こんにちは、kakeru編集部の鵜ノ澤です。
2017年から2018年にかけて、Instagramには次々と新機能が追加されました。しかし、多くのマーケターが、その機能を使いこなせていないのが現状ではないでしょうか。
今回は、『ショッピング機能』と『アクションボタン(レストラン予約機能)※』の2つの機能に焦点をあて、開発背景やInstagramが期待する活用方法について成功事例を挙げながら深掘りしていきたいと思います。
※Instagramのビジネスプロフィールに設置できるアクションボタン「席を予約する」を指します。
前編の記事に続き、フェイスブック ジャパンの丸山さんにお話をお聞きします。
■フェイスブック ジャパン 丸山 祐子(まるやま ゆうこ)写真右
高校卒業後、2003年にアメリカへ留学。カリフォルニア州立大学フラトン校を経て、インターコンチネンタル大学へ入学。主にファッションマーケティング専攻。2007年、同大学卒業後帰国。人材会社で法人広告営業担当に就き、その後、広告会社でソーシャルメディア営業を担当。主に、Twitter, Facebookをはじめとする新規海外メディアの日本での広告ローンチに従事。 2013年5月より、フェイスブック ジャパンのClient Solutions Manager Leadとして主に広告主向けのデジタルマーケティングに関わる。現在、社内におけるプロジェクトメンバーの中心的存在として、Instagram広告をより多くのお客様に活用していただくための取組みにも携わる。
■kakeru編集部 鵜ノ澤直美(うのざわ なおみ)写真左
新卒でオプトへ入社し、様々な企業のSNS活用支援に従事。現在はInstagramマーケティングを中心に担当。オプトのオウンドメディア「kakeru」のライターとしても活動しており、若年層のSNSの使い方や、スマホ撮影術の記事を執筆。
なぜ、Instagramはショッピング機能を開発したのか?
▲ショッピング機能を活用している例(cohina より)
鵜ノ澤:Instagramは、『ビジュアルコミュニケーションのプラットフォーム』を謳っていたと思うのですが、なぜモノを買える機能を開発したのでしょうか?
丸山:開発の狙いは、これまでは分断されていた発見から購買までのプロセスを、Instagram内でシームレスに完結させることです。たとえば、Instagramの利用者の8割は、何らかのビジネスアカウントをフォローしており、6割が新しいサービスや商品の情報をInstagram内で得た、という調査結果がでています。さらに、そのうち7.5割の人は、発見したサービスや商品について詳しく調べる、友達に話すなどの行動を起こしています。
つまりInstagramは、利用者にインスピレーションを与えたり発見を促したりするだけでなく、行動に繋がるプラットフォームなんです。企業側にとってもInstagram内で消費者の行動を促すことができれば、売上などビジネス結果への貢献が期待できます。 しかし、これまでは発見から行動に至るまでの流れがスムーズとは言えませんでした。たとえば、お気に入りのブランドで可愛い洋服を見つけても、商品を購入したり、詳しい情報を得たりするまでに様々なステップが必要で、利用者にとっては不便な状況だったわけです。
鵜ノ澤:たしかにInstagramで気になる商品を見つけても、実際に購入する際は一度離脱して検索エンジンで商品ページを探さないといけないので少し手間に感じていました。現在、ショッピング機能の利用者数はどのくらいでしょうか?
丸山:毎月9,000万を超えるアカウントがショッピング機能を利用した投稿をタップし、商品タグを表示しているというデータがあります。
鵜ノ澤:そんなに多いんですね! グローバルの数値ですか?
丸山:そうです。日本では今年6月に導入したばかりなので、まだご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、「結構使われているんやで!」と声を大にして言いたいですね(笑)。企業からの注目度も高く、今後日本でもさらに利用者は増えると思いますよ。
鵜ノ澤:今はショッピング機能の利用可否審査も早いと聞いているので、もっと多くの方に使ってもらいたいですね。ちなみに前提として、アカウントのエンゲージメント(投稿へのいいねが多い、保存数が多いなど)が高いとInstagramでモノが売れやすい傾向はあるのでしょうか?
丸山:ショッピング機能は導入から日が浅いですし、現時点でアカウント自体のエンゲージメントと購買行動にどこまで相関性があるか断言するのは難しいところです。もちろん、日頃から投稿を保存してくれる利用者が多いブランドであれば、商品の見せ方が上手く、消費者に刺さっているということですから、ショッピング機能を導入した後も効果が出やすい可能性はあります。
しかし、フォロワー数が多ければモノが売れるとは限らないと思います。これはグローバルのデータですが、ビジネスプロフィール(アカウントのトップページ)に来訪するユーザーの3の2はアカウントをフォローしていない人たち、という結果がでているんです。
鵜ノ澤:つまり、アカウントをフォローしていなくても、投稿を見て商品購入してくれる可能性は十分にあるということですね。フォロワーを増やそうと企業の一方的なキャンペーン施策を見かけることがありますが、そう躍起にならなくてもいいように思います。
ストーリーズにも対応したショッピング機能、その活用方法は?
