副業YouTuberに聞く、仮説検証のススメ

2020 5.1

こんにちは!kakeru編集部佐藤です。

今回は、平日はサラリーマン(社会人2年目)として会社に勤めながら、『副業』という形でYouTuberとして活動しているさがらごうちさんへのインタビューをしました。

2018年末から開始し、現在(2020年4月9日時点)登録者数は5.3万人。『高速あるある』という動画を中心に配信をされています。

2020年3月度のUUUMネットワーク月間MVPにも選出されており、今注目を集めています。

そんなさがらごうちさん(以下、さがらさん)に副業YouTuberとしての話をインタビューしていたのですが、さがらさんの戦略的なコンテンツづくりがとても参考になったので、今回はそちらを中心にご紹介していきます!

1.副業としての『YouTube』、始めた経緯は?

さがらさん:YouTubeを始めたきっかけは学費返済のためだったんです。

東北大学工学部卒。ミスター東北大学2016Mr. of Mr. ファイナリスト。現在会社員2年目。
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TikTok / /

佐藤:…え? 学費返済とは…?

さがらさん:大学院試験に落ちちゃって就活するために半年間留年したんです…(笑)。留年分の学費返済のために普通のアルバイトもめちゃくちゃやってたんですけど、「YouTubeが稼げるらしいよ。」と知り合いづてで聞いて。社会人になるまで時間も少しあるし、好奇心もあったのでバイトと並行して始めてみたんです。

佐藤:稼げるんですか…?

さがらさん:始めたばかりの頃は全然稼げなかったです(笑)。それに僕が始めたころって、すでにHIKAKINさんや、はじめしゃちょーさんとか、企画系でハネている大物YouTuberがたくさんいたんですよ。僕も始めたばかりは企画系動画を真似て配信していたんですが、「あ、これは相当レッドオーシャンな海に飛び込んだぞ」と気づいてしまって。

佐藤:たしかに、まだ今みたいに芸能人が参入したり、ジャンル別のYouTuberが出てきたりはしていなかったですけど、それでもYouTuber自体はたくさんいましたもんね。

さがらさん:そうなんです。なので、自分なりに色々と試行錯誤してみて、『教育×あるあるネタ』という分野なら、まだ可能性はあるのでは?と思ったんです。自分自身が最近まで大学生だったということや、国立大学に入るために勉強もしてきたので、この分野なら語れることも多いし、参入している人もほとんどいなったので、いけるのでは?と。

佐藤:自分の得意分野とブルーオーシャンな分野をかけあわせたんですね! 視聴者はどのような方々が多いんですか?

さがらさん:そうですね。YouTube上でのアナリティクス(分析ページ)を見る限りでは、18-24歳がボリュームゾーンで、その次に25-29歳の方々が多いですね。動画の企画も、自分の視聴者の方々がよく見ている他のYouTuberの動画を参考にしながら、何が求められるか?何を配信したらウケるか?とかを仮説たてながらつくっています。

佐藤:仮説検証…企画次第ってわけじゃないんですか…?

さがらさん:僕には喋りや企画で勝負ができるYouTuberのようなセンスがまったくないんです。だから、緻密に試行錯誤を繰り返して企画を作らないと戦っていけなくて。去年からはWEBマーケティングの会社で働いていることもあって、企画をつくる上で分析したり仮説を立てて検証したりする力はより一層ついた気もします。

2.仮説検証を繰り返してみつけた勝ち筋

佐藤:さがらさんが、検証してきた施策を伺ってもいいですか?

さがらさん:そうですね。まず再生回数が伸びるかどうかは、最初の1時間で勝負が決まると思っています。

佐藤:最初の1時間ですか?

さがらさん:前提として、現時点での僕の登録者数が5万人ほどいるので言える話ではあるんですけど、最初の1時間で1万回再生されなかったら削除するかどうかも検討しています。

佐藤:1万回再生されるだけでもすごいと思うのですが…。

さがらさん:なぜかというと、最初の1時間以内に視聴してくれる人というのは僕の登録者の方々なので、ファンの方々にウケていないのはその後の再生回数にも影響するんです。

佐藤:なるほど。

さがらさん:これまでの検証でいうと、登録者数に対して最初の1時間で再生回数が2割に満たない動画はその後もハネていないんです。なので僕の場合は指標は1万回になります。

佐藤:再生回数には初動が大事だと。

さがらさん:そうですね。あとは、仮説ではあるんですが、YouTube上でより多くの人に拡散(=再生)されるには『クリック率』『視聴維持率』『動画への流入数』の3つが大事だと思っていて、その対策はしていますね。

2-1.『クリック率』『視聴維持率』を高くするための検証

佐藤:ひとつずつ伺ってもいいですか? まずどのようにクリック率を高くしているのでしょうか?

