CafeSnapに聞く、サービス内にコミュニティ機能を導入するメリットと難しさ

2016 5.19

こんにちは。kakeru副編集長のDスケです。

最近、ひょんなことからmixiコミュニティを利用する機会があり、実は未だに愛され続けているという事実を身を持って体感しました。

mixiのようにコミュニティ機能が活性化しているサービスもある一方、まったくアクティブに動いていないサービスもあるのを見かけると、なぜサービス内にコミュニティ機能を導入するんだろう?と、ふと疑問に思ったんです。というのも、コミュニティ以外の機能はとても活発に利用されていたりするんです。

なので、今回は実際にコミュニティ機能を導入している、写真共有型カフェアプリ「CafeSnap(カフェスナップ)」の発起人兼プロデューサーである、オールアバウト社の大井さん(トップ画像中央左)、そしてプロデューサーの辻さん(トップ画像中央右)のお二人に、開発時から今までのお話を伺いつつ、コミュニティ機能導入の理由について聞いていきたいと思います。

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ちなみにここは、取材場所として利用させてもらった「Burger Mania Ebisu」。CafeSnapにも掲載されており、取材後に食べたハンバーガーの実力たるや。行列に並ぶ価値ありです。

CafeSnap(カフェスナップ)とは?

Dスケ:まずCafeSnapの概要や特徴などを教えていただけますか?

大井さん:一言でいうと、「個性の光るカフェに出会える写真共有型のカフェアプリ」です。個人経営の店舗をメインに、こだわりのあるカフェのみを掲載しています。

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特徴としては、カフェ探しに特化した検索機能が充実していることですね。たとえば、「落ち着いた雰囲気」「ゆったりしたソファがある」や「電源あり」「深夜営業」「Wi-Fiあり」など、お店の特徴や設備で絞れたりします。

また、長年オールアバウトで素敵なカフェを紹介してもらっている「カフェガイド」の川口葉子さんを監修者に迎えている点も大きな特徴ですね。

そして、おすすめのカフェやお店こだわりのコーヒー、フード、インテリアなどを写真で共有し合える機能もあり、カフェの最新情報をキャッチできるようにもなっています。

Dスケ:2014年9月にリリースされたときは、店舗の掲載数は300店舗ほどでしたよね。その後、現在の約3,000店舗になるまで、どのように成長させたんでしょうか?

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大井さん:はじめは、一軒ずつアポをとって掲載確認をとるといった地道な営業活動でした。自分たち自身で訪れた理由は、カフェの魅力を正しく伝えたかったことと、オーナーさんにとっても、良いプロジェクトになるように「想い」を直接伝えたかったんです。

辻さん:地道な営業活動は確かに価値はあったのですが、やっぱり掲載数が少ないことは課題でした。たとえば、東京にある魅力的なカフェを、名古屋に住む人が興味を持つかといえば、やはり持たないですよね。当然ですが、自分のライフスタイルの延長線上に、魅力のあるカフェがなくてはCafeSnapを利用する理由もないんです。

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その後、予想よりも短期間でエリア拡大ができたのは、「カフェ新規登録」機能の存在が大きいですね。ユーザー自身がコンセプトである「個性の光るカフェ」をたくさん知っていたんですよ。実際にどんどん登録してくれて、店舗数も増え、かつ運営者である私たちも知らない魅力的なカフェも多く掲載されました。

サービスコンセプトを作るのは”アーリーアダプター”の原体験?

Dスケ:「個性の光るカフェを探せる」というコンセプトは、どのような経緯でできたんですか?

辻さん:僕自身、CafeSnapを立ち上げる際に、まずは発起人である大井にめちゃくちゃ質問しました。「なんでこのサービスをやりたいの?」「なんでそれが必要なの」とか、「Googleではどんな検索ワードで調べてる?」などなど。

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というのも、より多くのユーザーにサービスが普及するためには、アーリーアダプターである大井自身の原体験や価値観、評価基準を深掘りすることが必要だと考えたからです。この工程を経た後に、CafeSnapにおけるコンセプトも定まりました。

Dスケ:大井さんの原体験ってどのようなものだったんですか?

