸に活動しているイラストレーター。目の下がキラキラと輝いている女の子のイラストやゆるくてまるっとしたうさぎのキャラクター「やさしいうさぎ」など10-20代を中心にニーズの高いイラストを制作し、アイドル、ミュージシャンへのイラスト提供やSNS上の広告イラストなどで活躍中。

ケビンばやし:野菜をスーパーで買うとき、生産者の顔が見えるものって多いですよね。それは、作り手の顔が見えると安心感や親近感があるから。私の仕事も近いところがあると思っていて、自分自身が前に出て「この絵は、こんな人が描いているんだよ」と発信することで、親近感がわいて興味を持ってもらいやすくなるのではないかと思ったんです。

ざきよしちゃん:誰が描いているかわかることで、その人自身を好きになり、ファンになってしまうケースはありますよね。実際に自分をさらけ出す発信を始めてから変化を感じることはありましたか?

ケビンばやし:わかりやすいところだと、個展の反響は徐々に変わっていきました。先日は50万円の絵以外は全て売れましたし、5月に原宿でやった時は、全てのグッズがすぐに完売しました。

「会話」を大切にして”お客さんからファン”になってもらう

ざきよしちゃん:絵が完売してしまうほどファンに愛されているのは、何か理由があるような気がしますね。具体的にはファンとどのように交流をとられているんですか?

ケビンばやし:まず、個展に来てくれたお客さんには絶対に声をかけます。少しでもいいから会話をする。はじめて来てくれたお客さんの顔は覚えるようにして、2回目来てくれたら嬉しいというリアクションを素直に取っちゃいますね。

ざきよしちゃん:わかります!僕自身も好きな作家さんが自分を覚えてくれていたら嬉しいです!

ケビンばやし:会話を通して関係をちゃんと深めることで、次回のイベントも来てくれるようになるんです。また、友達や家族を誘ってイベントに来てくれる方もいらっしゃいます。近くのファンを大事にすることで、その方々が周りにもおすすめしてくれているんじゃないかと感じています。

ざきよしちゃん:お客さんと会話するときに意識していることはありますか?

ケビンばやし:あります!ちょっと今やってみてもいいですか?

ざきよしちゃん:今?はい…。

ケビンばやし:え!このTシャツめっちゃかわいいね~!すご~い!!

ざきよしちゃん:ありがとうございます。

ケビンばやし:今日はどこから来たんですか??

ざきよしちゃん:はい…えっと…(照)。

ケビンばやし:っていう感じで、お客さんとは仲良くなていきたいので、なるべくフランクに話しかけるようにしています(笑)。ワンクッション置いてから「今日どこから来たの?」のような質問をすると、会話もスムーズにつながります。

ざきよしちゃん:たしかに、僕もイベントの時とかは意識しています。似顔絵を描いているときに、「そのイヤリング可愛いですね」とかお話して、お客さんとの距離を近づけるようにしています。

ケビンばやし:ファンとの会話は、コミュニケーションという意味でも、顧客の声を知るという意味でも大事ですよね。ファンと話すことで、どこから来てくれたのかやイベントの感想、最近興味があることとかも知れたりします。この情報って、企業であればお金払ってでも知りたい情報だったりするじゃないですか。その情報があれば、作品にも活かすことができるし、ファンの人たちももっと楽しんくれるんじゃないかと思うんですよね。

活動範囲は地方にまで。ファンの要望に応え続ける理由とは


ざきよしちゃん:ファンと直接交流できる場は、都内だけでなく地方にも広げていますよね?

ケビンばやし:ファンがいる地方に積極的に行くようにしています。最近では、北海道、大阪、沖縄に行って個展をやりました。なるべく、東京以外の場所でも活動するよう意識していますね。

ざきよしちゃん:なぜ地方に行くんですか?移動が大変な気もしますが。

ケビンばやし:もちろん時間も取られるし、赤字になる時もあります。でも、通販でグッズを発送するときに住所を見ていると、ファンが地方にいらっしゃることも多いことに気づいて。そういう方に直接お礼が言いたくて、自分から会いに行くようにしています。

ざきよしちゃん:これこそ、ファンベースの考え方ですね。熱量の高いファンをちゃんと大事にしている。

ケビンばやし:地方のファンに会いに行くと、そのファンの人たちは二倍喜んでくれるんですよね。「直接会えた」というだけでなく「こんなところまで、わざわざ会いに来てくれたんだ」という喜びもあるのかなと。地方の方々は、イベントに来たいけど来れない。フラストレーションが溜まっている分、人一倍熱量が高いんです。そんなファンをないがしろにはできません。

ざきよしちゃん:すごい…本当にファンのために活動されていますよね。

ケビンばやし:クリエイターはファンがいてこそ成り立ちます。だからグッズでもファンの要望があれば、それをなるべく満たせるような物を作りたいんです。今まで、チェキ帳やスタンプラリーなど、ファンが何回来ても楽しめるようなグッズを要望に応えて作りました。ファンが喜んでくれることは、できる限りやっていきたいですね。

人間味を出して、コアなファンの濃度を高める

ざきよしちゃん:ケビンばやしさんは、イベントや個展などのオフラインだけでなく、SNSなどのオンラインでもマメに発信されていますよね。

ケビンばやし:そうですね。特にTwitterとInstagramに力を入れていて、こまめに発信やファンとコミュニケーションをとっています。そういう積み重ねで、ファンの中で「丁寧に対応をしてくれるよね」と褒めてくれる人が増えました(笑)。

ざきよしちゃん:第三者からいい噂が広まるのはいいですよね!

