以前kakeruでは、「Facebookおじさん」というテーマについて取り上げました。
これは、Facebook上で若者を困惑させる投稿をする30-40代の方々に対しての若者の見解を取り上げた内容でした。
もちろん、「Facebookおじさん」側は、意図的に若者を困惑させようとしているわけではなく、彼らなりの使い方をしているだけですし、彼らからすれば同じように若者の投稿も理解できないことだらけだと思います。
本来SNSは利用する人たちが節度を守って自由気ままに思いのまま発信する場所なので、どちらかが良い悪いではありませんが、kakeruではそんなSNSの世界で突然発生する現象などを切り取っていきたいと思います。
前置きが長くなりましたが、今回は「若者とおじさんのLINEコミュニケーション」について。
今年、若者の間で「おじさんLINEごっこ」という遊びが流行ったのはご存知でしょうか?
10-20代の若年層パネルを豊富に抱えるテスティーによる女子高生への実施調査によると、この遊びの認知率は26.1%。約4人に1人が認知している状況です。
今回は、そんなおじさん(以下、”LINEおじさん”とします)の生態を探るべく、実際に彼らとやりとりをしたことのある女性3名と、LINEおじさん予備軍になると思われる30代後半の男性をお招きし、座談会を開催しました。
※本記事は、2017年8月上旬に取材した内容を元に作成しております。
※個人が特定されないよう、かなり粗目にモザイク処理をしております。
(写真左)あいさん/26歳会社員
(写真中央)かえでさん/26歳会社経営者
(写真右)ゆきさん/24歳会社員
(写真手前)佐藤さん/37歳会社員、今回3人の女性の共通の知り合いであり、メッセージのやりとりからLINEおじさんなのでは?と疑問視されている人。
若者とLINEおじさんとの間で、どのようなすれ違いが起きているのでしょうか?
確認するべく、座談会に参加してくれた女性3名に彼らの特徴について話を伺いました。彼女たちからすると、LINEおじさんの特徴は「会話がドッジボール」とのこと。一体どういうことなのでしょうか?
LINEおじさんとの会話は「キャッチボール」ではなく「ドッジボール」
LINEおじさんの特徴その1:俺通信
kakeru編集部:そもそも、LINEおじさんってどういう人なんでしょうか?
あい:私が最近LINEでやり取りした人の中でいうと、こういう感じの人かな。
かえで:あー!「俺通信」パターンね。
kakeru編集部:俺通信?
かえで:自分にあった出来事とかを送ってくるんです。毎日来るので、「時報か!」ってツッコミたくなります。
ゆき:一方的に彼らの報告を聞かされてるだけだから、メルマガみたいだよね(笑)。「俺は今靴を磨いてもらってる」「今お酒を飲んでいる」って、全部自分のことばっかり!
LINEおじさんの特徴その2:漢字の変換や絵文字の癖が強い
かえで:あと気になるのは、漢字の変換!例えば「あなた」を「貴女」って打ってるとか(笑)。
kakeru編集部:漢字に変換することは印象として悪いですか?
かえで:漢字変換が悪いんじゃなくて、漢字に変換できるもの全て変換すべきだと思っているところが気になるんです。たまに漢字が難しくて読み方が分からないときもあって。検索して読み方を調べてます(笑)。
ゆき:あと、やたらと絵文字を多用する人もいるよね。「なんで『!』を絵文字にしちゃうの?」ってよく思う(笑)。
あい:わかる!「!」とか「汗マーク」とかを絵文字にする人ってめっちゃ多いよね。絵文字で水しぶきみたいなのあるじゃないですか。なんでそんなに汗かいてるのって。
LINEおじさんの特徴その3:どうでもいい画像を送りがち
あい:頼んでもないのに画像をたくさん送ってくる人も多くないですか?「こんにちは。僕は今◯◯にいます。ご飯が美味しいです。」みたいな。
ゆき:めっちゃわかる。この後「今度一緒に食べに行こうよ」とか言うんだよね。あと、「今週食べたものたち」とかいって人格化しちゃってんじゃん、みたいな。
かえで:「美味しそう!」とか言ってほしいんだろうけど、こんだけ唐突に送られてきても、別に見たくもないよって気持ちになる(笑)。
LINEおじさんの特徴その4:急に距離を詰めてくる
あい:最近送られてきたのが本当にきつくて。
かえで:普通じゃないよこれ。よくわからない距離の詰め方してくるね。
kakeru編集部:どこで知り合った人なんですか?