さがらさん:『サムネイル』『タイトル』の2つをこれまで検証してきました。

佐藤:ふむふむ。ひとつずつ教えてください!

さがらさん:まずサムネイルですが、最近やっと勝ちパターンが固まってきて、今はほぼそのパターンを作っています。

サムネイルでの勝ちパターンは、次のような要素があるとクリック率が断然違います。サムネイルとタイトルは、配信後にも変更できるのですが、1万回再生の動画が、サムネイル変更した配信5日後に3万回再生上昇しました。

  • テキストを全面に出す
    • 「うざいこと」「絶対に駄目なこと」「悲しいこと」などの、広く共感されうるであろう『感情ワード』を全面に出している
  • 動画内の一番引きが強い言葉を端的にする
    • 動画のコメント欄にお題を掲載し、視聴者からあるあるを募集し、その中の回答で「いいね」が多くついていたり、投稿が多いワードを選定してたりしている
  • タイトルとサムネイルで利用しているテキストが重複しないようにする
    • 重複させない理由は、タイトルとサムネイルで役割を分けているため
    • タイトル:関連動画に表示させるため
    • サムネイル:スクロールする指を止めさせるため
  • 登録者の方向けに『さがらごうちの動画』とわかるようにトンマナは固定

佐藤:タイトルについてはどうでしょうか?

さがらさん:タイトルはこのあたりを意識していますね。

  • 初動の1時間は登録者の方向けに、それ以降は初めて見た人がわかるようにする
  • サムネイルのワードを補いつつ動画の概要を説明する
    • 上記のスクリーンショットだと、「あるある」と明記していないテキスト部分。タイトルで「あるある」「高速」「25選」など動画の概要を補足
  • 人気の企画であれば一部を統一する
    • 【あるある高速〇〇選】など、人気企画はタイトルを統一
    • サムネイルは「あるある」であれば「縦書き」に統一
  • 他者の伸びている動画タイトルに寄せる
    • 関連に表示されやすくするため
    • YouTube上で、仮に「他者の伸びている動画」が検索された際に、検索結果のタイムラインに出やすいため

佐藤:おお…ありがとうございます! 『視聴維持率』についてはどうでしょうか?

さがらさん:視聴維持率では『構成』が一番重要になってきます。維持率は高い方が再生回数も伸びていくので、飽きて離脱されないような工夫をしています。おおよそ、6割ぐらいの視聴維持率を目指していて、3~4割程度だとボツ扱いにしています。

佐藤:どのような工夫をされているんですか?

さがらさん:まず本題には15秒以内に入るようにしています。他のYouTuberの方々ともよく話すんですが、本題まで長過ぎると離脱率も高くなってしまうので。対談企画の場合でも、最初にダラダラと自己紹介をするのは避けています。

佐藤:なるほど。

さがらさん:本題のパートについてですが、僕は3-5分程度に動画を収めるように作っていて、起承転結もスピーディーにたくさん入れ込むようにしています。

佐藤:たしかにさがらさんの動画って『あるある25連発』とか『55連発』とかすごく数が多いのに時間は短いものが多いですよね。

さがらさん:15分とか20分以上の動画を作っている人たちも多いんですが、喋りのセンスとかがいるんですよ。ながければ長いほど、指標にしている維持率も難しくなってきます。なので、僕はなるべく短尺にしていますね。

佐藤:たしかに2-30分の動画って話を広げたり、収束させたり、視聴者にとどまってもらうが大変そうですね…。

さがらさん:あとは、飽きさせないように動画のカット数を増やしたり、前後左右の動きを増やしたり、フリップや違う画像をやつぎばやにいれたりしています。自撮りとテロップだけのときに比べて、維持率が20%上昇しました。

▼視聴維持率低い頃の動画

▼視聴維持率高い頃の動画

佐藤:改善幅がすごいですね! 構成もですけど、早口で喋っていると思うんですが、そのあたりも工夫しているんですか?