鵜ノ澤:ショッピング機能の導入方法と事例はさまざまなメディアでご紹介されている(※)ので割愛させていただきますね。ショッピング機能は「Explorerタブ」にショッピングチャンネルができるなど、アップデートが相次いでいますが、ストーリーズに焦点をあててお聞きしたいです。ストーリーズでショッピング機能が利用できるようになったことで、これまでのフィードと違いはでてきましたか?
※参考記事
・Instagramのショッピング機能(Shop Now)を導入してみよう
・Instagramショッピング機能の海外事例9選とSNSコンサルタントが考える活用ポイント
丸山:基本的な仕組みとしては、フィード投稿で利用するショッピング機能とほぼ同じです。違う点としては、ストーリーズならではの特徴を活かして商品やブランドの魅力を伝えられることだと思います。
鵜ノ澤:たとえば、どういった点でしょうか。
丸山:フィード投稿とは違い、ストーリーズ投稿はフルスクリーンで表示されるため、商品訴求時の印象が強く残ります。また、お絵かきやスタンプなどストーリーズの加工ツールを用いることによって、目を引くコンテンツを簡単に制作できます。
鵜ノ澤:ストーリーズで24時間限定販売を試すのも面白そうですね。ショッピングタグを使用した投稿における、コンテンツ制作のポイントはありますか?
丸山:ショッピング機能を使った投稿は、ブランドや商材によってコンテンツの作り方や見せ方が変わってくると思います。商品のブツ撮りがいいのか、モデルカットがいいのか、静止画と動画はどちらか良いのかなど、色々な投稿を試してみていただきたいですね。
鵜ノ澤:丸山さん一押しのショッピング機能活用法をぜひお聞きしたいです。
丸山:minneさんは積極的にショッピング機能を活用されていますね。24時間で消えるストーリーズの投稿も、プロフィール画面にハイライトとして公開することによって、いつでも閲覧できる仕組みになっています。
▼minne ハイライト・ストーリーズ
鵜ノ澤:ショッピングタグがついているストーリーズ投稿をハイライトしているということですね。
丸山:そうなんです。テーマごとにハイライトでまとめているので、利用者はアカウントのトップページからいつでも飛べるようになっています。
鵜ノ澤:ショッピング機能を活用する際には、フィード投稿とストーリーズ投稿それぞれに違いがあるので、それらをうまく組み合わせることで工夫できそうです!
▼ショッピング機能におけるフィードとストーリーズの特徴
フィード |
・投稿テキストで商品詳細を説明できる ・コメントで商品に関する質問に答えられる ・利用者は購入予定商品をコレクション機能で保存できる ・ハッシュタグから新規流入を狙える |
ストーリーズ |
・全画面で商品訴求できる ・イベントと相性が良い(例:24時間限定販売) ・ハイライト固定でビジネスプロフィールのトップに表示できる ・GIFスタンプを活用するなど、カジュアルな仕上がりでも違和感なし ・ハッシュタグから新規流入を狙える |
アクションボタン(レストラン予約機能)に期待する効果とは?
鵜ノ澤:さて、ここからは『席を予約する』のアクションボタンを開発した経緯をお聞きしていきたいと思います。
丸山:ショッピング機能を導入した背景と同じですね。つまり、多くの利用者がInstagram上の投稿をきっかけに行動を起こしているという背景があり、発見から実際の行動までをシームレスに繋げることで、利便性をあげようという狙いがあったわけです。レストラン予約の場合は、お店の発見から来店予約までをシームレスに繋げるために、機能の開発に至りました。
鵜ノ澤:国内では、ぐるなびさんとの連携からスタートしましたが、なにかきっかけはあったのでしょうか?
丸山:アクションボタンは、パートナー企業と連携して導入しています。ぐるなびさんと協業することにした理由は大きく2つあります。1つ目は、 ぐるなびさんが国内飲食店の正確かつ詳細な情報を保有していること。2つ目は、全国20ヶ所以上に営業所を持っており、「ぐるなび大学」などのプログラムを通して経営に役立つノウハウやツール活用法の提供など、きめ細やかに飲食店をサポートしている点に共感したことです。機能の導入だけに留まらず、より詳しいInstagramの活用法を飲食店側に伝えることでビジネスの成長をサポートしていきたいと考えており、そのような活動においても一緒に取り組んでいきたいと考えています。
鵜ノ澤:アクションボタン(レストラン予約機能)を通して、今後どのような効果を期待していますか?