あい:一度だけ一緒に仕事をした人です。不動産関係の仕事をしている人で「この物件オススメだよ。俺の部屋の隣だけど(笑)。」とか言ってくるんです。
彼女たちの実体験をもとにLINEおじさんと呼ばれる人たちの特徴をまとめてみましたが、共通しているのは、会話が一方的になっていること。会話の主体が基本的に自分自身で、相手が求めていることを考えていないように感じます。
なぜ、彼らはこのようなコミュニケーションをとってしまうのでしょうか?今回座談会に参加してもらった”LINEおじさん予備軍”とされている佐藤さんに話を聞いてみました。
なぜLINEおじさんと若者の間で“すれ違い”が起きてしまうのか?
kakeru編集部:今回、佐藤さんにはLINEおじさん予備軍としてお越し頂いたわけですが、そもそもご家族やご友人以外の女性にLINEはしますか?
佐藤:しますね。
kakeru編集部:どこで出会った女性なんですか?
佐藤:ナンパした子とか、飲み会で会った子とかに…ちょっとね。
kakeru編集部:LINEを送って、無視されることはないんですか?
佐藤:そもそも無視されることが前提。だから、10人くらいにばーっと送るんですよ。1人でも返ってくれば、その子と会うみたいな。
kakeru編集部:彼女たちの話を踏まえてですが、最終的には彼らは何を求めているんでしょうか?
佐藤:僕自身もそうですが、一番の目的は誘いたいんですよね。会いたいし、飲みに行きたい、もっと深い関係になりたいんだと思いますよ。
kakeru編集部:なるほど。でも、彼女たちの話を聞くと、仲良くなりたいなら、一方的な会話はやめた方がよいと思うのですが。
佐藤:少し考えたんですけど、一方的なLINEになってしまうのは彼らなりの気遣いだと思うんですよ。会いたい女性がいたとして、お互いの予定が合う日はそうそうあるものじゃないと思うんです。でも、彼らは誘いたいので、自分の都合が良い日は連絡を入れたいじゃないですか。
kakeru編集部:そうですね。
佐藤:でも、毎回お誘いの連絡を入れると女性から引かれるかもしれない。でも、常につながりは保っておきたいという気持ちがあると思うんですよ。だから、誘うまでの間に近況報告を入れることで、「毎回誘ってる感」を薄めているのかなと。
kakeru編集部:なるほど…。女性のみなさんは、この意見を聞いてどうですか?
あい:こっちは近況報告は求めてないじゃないですか。それに、私たちも誘われることは感じています。私としては、時間が空いたり、ほんとに暇でどうしようもなかったり、ぶっちゃけ奢ってほしいとか理由は様々ですけど、変に近況報告とかされるよりもストレートに誘い続けてもらった方がいいです。
kakeru編集部:つながりを保っておきたい気持ちも分かるんですが、なんで自分の話ばかりしてしまうんでしょうか?
佐藤:それは共通の会話が無いからだと思いますよ。同じ会社や業界の人なら共通の話題も見つけやすいけど。だから、もう自分の話しかないんですよ。特に、独身で本気で彼女を見つけたいという気持ちがないと余計に話題もないですし。
ゆき:私もそうだと思います。一回り以上も違う方と共通の会話を見つけるって、その人に対してこちらも好意がない限り頑張らないですし…。
kakeru編集部:LINEおじさんの特徴の中でも、顕著なのが「俺通信」だと思うんですが、彼らはそのメッセージに対して返信は求めてるんですかね?
佐藤:それはもちろん求めてますよ。常につながりを保っておきたいので。
kakeru編集部:先程女性陣は、LINEおじさんからの連絡をメルマガのように眺める、と話していましたがブロックとかはしないんですか?
かえで:ブロックはよっぽどですよね。さすがに身の危険を感じたらしますけど。もしかするとなんですが、わざわざ一対一でで会話する必要がない内容だと思ってるから、返信しないのかもしれません。
kakeru編集部:というと?
かえで:今ってTwitterやインスタもそうですけど、他愛も無い話を不特定多数の人に向けて発信する場所が増えてるじゃないですか。だから俺通信に対して反応する必要もないと感じているかもしれません。
佐藤:そうか、君らは「俺通信」のような近況報告を対個人ではなくてオープンにしてるんだね。Twitterだったら、反応したい時にリプライすればよいだろうし。逆に、LINEおじさんたちはメールや電話のような対個人とやりとりすることに慣れてしまっているから、自分の近況報告を相手に送ることも抵抗がないのかもしれないね。
あい:そうですね。でも普段の会話と同じだと思うので、想像すれば分かると思うんですよね。「おはよう!ねえねえ、今日ごはん食べてさ、ねえ、」って言われても何も答えれないじゃないですか?
