グローバルに活躍するデジタルPRマン 稲木ジョージ氏に緊急来日インタビュー! インフルエンサーマーケはそろそろ終わる?石井リナ(連載12)

2015 10.22

こんにちは、石井リナです。

私がKakeruで「Fashion×SNS」の切り口から連載をスタートすることになったときに、一番初めに「話を聞くべきだ」と思い浮かんだのが、まさしく稲木ジョージさんでした。

私は学生時代、ファッション雑誌「ELLEgirl」で広報インターンをしていたのですが、その際にアパレルブランド「AmericanApparel」のプレスとして来てくださったのが、ジョージさんでした。「AmericanApparel」には「ELLEgirl」のパートナーとして入っていただき、読者向けにリアルイベントの開催を共同で企画・運営したのですが、すでに敏腕PRマンの匂いはプンプンしており、若いのに優秀な方だな、とかなり刺激を受けたのを未だに鮮明に覚えています。

そんなジョージさんに取材依頼の連絡を取ってみるも、NY在住であることや、多忙であることが原因で、スカイプインタビューも出来ず……。インタビューも諦めかけていたさなか、東京に帰国するとのメールをいただき、急遽取材を決行できることに!

しかも、帰国中のInstagramには、仲の良い芸能人や、インフルエンサーの友人たちと一緒に過ごしている様子が!メンツも相当豪華です……!

▼ローラさん・渡辺直美さんと

George Inakiさん()が投稿した写真 –

  ▼青山テルマさんと

George Inakiさん()が投稿した写真 –

しかも、インタビュー前日の夜には浜崎あゆみさんとごはんをしていたとのポストまで。  

▼浜崎あゆみさんと

George Inakiさん()が投稿した写真 –

今回は、今やNYに拠点を置き、日本と行き来しながら活躍されている稲木ジョージさんに、「デジタルPRマン」「ブランドコンサルタント」「クリエイティブディレクター」「インフルエンサー」としてなど、多方面から迫りたいと思います。

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稲木ジョージ
フィリピン生まれ、日本育ちのトリリンガル。 インターナショナルな感性でソーシャルメディアを使いこなした、若き敏腕PRディレクター。前職のアメリカンアパレルジャパンでは、二年足らずで渋谷レディース店を世界一の売り上げを誇るモンスターストアにまで育て上げた。カリスマ性のある自身のスタイリングと発信力がSNSそして業界で高く評価されている。唯一無二の存在、”The George”。
Website:www.georgeinaki.com/
Instagram: Twitter:
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「American Apparel」渋谷店を全世界250店舗中、2年で売上ナンバー1へ

リナ:お久しぶりです!早速なんですが、ジョージさんがアパレルブランドの「AmericanApparel」(以後:アメアパ)にいらっしゃってプロモーションされてたときのお話をお伺いしてもいいですか?アメアパの渋谷レディース店を全世界250店舗のうち、売上ナンバー1のモンスターショップに育て上げられましたよね。

ジョージ:2010年に入社したんだけど、そのときはもう日本撤退するかしないかの瀬戸際だった。でもその時に、本社の意向で思いっきりリブランディングしたんだよね。それまでは、スウェット中心でカラーモノのイメージが強かったんだけど、プレッピー(※1)なイメージに変えるときだった。

リナ:そうだったんですね。

ジョージ:当時は僕も販売員だったんだけど、そのリブランディングに批判的なスタッフも多くて、モチベーションは全体的にすごく低くて。それが悔しかったし、どうにかしたいと思ったんだよね。それで販売員を経て、MDやPRをやらせてもらってた。

リナ:でもその後、日本撤退が嘘の様に、売上もかなり伸びましたよね?

ジョージ:そうだね。世界に250店舗あったうち渋谷レディース店がナンバー1の売上になったからね。ピークのときは、1店舗で1日300万円も売上げがあったよ。

リナ:本当ですか!凄いですね。何か仕掛けがあったんでしょうか?