ケビンばやし:そうですね。でも、自分で自分の作品を褒めるようなツイートもしています(笑)。

ざきよしちゃん:見たことあります!あれは意識してやっていることなんですか?

ケビンばやし:自ら褒めることでファンも「いいね!」って言いやすくなると思っているんです。ネガティブな意見を集めたくないので、自分から先にこういう風に褒めて欲しいという願いを込めてツイートしています。

ざきよしちゃん:とことんファンのことを考えているんですね。

ケビンばやし:ただ、自分の作品を褒めているだけではファンは飽きてしまうので、たまに人に言いにくい過去のことを発信するときもあります。

ざきよしちゃん:なぜですか?

ケビンばやし:人間味を出すためです。人間がお金を払ってでも見たいものは、人に言いにくい過去を打ち明けたときの話。これは、永田カビさんがレズ風俗に行った時の漫画を読んで思ったんです。先ほどのゆうこすさんも、同じですよね。そういうストーリーに共感してくれることで、コアなファンがついてきてくれるなと実感しました。

ざきよしちゃん:人の過去に興味ある人は多いですよね。

ケビンばやし:でも、これってフォロワーが減る可能性があるんですよね。「こういう人は応援できない」みたいな。それでもいいと私は思っていて。つい数字としての“フォロワー”を追いがちになりますが、私が本当に大切にしたいのは応援してくれる“ファン”です。

私の一側面だけでフォローしてくれるのももちろん嬉しいですが、私という人間にはいろんな側面がある。それをふまえて“ファン“にって欲しいし、そこで築けた関係を一つひとつ大切にすべきものだと思うんです。だから、本当に応援してくれるファンを増やすには、減らすことも時には大事なんですよね。ファンの濃度を高めることが重要だと思っています。

ざきよしちゃん:尖ってても愛されている人はたくさんいますしね。

ケビンばやし:地下アイドルとか見ると実感しますね。フォロワーがいなくてもたくさんのファンが来て、熱狂している。そういう部分から学べるとおもうので、今度握手会に行きたいと思います(笑)。

成長過程を見せることで、ファンの熱量を継続させる

ざきよしちゃん:とはいえ、ファンの熱量を継続させるのは大変だと思います。そのために取り組んでいることはありますか?

ケビンばやし:成長過程を見せることでしょうか。この間、初めてアニメーションを自分でつくったんですが、勉強している段階から発信をすることにしたんです。すると、「ちゃんとできるかな…」「こんなことにも挑戦してるんだ、すごい…」といったような反応をファンからもらうようになり、こどもを見守る感覚になってくれることがわかりました。

もちろん、常に自分自身が新しい技術や趣味を身につけ、変化を重ねることも大切ですが、その過程を発信していくことも必要かなと思っています。

ざきよしちゃん:色々やっていたほうが、ファンも見ていて楽しいですよね。

ケビンばやし:母の影響が強いと思います。

ざきよしちゃん:お母さん?

ケビンばやし:会社を経営しているんですが、ファンベースの考え方を一番最初に教えてくれたのも母なんです。母は、急に占いを勉強し始めたりとか、運動が嫌いなのに登山を始めたりするんです。私はそんな行動を不思議に思い理由を聞くと、「ブランディングのため」と真顔で言われたんです。

いろんなことに取り組むことで、そのジャンルで繋がれる人がいる。そして、興味を持ってもらえる。会社を経営していた母にとって、周りの人に興味をもってもらいファンになってもらうことは、なにより大事にしていたことなのかもしれません。

私はそんな母の姿を見ていたので、新しい技術を常に勉強して発信しつづけることが刷り込まれていたのかもしれないです。

取材後記

ひたすらイベントを開き、SNSでとにかく数をこなすように発信する…。こうした表面上だけの行動を、ファンを増やすためについしてしまいしがちです。

しかし今回、ケビンばやしさんのお話を聞いて、応援される存在になるには、それだけではいけないと強く感じさせられました。

ファンとコミュニケーションをとる過程で、今何を求められているのかを把握し、それをもとに行動する。しっかりと自分に対する言葉に応え続けることで、ファンからの信頼や愛着が強くなり、そのファンが新しいファンを生み出してくれるのです。

ケビンばやしさんは、そういったファンベースの考えを自然と実行し、それを楽しんでいるようでした。ただファンを増やさなきゃと躍起になるのではなく、一回立ち止まり、ファンからの指示を強くするにはどうすればいいのか、強く考えることが求められるのです。

▶▶ケビンばやしさん、ざきよしちゃんがLive Painで参加する”超合法東京”

Interviewer ざきよしちゃん
Writer なまっちゃ
Editor 小山和之
Photo きょーいち
Design 會川誠也
Space co-ba jinnan


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