丸山:Instagram内で、飲食店の発見から来店までをシームレスに繋げることで、利用者にとっては利便性の向上が見込めます。また、飲食店側にとっては、Instagramを通してより効果的にビジネスを成長させることができます。多くの飲食店にInstagramを活用いただくことで、私たちのプラットフォームが活性化されるのはもちろん、日本の飲食業界や経済成長に貢献することができればと期待しています。
鵜ノ澤:レストラン予約機能を効果的に利用するために投稿や、アカウント設計のポイントはありますか?
丸山:予約機能自体の導入は簡単にできますが、飲食店の方々にはアクションボタンの設定だけでなく、フィードやストーリーズで定期的に情報発信をすることをおすすめします。とくにストーリーズは利用者が急速に増えており、日本でもデイリーアクティブアカウントの7割がストーリーズを利用するほどに成長しているため、新しい顧客にリーチしたり、既存のお客様とのコミュニケーションのためのツールとして積極的に活用いただければと思います。
鵜ノ澤:今後は、ぐるなび以外にも、ほかの業態で連携する可能性はありますか。海外だとチケットサービスや美容系のサービスと連携されていますよね。たとえば、映画・ライブ・アミューズメント施設や、美容室などで使えると便利だなぁと。
丸山:そうですね。現時点ではまだ具体的な計画はありませんが、利用者やビジネスのニーズがある分野であれば、前向きに検討していきたいと思っています。
Instagramがホームページに成り代わりはじめている
丸山:そういえば、実はInstagramって、ホームページのような役割で使われているケースもあるんですよ。
鵜ノ澤:どういうことでしょう…?
丸山:以前は、電話番号や営業時間などの情報、商品の詳細などをホームページで発信するブランドや企業が大半だったと思います。しかし、Instagramのビジネスプロフィールであれば、お問い合わせ情報やお店までの道順も記載できますし、フィードやストーリーズの投稿で商品やブランドの世界観も紹介できますよね。そのため、コストを掛けてホームページを制作するのではなく、オンライン上の情報発信をInstagramに集約するビジネスが増えてきているんです。
鵜ノ澤:Instagramがホームページという視点は今までありませんでした…!どんな企業がホームページとして使っているのでしょうか?
丸山:特に規模が小さい企業や、スタートしたばかりの新しいブランドに多いですね。
鵜ノ澤:小規模のブランドや企業で、Instagramの活用が上手いなと感じる例をぜひお聞きしたいです。
丸山:ホームページ自体を無くしているわけではないのですが、このあと2つご紹介しますね。ビジネスプロフィールを活用しているのはもちろん、フィードやストーリーズでブランドの世界観や魅力を効果的に伝えている好例だと思います。
鵜ノ澤:たとえば、予算が潤沢にはない企業がホームページを制作する場合、制作自体のコストや運営者のリソースなどさまざまな課題もでてきますよね。ですが、Instagramをホームページとして活用することで、解決できるケースもありそうです。
丸山:そうですね。それに日本でも、何かを検索するときにInstagramを利用するというケースも一層増えてきていますよね。Instagramをホームページとして活用すれば、Instagram内で企業サービスを認知させ、購入などの行動までをシームレスに行うことができます。もちろん購入後のコミュニケーションも。
▼BUAISOU(藍師・染師)
徳島県で藍の栽培から、染料となる?(すくも)造り、染色、製作を行う。 ▼BIRDS’ WORDS(工房)
大阪の鳥や花などのモチーフにした陶磁器や紙製品を制作。
鵜ノ澤:2019年は小規模のブランドや企業のInstagramアカウントにも注目ですね。長時間にわたり、お付き合いいただきありがとうございました!
インタビュー後記
2018年はビジネス待望のショッピング機能の国内ローンチをはじめ、ぐるなびとの提携など、企業とInstagram利用者をつなぐ機能のアップデートが目白押しでした。
そして、2019年もアップデートが相次ぐことでしょう。
・IGTVの広告メニューはローンチされるのか?
・ぐるなび以外にも国内で提携先は増えるのか?
・企業のオリジナルフィルターを制作、配布するタイアップメニューは?
などなど、挙げるとキリがありません。
瞬間瞬間を切り取る写真加工・共有SNSから、日常使いするビジュアルコミュニケーションのプラットフォームへ進化を遂げたInstagram。これからもビジネス関連のアップデートが続くならば、もしかすると生活に必要不可欠なインフラ的存在になり得る可能性を秘めているように感じます。
kakeruは2019年も引き続き、Instagramの最新動向を追いかけてユーザーインサイトを深掘りしていきます! それでは、また。
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