※1 プレッピー(preppy):名門私立学校に通学している良家、お金持ちの子息に対する俗称。アメリカで一流大学の進学コース、名門私立高校をプレパラトリースクール(preparatory schools)と呼び、これを略してプレップと呼びところから来ている。(参照:http://www.fashion-press.net/words/215) IMGP8662

ジョージ:商品でいうとロゴのショップバックを流行らせた。日本人ってロゴ物好きだし、これはいけると思って、商品の配置に気をつけたり、ストラップをつけて日本人が持ちやすい様に商品改良したり、FNO(FashionNightOut:雑誌「VOGUE」主催のファッションイベント)用に日本限定色作ってもらったり商品開発まで入ってたよ。そして、見事にこの商品が当たって、日本だけ尋常じゃない数が売れたんだ。  

▼ベストセラーとなったロゴバック 

American Apparel Japanさん()が投稿した写真 –

リナ:確かに!あのロゴバックはみんな持ってましたよね。他に、プロモーションでの工夫ではどんなものがありましたか?

ジョージ:セレブリティーへのプレゼントはしてた。人脈が広がったきっかけになったかもね。

リナ: なるほど!彼女たちがプレゼントの中でも気に入ったものをSNSにアップして、それを見た若い女の子たちも真似して商品を買いにいくみたいな流れになっていたんですね。

ジョージ:そうだね。あとは、店内作りも結構こだわってた。渋谷レディース店に関しては、「外国っぽさ」をかなり重要視してたよ。

リナ:どういうことですか?

ジョージ:日本人って外国人への憧れがかなり強いと思ってて。だから渋谷店ではハーフスタッフを起用したり、スタイリングも、ディスプレイも外国っぽさは大切にしてたよ。あと、押したい色や商品は必ずスタッフのスタイリングに混ぜるようにして、販売員のスタイリングは全部僕がやってた。お客さんがスタッフを見たときに、「そういう着方や色の組み合わせあるんだ」っていうのを分かってもらえるように心がけてたかな。  

▼ハーフのスタッフを積極的に起用し、ブランドイメージを統一 

American Apparel Japanさん()が投稿した写真 –


リナ:
その「外国っぽさ」に当時まんまと乗せられてたということに今気づきました。(笑) SNSプロモーションだと、当時はTwitterでお客さんとコミュニケーション取っていたんですか?

ジョージ:いや、当時はSNSなんて全然で。紙媒体の時代だったからね。会社から、「Twitterを個人でやりなよ」って勧められて、めんどくさくて嫌だったんだけど、なんかバズったりしてて。アメアパの公式Twitterはマーケティングメンバーが運営していたけど、僕がアドバイスすることも多かったよ。

リナ:今じゃデジタルスペシャリストなのにTwitterもイヤイヤだったんですね。(笑) ちなみにいらっしゃったときって、まだInstagramはやられてなかったですか?

ジョージ:会社のアカウントじゃなくて個人でやってたよ!個人アカウントでやってたら、アメアパのお客さんがLikeしてくれて、フォロワーも1,000人くらいになってて、「え、僕人気者?」ってなってそれでやり続けてた。(笑)

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リナ:SNSを運営する上で、気をつけてたことってありますか?

ジョージ:当時はなかったかな。何が良いか分からなかったから、とりあえず慣れるためにやってた。

リナ:デジタルプロモーションに関しては、戦略的というよりは、試行錯誤しながら実施していたって感じですよね。

ジョージ:そうだね。当時はSNSなんてまだまだだったからね。ただ、プロモーションに関しては、僕が元々販売員だったということが大きいというのは思ってる。販売員だったからお客さんのこともわかるし、ヒットしそうなものも分かったのかもしれない。あとはベーシックだけど、オフィスに移動してからも、販売員の声は必ず聞くようにしてたかな。彼女たちが1番お客さんを知ってるからね。

リナ:ちなみに、アメアパって、SNS上でもスタッフの方々のセルフブランディングがすごいですよね。

ジョージ:それは昔からかもね、特に渋谷店は。販売員に個性を求めているから。

リナ:他のブランドでここまで個が出ているブランドはないと思います。

ジョージ:アパレルだと販売員はソルジャー的な考えを持っている所も多いからかもしれないね。アメアパはどんどん個人に前に出てもらうブランドだから。

リナ:デジタル方面で成功した理由は、スタッフさん個々人のセンスの良さもありそうですね。ジョージさんも、販売員時代から、SNS上でも分かるパワーとカリスマ性がありました。私も当時「この人イケてる!」って思いながら、ジョージさんのことフォローしてました。  

立体的なプロモーションが出来ることが強み

リナ:今はコンサルタント業務もなさっているんですよね?