さがらさん:原稿作りで毎回苦労していますね(笑)。ボケとツッコミを何十連発も入れるイメージなので大変で。喋りは、他の短尺系動画の方々を参考にして、今のような喋り方に行き着きました。

2-2.流入数を増やすための検証

佐藤:流入数についてもお聞きしていいですか?

さがらさん:まず、流入経路のメインは2つで、『おすすめ動画欄』からが4-5割程度、『関連動画欄』が3-4割程度です。前者は視聴履歴などに応じるので視聴者に左右されますが、後者は配信者側である程度はコントロールできます。

佐藤:どのようなことをされているんでしょうか?

さがらさん:動画にもハッシュタグをつけることができるんですが、関連しそうなタグを40個ほど入れています。あとはタイトルも影響するので、類似する動画を調べて必要なキーワードをタイトル付の際に参考にしています。

佐藤:いかに視聴者の関連動画枠に、自分の動画が入るかが肝なんですね。その他はありますか?

さがらさん:たとえば動画の最後を色々とカスタマイズできるんですよ。『おすすめ動画』『最新動画』『再生リスト』『チャンネル登録ボタン』とか。結論自分は『再生リスト』と『サブチャンネルへの登録ボタン』の2つに絞りました。

まず、登録ボタンについては動画のページにデフォルトで設置されているので、動画の最後に設置しても登録率は1%にも満たなかったんです。それならサブチャンネルへの誘導にしようと思って。設置したら8,000人ほど登録してくれました。

佐藤:すごい…サブチャンネル登録への誘導はそれだけですよね。

さがらさん:そうですね。あと、再生リストのみにした理由は、関連する動画が並ぶからか、他の動画もセットで視聴してくれる確率が高まったんです。

佐藤:意外とおすすめ動画や最新動画は視聴につながらないんですね。ちなみに他のSNSなどはどのように活用されていますか?

さがらさん:正直めちゃくちゃ活用してるとは言えないんですよね。たとえば、Twitterは8.000人ほどのフォロワーがいるのですが、動画への遷移数が50人ほどなんです。

佐藤:え! 意外と少なくて驚きました。

さがらさん:そうなんですよ。昔、Twitterのフォーマットに合わせた動画や画像なども投稿して、4000RTくらいされたんですが、それでもYouTubeへ遷移するのは400人くらいで…。
なので、今はYouTubeに動画をアップロードした後に見そびれた方が出ないようにTwitterに投稿するようにしているくらいですね。

佐藤:TikTokには動画をたくさんアップされているようですが、影響などどうですか?

さがらさん:まずTikTok単体で伸ばそうとはしていないです。あくまで、YouTubeへの導線のひとつとして活用しています。

佐藤:TikTokからの遷移数は多いですか?

さがらさん:正直そこまでの効果は今の所ないですね。TikTokがだめという話ではなくて、僕自身がTikTokにそこまで時間をかけられていないんです。独自のアルゴリズムや媒体側のチェックも相当厳しくて、YouTubeよりも優先度も低くしています。

佐藤:まずはYouTubeに注力していくと。

さがらさん:そうですね。まずはYouTubeでもっと色々と試行錯誤しながら楽しんでいきたいと思っています。

佐藤:今後はどのように活動されていく予定ですか?

さがらさん:基本的には教育分野だったり、ライフハックの分野だったりに注力していきます。まだ社会人2年目なので、あと2-3年後くらいには『社会人』『ビジネス』みたいなテーマでも何か仕掛けていきたいなと思っています。

今回のインタビューを終えて、なにげなく見ている動画メディアには、クリエイターの検証に検証を重ねたコンテンツが配信されているということを知りました。

ユーザーのニーズを捉えて発信していく上で、欠かせなくなってきた動画メディア。動画だからこその個性は残しつつ、細かなチューニングが勝ち筋を見つける重要なポイントなのかもしれません。

会社員YouTuber、さがらごうちさんに今後も注目していきたいです!

Interviewer:
Photo:露木聡子
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