こんにちは。kakeruの酒井です。
みなさん、マストドンやってます? どこかのインスタンスに所属してたりしますか?
6月頭に、こんな記事を見かけました。
▶▶テレビ局もマストドン 鹿児島を発信するインスタンス「てげどん」がスタート
この記事を見た時に、「マストドンすげぇ、日本中に広がってきてるじゃん」と驚きました。でも、同じくらい驚いたのは、
…てか、鹿児島でどんなトゥート(Twitterでいうところのツイート)してるんだろう、と。
いや決してネガティブな意味ではなく、僕自身が地方出身者ということもあり、自分の地元が…と考えたらちょっと驚いてしまったんです。
ということで、運営しているMBC南日本放送にTwitterで連絡をとり、インタビューさせていただきました。東京と鹿児島という距離を繋いでくれたSkypeさんありがとう!
▲MBC南日本放送デジタルメディア部白坂さん
地方の放送局も変わらなきゃダメ、MBC南日本放送がSNSに取り組む理由
酒井:今日はよろしくお願いします! Twitterでリプ飛ばしたら、速攻返信きたのでビックリしました。
白坂さん:いえいえ~、とんでもないです。エゴサーチしてるのですぐ見つけました!
酒井:結構積極的にTwitter使ってるんですか?(方言の良さをテキストで表現できないのが悲しい)
白坂さん:20項目くらいのキーワードで頻繁にエゴサーチしてます(笑)。自分たちの放送局や番組のことを視聴者の方々がどのように思ってるのかを知りたくて。
酒井:おぉ…。なぜでしょうか?
白坂さん:視聴者の方々はどんどんネットやSNS使っているのに、放送局が同じ目線に立たないのはダメだろ、と局内でもよく話すんです。なので、インスタ、LINE LIVE、ツイキャスなど新しい取り組みには積極的にチャレンジしてます。
酒井:僕、地元高知県なんですけど、やってるのかなぁ…。
白坂さん:エイプリルフールには、鹿児島でも”けものフレンズ”の放送が決定したこともあって、それに合わせた投稿もしました(笑)。若い方に少しでも「なんかMBCおもしろいことやってんな」と感じてもらいたくて。
かごしまちほーのテレビ局「えむびーしー」が動物だらけになっちゃった⁉️どんな動物がいるのかなぁ❓みんなで「えむびーしー」の中を冒険してみよう?
— MBC南日本放送 ()
酒井:すごっ…。”てげどん”が立ち上がったときは、「か、鹿児島でマスト…ドン?」と思っていました。正直なところ、何すんの?と、すみません…。今日は色々教えてください!
「情報が伝わる先」はテレビやラジオだけではなくなっている
酒井:さっそくですけど、インスタンスを立ち上げたきっかけって何だったんですか?
白坂さん:4月に入った頃、Twitterのタイムラインでよく「マストドン」って言葉を見かけるようになったんです。
酒井:あー、Web界隈の人たちがよく言及してましたよね。ITmediaさんでもマストドン特集が始まりましたし。
白坂さん:はじめは、流行ってるのかな?と疑問だったんですけど、鹿児島でも西郷隆盛をもじった「Saigodon」というインスタンスが立ち上がりまして。フォロワーさんたちの中でも、インスタンスを立ち上げた方がちらほら出てきたので、もしかすると日本でもマストドンが広がりつつあるのかなと。
酒井:でも、自分たちで立ち上げるの大変じゃなかったですか?
白坂さん:技術的な部分は、共同運営者のシナプスさん(鹿児島のプロバイダ)がサポートしてくれてるんです。
酒井:当初は謎のサービスだったのに…。シナプスさんは結構乗り気だったんですか?
白坂さん:「やりたいですよねー」って話をしていたら、二つ返事で「当然ですよね」、と(笑)。そのまま勢いにのって、1ヶ月かからないくらいでリリースしました。
酒井:でも、分からないことも多くなかったですか?
白坂さん:多かったです。なので、早くから始めていた「Saigodon」の運営者と直接お話したり、カドカワさん主催のマストドン会議にも参加して色々とアドバイスをもらいました。どうしてもやりたい!という気持ちが強くて。
酒井:スピード感と熱量がすさまじいですね。マストドンのどこに魅力を感じたんですか?