大井:学生の頃からカフェ巡りが凄く好きでしたが、きっかけとなったのは入社7年目に、トロントへワーキングホリデーのために留学したことですね。

その時、カフェって、それぞれが一つの独立国家みたいって感じたんです。なぜかというと、トロントって移民の方々が多いんですね。だからカフェも様々なバックグラウンドを持ったお店が多く、店内の雰囲気も名物も全然違うんですよ。

そんな魅力的なカフェで過ごす時間は、時には仕事での疲れを癒やたり、自分自身を見つめなおす機会になったりと、自分の中で特別なものになっていったんです。

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でも、日本に帰ってくると魅力のあるカフェを簡単に探すことができなかったんです。トロントでは、個人店も大手チェーン店同様にすぐに見つけることができたんですが、日本の個人店は駅からすごく離れていたり、雑居ビルの間に入っていたりと、探すだけでも大変でした。

だから、もっと簡単に素敵なカフェを見つけることのできる仕組みを作りたいと考えました。

辻さん:ただ、僕らはカフェやコーヒーについて高度な専門知識を持っているわけではなかったので、カフェガイドの川口葉子さんに監修として参加してもらったんです。

川口さんは、オーナーからはもちろん、大井のようなアーリーアダプターからの信頼も高く、サービス立ち上げ時は、彼女がいることで「個性の光るカフェ」という基準も、利用するユーザーにとって明確になったのではと思っています。

コミュニティ機能は”誰が”積極的に利用しているのか?

Dスケ:CafeSnapでは、タイムライン上にユーザーの投稿が流れてきたり、気になるユーザーをフォローできたりしますが、ぶっちゃけこの機能は活性化しているんでしょうか?

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大井さん:活性化していますね。とくに、先ほどもお伝えした、カフェを登録する機能を積極的に使ってくれているんです。コンセプトを深く理解してくれているユーザーが多く、私達がやることは基本的には掲載可否の判断と紹介文の誤字脱字の修正程度になっていますね。

Dスケ:正直な所…僕は検索機能を中心に使っているのですが、どのようなユーザーがコミュニティを積極的に使っているんですか?

辻さん:コアなカフェ好きユーザー、つまり大井のようなアーリーアダプターが積極的に利用してくれていますね。彼らは、自分の好きなカフェや、応援したいカフェを埋もれたままにせず、世の中に出ていって欲しいという考えを持っているようなんです。それに、紹介したカフェの審査を通ると、自分の名前が「推薦者」という項目にでるのですが、それもモチベーションの一つを担っているようです。

Dスケ:アーリーアダプターに積極的に使ってもらうことで、どんな効果を見込んでいますか?

辻さん:もちろん、アーリーアダプターからキャズムを超えて、アーリーマジョリティにCafeSnapが広がる効果が見込めると思っています。ただ、マジョリティの人たちにも、利用してもらうためには、カフェ自体ではなく、それ以外のところで魅力を感じてもらう必要があるなと。

Dスケ:具体的にはどのような魅力でしょうか?

辻さん:たとえば、アーリーアダプターがカフェに対する自身の価値観や考えを発信することで、アーリーマジョリティの人たちが、その渦に巻き込まれていくのでは?という仮説を立てています。だからこそ、現在コミュニティ上ではアーリーアダプターの方々の利用が中心ですが、あえてクローズにはしていません。

Dスケ:なるほど、アーリーアダプター層をいかに巻き込んでいくかがポイントのようですね。

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辻さん:CafeSnapのように、専門的な知識が集まっているコミュニティは、とても価値があるものだと思う一方、その人たちだけが楽しんでいてはダメだと思っています。

Dスケさんのように、実際にユーザー体験をしていないからこそ、カフェの魅力に気づいていない人は多いと思うんですね。だから、専門的な知識や情報をどんな人たちにも分かりやすく、魅力のあるものとして提供することが大切で、僕たちが発揮すべき価値だと思っています。

具体的な施策としては、今後アプリだけではなく、WEB版のCafeSnapも強化していこうと考えています。

大井さん:WEB版では、アプリ版のCafeSnapに掲載されているカフェを「○○まとめ」のようなコンテンツの提供を始めています。私自身、オールアバウトで10年近く編集という仕事に携わってきたこともあり、辻が話したように、いかに多くの人にとって分かりやすい形で提供するかという視点で進めていますね。

コミュニティ運営の難しさとは?

Dスケ:コミュニティを運営していると、今後ユーザー数が増えたときに、”誹謗中傷”も出てくる可能性もあると思いますが、その際の対応は考えていますか?

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辻さん:まだ明確な対処法を完全に決められていないというのが正直なところです。一般的な対処法としては、誹謗中傷などのコメントを削除したり、コミュニティ内のルールを設定することですが、ルールを厳しくしてしまうと運営側が操作してしまうことになり、コミュニティとして成り立たなくなってしまうので、なるだけ避けたいと思っています。

Dスケ:たしかにガチガチにルールを決められると窮屈な気がします。ということは、今は具体的な施策としては特になさそうでしょうか?