ジョージ: そうだね!イベントやソーシャルメディア周りのコンサルタントがメインでブランドコンサルタントももするよ。

リナ:私もいまソーシャルメディアのコンサルタントをしてるんですけど、何か気をつけてることってありますか?

ジョージ:企業秘密だからいえない。(笑)

リナ:分かりました。(笑)ところで、最近はイベントでもSNSでも、インフルエンサーなどの「人」に頼る部分が大きいなと思っていて。仕掛けづくりは多少出来たとしても……。

ジョージ:それはそうだよ。でもその仕掛けづくりやプランニングは誰でも出来ると思ってる。キャスティングをどうするか、その人をちゃんと呼べるのか、その人を呼んでどうするかが重要。イベントやPRって、おもてなしだからね

リナ:確かに、そうですね。その立体的なプロモーションが出来るからこそ、ジョージさんの価値があるってことですよね。

ジョージ:そうじゃないかな。それだけがコンサル業務じゃないけどね。あとは、企業側も僕のことをインフルエンサーとしても認識してくれているから、ダブルで攻めてるところもあると思う。心掛けているわけではないけど、自然とそういう立ち位置になったし、自分でもラッキーだと思ってる。

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リナ:そうですよね。私はELLEgirlのときから、「PRマンの凄い人」と認識していましたけど(笑)、知らない人から見たら、よく周りに芸能人がいる、インフルエンサーということしか分からないんじゃないでしょうか。

ジョージ:そうだよね。僕は、インフルエンサーとしてはマスの存在じゃないけど、ピンポイントなニッチな層(=フォロワー)にリーチが出来るから、企業としてもそこを喜んでくれているんだと思う。  

「Instagram」の次に来るのは「Snapchat」と「Periscope」(ペリスコープ)

リナ:現在は東京とNYでデジタルPRスペシャリストとして活躍されていますが、NYと東京を比べて、「東京って遅れてるな」と感じることはありますか?

ジョージ:すごく感じる。「Instagram」のビジネスの活用も2・3年くらい遅いでしょ。

リナ:それは私も思っていました!Instagramの他に、NYで積極的に活用されているSNSって何かありますか?

ジョージ:じゃない?ファッションショーの始まる前も、ご飯食べる前もみんなやってる。

リナ:やっぱりSnapChatなんですね!日本だとまだまだ進出してないですが、最近若年層の海外思考の女の子たちが使い始めてるのと、英語の記事でビジネス活用における「SnapChat VS Instagram」みたいな記事を最近よく見かけます。

ジョージ:そうそう。NYでは、いつもどこでもみんな「Snapchat」をしてる。でも僕は、デジタルPRマンだからこそ、オフラインの時間を楽しみたいって本当は思うんだけどね。だから、食事とか友達とかといるときは、僕は携帯を全然見ない様にしてる。

リナ:日本人の女の子も、みんなで一緒にいても、写真撮ってInstagramにアップしてから会話が始まったりします。

ジョージ:全世界そうみたいだよ。ヨーロッパ、東南アジア、アメリカ。みんなそういう動きをしていて、もったいないなと思う。

リナ:ちなみに、若い女の子でも、Instagramとかを使いこなしている子と話すと、Instagram飽きたんだけど、動画系で面白いSNSがないって言いますね。

ジョージ:それはVineじゃなくて?

リナ:6秒では足りないみたいです。私個人的にもInstagramに代替されるSNSがまだないなと思いますね

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ジョージ:そうなんだ。でも「Snapchat」も「Instagram」ほど伸びるかっていったらそこまで伸びるイメージもないかな。あとは「Periscope」だと思う。Fashionブランドを中心に中継アプリとして使われ始めてる。

リナ:え、知らなかった。調べてみます!

ジョージ:「ニコニコ動画」とか「ツイキャス」みたいにその場で生放送が出来る様なキャスサービスだよ。

リナ:確かにキャスの需要は若年層中心にも高いですよね。日本でも当たりそうな気がしますね!  