白坂さん:一つは、新しいし面白そうだからやってみたい、という好奇心と、マストドンを活用することで、何か新しい取り組みができるかもしれないという期待がありました。
酒井:開始するまでのスピード感が物語ってます。
白坂さん:もう一つは、他のSNSを活用している理由と同じですけど、今の時代、視聴者はどこで情報を得ているか決めつけることができないからです。地方だとしても、テレビやラジオだけが情報源じゃないんです。
酒井:なるほど。
白坂さん:今、てげどんでは地域情報や番組の情報中心にゆる~く運営していますが、放送局としては有事の際に、少しでも多くの人に情報が届くようにしておきたいんです。
「てげどん」、今どんな感じですか?
酒井:今って、参加人数とか、どんな人たちが参加してるんですか?
白坂さん:まだ少なくて、参加人数は200人ちょっと、年齢は3~40代くらいが多いでしょうか。立ち上げ当初に声をかけさせてもらった県内のブロガーの方々が中心ですね。
酒井:若い人たちはいないですか?
白坂さん:多分いないですね(笑)。ほんとはもっと参加してほしいんですけど。
酒井:参加しずらいんですかね?
白坂さん:う~ん、多分まだ知られてないと思うんですよね。先日、たまたま県内の女子大で私たちの放送局のネット活用に関する講義を持たせてもらったんです、90人くらいのJDの子たちに、「マストドン知ってる?」って聞いたら誰も知らなくて(笑)。
酒井:なるほど。
白坂さん:ショックすぎて、てげどんで報告したら「女子大生様が来てくれるかもしれないから浄化作業しなきゃ!」とみんなが騒ぎ出しまして(笑)。やたらとパンケーキとかがアップされるようになりました。
酒井:なんかわちゃわちゃしてて楽しそう。他にはどんな会話が盛り上がるんですか?
白坂さん:ここ1週間くらいですけど、やっぱり食べ物の話題が多いですね。飯テロ的な。
白坂さん:つい最近は、社内食堂の”カツ丼”が盛り上がっていました。
酒井:カツ丼?
白坂さん:うちのカツ丼は”ついつい白状しちゃうカツ丼”なんですよ。
酒井:どういうこと…?
白坂さん:局内にある社内食堂は、元々警察署から移転してきたものなんです。…ってことは、このカツ丼”本物”じゃない?みたいな会話が飛び交いまして(笑)。
酒井:(笑)。
白坂さん:鹿児島内で有名なブロガーのKagoshimaniax(かごしまにあっくす)さんが記事にして、てげどん内にも投稿してくれて。その後、社食以外でもカツ丼を食べたという報告がめちゃくちゃトゥートされました。
酒井:地域情報とか番組情報も流してますよね?
白坂さん:そうですね。でも、インスタンス内ではなるべくとっつきやすい話題を心がけていて、番宣のときは、【PR】をつけたりしています。
酒井:しっかりネットのトレンドもおっかけてますね(笑)。
白坂さん:楽しんでもらえるように心がけたいんですよね。鹿児島なので、桜島の噴火情報もインスタンス内でトゥートするんですけど、正直噴火情報ってYahoo!ニュース見ればよいじゃないですか?
酒井:そうですね。
白坂さん:それだと、あんまり面白くないので、博報堂さんの造語「自分爆発レディ」になぞらえて、「桜島爆発レディ」というアカウントを立ち上げまして。
酒井:爆発してもらっちゃ困るアカウント名ですね(笑)。
白坂さん:もちろん困ります(笑)。有事の際に備えて…という大きな目的はありつつ、なるべくインスタンス内の空気に合わせれるような工夫は必要だなと感じています。
酒井:なるほど。他にも盛り上がるネタってありますか?
白坂さん:県内に住んでいても知らない魅力もてげどん内では話題になります。最近だと、ブロガーさんで離島(奄美大島)に行った人がいて、その情報で盛り上がりました。てげどん内でしか得られないような情報がもっと出てくれば、「てげどんって知ってる?色々おもしろい情報あるらしいよ」と、県内、さらには県外の人にも広まれば嬉しいなと思ってます。
酒井:旅行の時だけ参加するのもよいかもしれないですね。今のインスタンスを見ていると活発にやりとりが発生しているので、すぐに反応がありそうです。
”クソリプ”も”FF外”も無い、今のマストドンは「距離感がちょうどいい」
酒井:ポストTwitterとも呼ばれていましたが、実際使い始めてみてどうでしたか?