辻さん:チャレンジしようとしていることはあります。たとえば、誹謗中傷と批判的な意見って違うと思うんですね。なので、ユーザー同士でコメントに対する捉え方を判断してもらい、人の意見ではなく自分自身で体験し判断することが大切という文化をいかに作るか、ということにチャレンジしたいと思っています。

Dスケ:「自分自身で判断する文化」をどのように作っていく予定でしょうか?

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辻さん:まずは、コアなカフェ好きユーザーのために、プレミアムコラムを展開していますね。

大井さん:プレミアムコラムでは、業界トップを走るオーナーから、とある街のオーナーまで、あらゆるタイプの特集を組んでるんですね。たとえば、最近ですとブルーボトルコーヒーのCEOである、ジェームス・フリーマン氏へのインタビュー記事が人気ですね。

Dスケ:熱狂的なコーヒー好きにはたまらなさそうですね。

大井さん:ほんとにそうですね(笑) 彼は、元々クラリネット奏者で、ツアー中に自分で焙煎したコーヒーを振る舞っていたんです。そして、街のファーマーズマーケットでコーヒーを出したことをきっかけに、世界規模のカフェのCEOとなったという経歴の持ち主なんです。

彼らのように、自分自身の価値観に従って行動してきた人へのインタビューを通じて、先ほど述べた文化の醸成などを図っていければと思っています。

「リアルでの繋がり」「EC展開」ーCafeSnapの今後の展望とは?

Dスケ:最後に、今後CafeSnapとしてチャレンジしていくことはありますか?

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辻さん:実はユーザー同士で、リアルの場で出会いたいというニーズがあるんですよ。ユーザーインタビューをしていると、コアなカフェ好きの方々から「カフェについて自分より詳しい人が周りにいない」という声を聞くんですね。

そのような方々に、私達が知っているカフェを教えると「こんな経験初めてです」と言われるんです。コアなユーザーの欲求ですが、たとえば会員同士のオフ会や、サロンのようなものを提供しようと思っています。

大井さん:その他には、お店のオリジナルブレンドやおすすめの商品を購入できるようなEC展開も考えています。今はまだ、アプリ内で実施するか、他のプラットフォームを利用するか模索している最中ですけれど。

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それにCafeSnapでも、限定販売ですがオリジナルブレンドを出したんですね(次回は5月25日に発売開始!)。EC販売ができるような仕組みがあれば、オーナーさんにとっても、サービスを利用している方にとっても良い仕組みになるのではと思っています。

まとめ

お二人のお話を伺って、コミュニティが誰のものか?という点ついてサービスの運営者は、しっかりと深掘ることが必要と感じました。

ということで、コミュニティ機能のメリットと難しさについてまとめますと。

1.コミュニティ機能はアーリーアダプターの求めているニーズだった

コアなカフェ好きユーザーである、アーリーアダプターたちは、お互いにカフェを紹介し合ったり、自分の好きなカフェを世の中に残したいというモチベーションを持っていました。コミュニティ機能のメリットは、彼らの心を掴めたことが大きいでしょう。

2.ルールを縛りすぎると運営側の意思が入ってしまい、コミュニティとしての価値を発揮しなくなる

これがコミュニティ運営における難しいポイントでしょうか。今のCafeSnapは、アーリーアダプターを中心に利用されていることもあり、まだ混じりけのない「コアなカフェ好き」で形成されています。だからこそ、ポジティブなコミュニケーションで活性化している印象を受けました。

とはいえ、やはり規模が大きくなると、少なからずネガティブな意思が入ることは避けては通れないと感じます。今後は、インタビュー内にもあった「文化を醸成する」というチャレンジに注目して、またお話を伺いたいと思います。

それではまた!

CafeSnap(公式サイト)

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大井彩子(CafeSnapプロデューサー)
1982年神奈川県生まれ。2006年株式会社オールアバウト入社。Webマガジンの編集、広告制作を経験し、2012年より一年間カナダへ留学。復帰後、スマホサイトの運用を経てアプリ開発を行っている。

辻孝次(CafeSnapプロデューサー)
1982年愛知県生まれ。TV局番組連動のゲーム・モバイルコンテンツ、飲料メーカーのモバイル連動キャンペーンを企画・運営。新規事業、スマホアプリ、Webサービスの企画・運営に携わり、2013年12月よりオールアバウトのスマホグループに参画。
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