「Pinterest」を使って、インスピレーションを集めたりは絶対しない

リナ:「GEORGE OF GRAND」というご自身のブランドにおいて、クリエイティブディレクターもされていますが、例えばPinterestを使ってインスピレーションを集めるようなことはしないんですか?

georgeofgrand

ジョージ:それは好きじゃないね、絶対かぶると思うから。そういうことしていると、新しいことって絶対生まれないと思うんだよね。僕は10000000%やらない。(笑)

リナ:そうなんですね……!そうすると、クリエイティブに対するインスピレーションは、いつ、どういったシーンで受けるものなんですか?

ジョージ:自分で旅をするのもそうだし、飛行機を降りた瞬間だって、ホテルに向かう時間だって、いつだってだよ。毎日がインスピレーションだと思うからね。

リナ:超かっこいいですね。(笑)

ジョージ:新しいモノを生み出すって、「はい、今から探します。」みたいな感じとは違うと思う。そういう所はオールドスクールなんだよね。

リナ:そうなんですね、色んな顔があるにも関わらず、それぞれにきちんと「ジョージ流儀」があって本当に驚きます……!  

自身の同性愛や同性婚を通して伝えたいこと

リナ: ジョージさんはインフルエンサーとしての顔もあると思いますが、SNSで気をつけていることってありますか?

ジョージ:投稿時間はマストだね。NYとの時差は13時間程度だから、朝の7時~8時にポストするっていうことは気をつけてる。

リナ:それはNYの時間に合わせてですか?

ジョージ:いや、東京の時間に合わせてだよ。フォローしてくれている人が断然東京の方が多いから。

リナ:そうなんですね。でも一応ポストも英語と日本語どちらでも書かれていますよね。
 

George Inakiさん()が投稿した写真 –


ジョージ:
そうだね、日本語だけだと、NYの友達とか絶対読めないからね。あと、バイリンガルに投稿することによってグローバル感が出るっていうのはあるかな。

リナ:なるほど。ちなみに、ジョージさんが以前、渡辺直美さんの友人としてTV「今夜くらべてみました」に出演されたときに、ご自身がゲイであることや、NYで同性婚を挙げられたことを、カミングアウトされてましたよね。その後に「LGBT」としてのブログ記事も書かれていて、SNS上ですごく反応があったと思っていて。そういった所を見ていても、ジョージさん自身パワーインフルエンサーだなと思っているのですが、どう感じられていますか?

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(参照:http://natalie.mu/comic/gallery/show/news_id/146781/image_id/395045

ジョージ:あ、反応多かったよね。いい機会だったんじゃないかな。 僕も隠してたわけじゃないしね。最初から、「ゲイです」ってわざわざ言わないし。人それぞれ意見があるけど、僕がそう思ってしまうのは、最初に言うと「僕ゲイだから特別扱いしてね」って感じじゃない?それが嫌だからさ。

リナ:確かにそうですよね。 ジョージさんのこと元々知らないだろうなっていう、私のゲイの友人も、ジョージさんのブログを物凄く有難がってました。「ゲイ=オネエじゃないんだ」っていうことを代弁してくれる人がいなかった、って言ってましたね。ジョージさんのことを知らない、違うコミュニティーの人にもキャッチアップされる位、あの記事は波及されていて、ジョージさんの発言の強さを感じました。

ジョージ:今までは単純に、言う人がいなかったからじゃないかな。テレビ的にオーバーリアクションにしなければいけないから、現実とテレビの世界では温度差はあるかもね。 

リナ:日本人は、ゲイにも普通の男の子みたいな子もいるっていうのが、分からないのかもしれないですね。「ゲイ=オネエ」って考えている人も多いですし。

ジョージ:そう。俺みたいなのもいるんだよっていうこととか、ゲイだからってオネエにしないといけないっていうわけではないっていうことを主張したかった

リナ:そうですよね。でも、友人は、本当に代弁してくれてありがとうございますと、強く感謝してました。(笑)

ジョージ:そうなんだ(笑)それは良かった。

リナ:前よりオープンな方も増えてきているなと感じますけど、どう思いますか?

ジョージ:トレンドではあると思う。一過性じゃなくて廃れないといいなと思うよ。少し前に、モデルのケンダルジェンナーの父親が65才で性転換して、雑誌の表紙を飾って、アメリカでもムーブメントになっていて、そういう時代なんだなとひしひしと感じたよね。


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