スタートアップ企業が積極的にTwitter採用をする理由

2019 5.29

こんにちは。kakeru編集部のsagakoです。

みなさんは、「Twitter転職」という言葉をご存知でしょうか?

Twitter転職とは、求職者がTwitterを通して企業と出会い転職することを意味します。転職サイトで条件に合う企業を探しにエントリーしたり、転職エージェントに登録して採用までサポートしてもらったりといった一般的な方法とは違った、新しい転職方法の1つです。

2017年には、ひよこ大佐というアカウントが、自らのスキルをツイートし転職の意思を見せたところ、1,240件のいいね1,439件のリツートの反応があり(2019年4月13日時点)、話題になりました。

しかし、Twitter転職が注目されていると言われても、Twitterを転職活動に使いこなせている求職者、またその人たちを上手く採用できている企業の事例はどれほどあるでしょうか?

今回インタビューさせていただいた株式会社ジラフは、Twitterを活用して採用活動をしている企業のひとつ。同社はTwitterプラットフォームを活用した匿名質問サービス「質問箱」をはじめとした様々なWebサービスを生み出すITベンチャー。60人ほどいる従業員のうち、Twitter経由で採用した割合は3割をこえるといいます。

そんな、ジラフ代表取締役社長の麻生輝明さんと、実際にTwitter転職でジラフに入社した広報の内村佳世さんに、Twitter転職の魅力や実態、活用方法などについてお伺いしてきました。

Twitter転職は、キャリア相談から始まった

sagako:はじめに、内村さんが転職をしようと思った理由を教えてください。

内村:以前勤めていた会社にいた時に、もっと成長する場に身を置きたいと思ったからです。私は民泊の企業に新卒で入社し、少額投資に関する事業の開発からディレクション、様々な投資家の方へのアドバイスをしていました。しかし、私も自身の成長と会社の成長にズレを感じるようになり、転職を考えました。

sagako:転職活動はどのように行ったのでしょうか?

内村:それがTwitterだったんです。というのも、当初はVC(ベンチャーキャピタル)になろうと考えていたのですが、VCに関する採用情報は転職サイトに掲載されていません。起業家の情報をキャッチアップするためにVCが使っているTwitterでコンタクトをとるしかないと思い、積極的に使っていました。

sagako:その中で、どのようにお二人は出会ったのでしょうか?

麻生:Twitterを見ていたときに、VCに興味があると内村さんがツイートしていたことがきっかけです。20代の女性でVC志望の方はそこまで多くありません。何かしらの熱量をもってベンチャーに携わりたいという想いがあるのなら、ジラフにマッチするかも知れないと思い、DM(ダイレクトメッセージ)を送りました。ただ、最初は採用したいという気持ちを出さないようにしていたので、まずは食事をしながらキャリア相談のような形で話をし、知り合いのVCを何人か紹介して終わりました。

内村:そうですね。麻生からいきなり「お話ししませんか?」と連絡が来たときは驚きましたし、どんな話をするのか会うまでわかりませんでした(笑)。しかし、実際に麻生に会ってみるとフランクに相談にのっていただき、色々なVCを紹介してくださいました。採用面談という雰囲気はまったくなかったです。

sagako:その後、どのような流れでジラフへの入社まで至ったんですか?

内村:VCを紹介してくださった2週間後くらいに、その報告をするために再び会うことになりました。その時は、VCの皆様にボコボコにされて、VCとして働くべきか迷っていたんです。そのことを話したら「うちで働いてみる?」と声をかけてくださって。そこではじめて、ジラフへの入社を考えました。

もともと、VCを転職先として選んだ理由は、あらゆる事業に携わりたかったからです。ただ、ジラフは1プロダクトではなく様々な事業を展開しているんですよね。やりたかったことがジラフでも実現できそうだと思い、麻生とはじめて会った約1ヶ月後には、入社希望の連絡をしました。

スタートアップだからこそ。採用でTwitterを使う理由

sagako:なぜジラフではTwitterを採用ツールとして使っているのでしょうか?

麻生:Twitterは、転職意思を持つ以前の人をキャッチアップできるからです。転職サイトや転職エージェントを利用している人は、複数の会社からオファーを得ている可能性があります。僕たちみたいな100人未満の規模のベンチャーが大手企業と戦おうとしても、条件面などで敵わず採用に結びつかない場面も少なくない。

一方で、Twitterであれば転職活動はしていないが現状の働き方に対してモヤモヤしている潜在層にコンタクトを取れます。このような方は「この会社だったら入りたい」というwillを持った状態で入社してもらえるので、入社後の業務内容と、自分の得たい経験がマッチした状態で入れる。すると、パフォーマンスを出してくれるケースが多いです。

sagako:内村さんから見て、入社前後のギャップはありましたか?

内村:麻生の話したとおり、事前にジラフでの業務内容と自分のやりたいことを摺り合わせた上で入社したので、期待値のズレは全くありませんでした。採用の決裁者と候補者が「面接」という感じではなく等身大で話せていたのも大きいかも知れません。

麻生:それはTwitter採用の大きなメリットのひとつですね。Twitterからアプローチすることで、その人本来の姿を見れるんです。エージェントを通して面談を設定すると、求職者はしっかりと準備し武装した状態できてしまいます。すると、面接時の期待値と入社してからの実力にギャップが生まれやすい。逆に私がTwitterで声をかけるような人は選考通過しようという気持ちはないので、素の状態で話せるんです。

sagako:なるほど。他にエージェント等とTwitter転職の違いを感じるところはありますか?