佐藤:確かにねぇ…。
なぜ「LINEおじさん」は生まれたのか?
kakeru編集部:「LINEおじさん」が生まれたのはどうしてなんでしょうね。
佐藤:僕、LINEおじさんを生んだのは、たぶん「キャバクラ」だと思うんですよ。
kakeru編集部:キャバクラですか。なぜですか?
佐藤:昔と違ってキャバクラの女性たちが渡す名刺にはメールアドレスじゃなくて、LINEのIDが書いてることが多いんですよ。簡単にブロックもできるし、安全面も考えてそっちを使うようになっているんじゃないかと。
kakeru編集部:女性と連絡を取り合うために、おじさんたちはLINEをダウンロードするわけですね。
佐藤:キャバクラの子って、お店に行くと、その日の夜中か朝には絶対に連絡をくれるんです。でも、彼女たちにとってLINEは営業ツールだから内容がメルマガっぽいんですよ。
かえで:そうね、そうね。確かに。
佐藤:「昨日、あのあと変なお客とアフターに行ってウザかったんだけど、飲みすぎちゃった」「今日も夕方から出勤だけどジムに行こう」とか自分の話中心の連絡が来るじゃないですか。たぶんそれに影響されているんじゃないかなと。
ゆき:なるほどね。キャバ嬢の子が送るLINEが教科書になっちゃってるんだ。
佐藤:多分なんだけど、彼女たちは一日に何十人にも来店するおじさんたちの顔や名前って覚えてられないと思うんですよ。だから、自分の話が中心になってしまうのかなと。
かえで:だから影響されて俺通信しちゃうんだ。
佐藤:で、若い子を口説こうと思ったときに、おじさんが知ってるイケてる若い子のLINEって、彼女たちのLINEだと思うの。それを真似しちゃうからかもしれないなと。まぁ、僕自身がそうだからだけど(笑)。
ゆき:あと、もしかすると、LINEおじさんと私たちが生きてきた時代の背景の違いもあるかもしれないですよね。
kakeru編集部:どういうことでしょうか?
ゆき:LINEやMessengerが出てくる前は、仕事ではメールが大半だったじゃないですか。今でもよく見かけますが、自分でメールを終わらせない文化というか。
佐藤:あるね。電話も先に切ってはいけない、とか。
ゆき:そうです、そうです。おじさんは会話の切れ目が分からないんじゃないかなと。私たちは、SNSをよく使うのでライトなコミュニケーションに慣れてるけど、おじさんたちは”既読スルー”に対して危機的状況だと思ってるのかもしれないなって。
結局、時代や手段が変わってもコミュニケーションをとる上で大切なことは変わらない
女性陣の話をまとめると、「LINEおじさん」と揶揄されている理由は、「俺通信」というエッジの聞いた言葉で表されるような特徴ではなく、「相手が何を求めているのか?」「この人の興味のある話題は何か」といったような、相手目線にたったコミュニケーションが出来ていないことなのかもしれません。
彼女たちに、「そもそもLINEおじさんと呼ばれる人たちと会うことに抵抗はあるのか?」と質問したところ、3人のうち2人は「LINEおじさんと旅行に行ったこともある」と言います。
会う理由としては、後学のためにビジネスパーソンとして先輩である彼らから話を聞きたかったり、ご飯を奢ってくれるからといったストレートな理由まで様々ですが、話を聞いている限り、自分にとってメリットがあるか否かで判断しているケースが多いように感じました。
でも、それは別に批判されるようなことではなく、LINEおじさんと呼ばれる彼らも同じでしょうし、LINEという手段や性別、年代に限らず昔からあると思います。
一方で、過ごしてきた時代の背景から若者とLINEおじさんにとっての「コミュニケーション」に対する考え方が違う可能性があることも、座談会を通して感じることができました。
メールや電話といったクローズドで、かつ会話を自ら途切らすことの出来ないLINEおじさんたち。そして、TwitterやInstagramに見られるオープン、かつ反応するもしないも自由な若者たち。
双方で物事に対する捉え方が違うように、コミュニケーションの仕方にも違いがあるのは当たり前のはずです。「相手目線にたったコミュニケーション」が足りないのは若者側にとっても言えることなのではないでしょうか。
現に、女性陣からは、「同年代の男性でもLINEおじさんのような連絡をしてくる人たちもいる」といった声も挙がっていました。
kakeruでは、今後もSNS時代の今だからこそ起こっている特徴的な文化や、今回のようなコミュニケーションの変化についても調査していきたいと思います。
それではまた。
企画・編集:三川、酒井 Text by