白坂さん:Twitterとはまた違った文化というか空気感ができているのかなと思います。
酒井:どういった点ですか?
白坂さん:まず、インスタンスに参加すると、すでに多くのトゥートがタイムラインを駆け巡っているのに驚きました。
酒井:最初びっくりしますよね、何事かと。
白坂さん:そうなんです。でも、初対面の人たちだらけのはずなのに、なぜか自然に絡んでいけるんですよね。それに、別に無視されても好き勝手に喋ってもいい。なんていうか、自由というか、距離感がちょうどいいんですよね。
酒井:なんでですかね?
白坂さん:一つは、多分マストドンの特徴でもある、”インスタンス”という存在だと思います。一つのテーマに沿って出来上がったコミュニティなので、参加した時点でみんな友だち、みたいな空気感が出来上がってるんじゃないかなと。
酒井:なるほど。
白坂さん:だから、マストドンには「クソリプ」とか「FF外から失礼します」みたいな文化とかないんですよ。そもそもFFが無いですし、参加したインスタタンスに興味がなくなれば、別のところにいけばいいんです。
酒井:たしかに。
白坂さん:閉じた空間というのも理由かなと思っていて、Twitterだと炎上しそうなことも、気兼ねなく話せている気がします。
酒井:たとえばどんな話題ですか?
白坂さん:最近だと”生肉”の話ですね。Twitterだとネガティブに取り上げられがちだと思うんですよ。
酒井:よくネットでもまとめられたりしちゃいますよね。
▶▶クックパッドに豚ユッケ(生肉)のレシピが掲載されていると話題に「通報機能が必要では?」
白坂さん:てげどん内でも一度、参加してくれている県外の方が、「鳥刺し食べたい」と絡んでくれたんです。そのあとも燃えずに各々、鳥刺しの写真をアップしたり、情報を交換しあったりして。
酒井:ふむふむ。
白坂さん:閉じている空間だからこそできることだと思うんですよ。粗探しを楽しむような人もいないですし。繰り返しになってしまいますが、何か違うな、と思ったら別のところで楽しめば全然OKなんです。
今後の「てげどん」はどう展開していくのか?
酒井:てげどんでは今後どんな展開を考えていますか?
白坂さん:まずは、もっと地域の情報が流れるようにしたいです。なので、たとえば地域おこし協力隊などにも参加してもらえたりするとよいなぁ、と。あとは、番宣ばかりはしたくないですが、もっと私たちが放送している番組に”てげどん”から参加できるような仕掛けが出来たらいいなと思っています。
酒井:どのようなことができそうですか?
白坂さん:たとえばラジオは相性が良いと思っていて、放送中にてげどん内で質問を受け付けてみるのも面白いんじゃないかな、と思うんです。文字数も500文字とTwitterと比べると多いですし。
酒井:なるほど。逆に、今課題だと感じていることはありますか?
白坂さん:やっぱり、会社が運営している以上、ビジネスとして成立させる必要はあるかなと思うんです。遊びだけで運営しつづけるのは難しいですし。
酒井:かなり難しそうな問題ですね。マストドンの良さが損なわれる可能性もありそうです。
白坂さん:そうなんです。せっかくインスタンスで、ゆる~くつながっている今の状態を崩すのは私たちとしても嫌だなと。とはいえ…という部分もあるので、なるべく参加者の方々に無理のない範囲でできることを模索しようと思っています。
放送局こそ、マストドンか?
鹿児島で立ち上がったインスタンス”てげどん”。はじめは、地方の放送局が一体どんな理由で?と疑問に思っていましたが、マストドンの強みとも言える、一つのテーマに沿ったコミュニティ形成という点は放送局にこそ有効かもしれません。
”てげどん”に参加すれば、すでにそこには同じ仲間がいます。ひとりぼっちになることはなく、一つの番組についてのやりとりをその仲間たちとすぐに始める。Twitterとちがって、フォロー・フォロワーの関係になる必要もありませんし、いちいちハッシュタグを付けて投稿する手間もありません。
今、てげどんは参加者の誰しもがとっつきやすい地域情報を中心に盛り上がっていますが、今後テレビ・ラジオ、とくに生放送での番組と連動した企画がどのような盛り上がりを見せていくのか注目していきたいと思います。