麻生:コストパフォーマンスの良さは大きいですね。掲載料や仲介料がかからないのはもちろん、工数を考えても、Twitterで候補者を探すと手間はかかりますが、エージェントや媒体でも人を選ぶことには変わりありません。

sagako:実際に、Twitter経由でこれまでどのような人を採用してきたのでしょうか?

麻生:エンジニアや、管理職である公認会計士もTwitterで採用しました。他の職種もTwitterから採用した人が多くいるので、職種問わず採用できると思っています。

Twitter転職で見るべきは、誰とつながっているか

sagako:Twitter転職のメリットはお話を聞く中でわかったのですが、気をつけなければいけない点はありますでしょうか?

麻生:言うまでもないですが、アカウントはかなり綿密に追いますね。過去ツイートも遡りますし、プロフィールに書いてあるURLも一通りチェックします。あと、見落としがちなのが、誰とつながっているかですね。VCでも目をつけている起業家が誰と仲がいいのかは、投資判断の材料になるそうです。Twitter転職も同じで、誰と関係性を持っているのかはしっかりと見ています。

内村:私がTwitter転職をしていたときに感じたのが、「将来こういうことやりたい」「これをやっているのが好き」というような、キャリアビジョンや志向性が伝わるツイートは重要ということです。意見・意思をしっかり呟いていると、こういう考えを持った人なんだなと会う前の段階で採用側がわかるので、連絡を取ってみようという気持ちになるんだと思います。

sagako:なるほど。麻生さんも意見や意思のある発言には目をとめますか?

麻生:そうですね。自分がどういう働き方をして、何をしたいのかが明確な人は、企業側がそれを実現できる環境を提示してあげられれば、すぐに行動できると思うんです。それがない人は、いろんな会社を比較して「一番よかったこれにしよう」という会社の選び方をする。Twitter転職では前者にアプローチできるんです。

自ら手を動かす。採用活動をアウトソースしない理由

sagako:今は麻生さん自身がTwitterで声をかけていますが、なぜ経営者が自ら手を動かして採用活動をするのでしょうか?

麻生:大きく、2つの理由があります。1つ目はTwitter採用での成功体験があるから。僕たちは今までTwitterで10名近くのエンジニアを採用できました。彼らは成果もしっかり出してくれており、Twitter採用は間違いなかったと思っています。

2つ目は、自分の会社として、採用に対して責任を持ちたいから。IT系のスタートアップでは支出の多くは人件費です。つまり、採用活動は投資活動にもなる。なので、経営者がどれだけ直接見れるかは大切だと思っています。

sagako:今後会社が拡大したときに、社員インフルエンサーの育成や、企業アカウントを育てるなど、SNSを活用した新たな採用の施策は考えていますか?

麻生:SNSの発信力に長けた人は社内に欲しいですね。無理矢理インフルエンサーにさせることはしたくないですが、今後やるとしたら、そういう人を採用することになると思います。現状は、僕がTwitterを活用しつつ、いい方法を見つけ次第、柔軟に取り入れたいと思っています。

Twitter転職をするなら、「つながり」を大事に

sagako:今は採用する側でTwitterを使っていると思いますが、もしお二方がこれから転職活動を始めようという立場だったら何をしますか?

麻生:やっぱりTwitterをやると思いますね(笑)。入りたい会社が明確にあるかどうかによると思うのですが、あればその会社の人に直接話を聞きたいので、まずはフォローして、DMやリプライを送って会う約束をすると思います。

逆に、自分がどこに入りたいかまだわからず、色々な会社を見てみたいと思っていたら、「採用してくれる会社を募集します」といった、人事などに発見されやすい募集ツイートをすると思います。

内村:私もTwitterを使いますね。自分の好きなことを発信しつつも、転職を考えているといった内容をツイートして、つながりをどんどん作っていくと思います。

麻生:会う前には、採用を握っている人のアカウントやツイート内容を見て、「こういうこと期待してるんだろうな」というのを把握しますね。その把握した内容を、会った時に話すことで、採用側に一目置かれるようにします。

Twitter転職は、双方のメリットを生み出す採用方法

今回は新しい採用の形の1つとして、Twitterを用いて採用活動をする『Twitter転職』の事例を紹介しました。

求職者は自分の納得いく働き方ができるように、採用側は会社にあった人を採用できるように…双方の想いを実現できるのがTwitter転職なのではないかと、今回のお話を聞いていて思いました。

とはいえ、今後Twitter転職が広がり一般化することで、実力がある人とない人の差が開き、またTwitter上でも企業からの目を気にしたアカウントが増えることが考えられます。求職者がこれから必要なのは、時代に適した情報収集や自己アピール方法などを積極的に取り入れていくことなのかもしれません。

いつか来るかもしれない転職活動の方法として、そして企業がより優秀でマッチする人材に出会うための対象として、今回の事例を参考にしてみてください。

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