こんにちは。kakeru編集部の佐藤です。
TikTokが日本に上陸してから1年半。国内の月間アクティブユーザーは950万人を突破しました。
15秒から1分までの動画を手軽に投稿できるTikTok。BGMに合わせてリップシンクしたり、お題に合わせて動いたりと「真似する文化」により若年層の間で爆発的に広がりました。
そんな中、TikTok内でトレンドを作り出す『TikToker』が次々と登場。
今回お話を伺うのは、“病みかわ”の音楽をTikTok内で表現し、POPな曲調やリアルな歌詞から68,200人(2019年8月現在)のフォロワーを持つ「CHICKwarp」のお二人。もともと、美容系YouTuberとして活動しているすうれろさんと、青野ジョセフさんによる男女病みかわユニットです。
「CHICKwarp」が2019年3月に投稿した曲『あなたと私の絶対ルール』は瞬く間に広がり、現在使用回数は7,500件超え。一躍人気のTikTokerになりました。
既存の音楽を使用する「動画」のジャンルが多いTikTok内で、オリジナルで楽曲を作成するクリエイターはまだ数少ないそう。
真似する文化が浸透しているTikTokで、オリジナル楽曲を作成し、ブームを生み出す裏側を伺いました。
15秒でユーザーを惹きつけるオリジナルコンテンツ
佐藤:今日はよろしくお願いします。
すうれろ・ジョセフ:お願いします。
佐藤:すうれろさんのTikTokよく見ています!「TikTok」というと、すでにある音楽に合わせてリップシンクをするイメージがあったのですが、お二人はオリジナルの曲を作って活動しているところがすごいなと思っています。
すうれろさんは最初からTikTokで活動しようと考えていたんですか?
すうれろ:いえ、私はYouTubeで美容関係の動画をアップしていたので、元々TikTokには注力していませんでした。たまに投稿しても、フォロワーが増えることもなかったので向いてないと思っていたくらいです。
佐藤:そういった状態から、なぜTikTokに力を入れ始めたのでしょうか?
ジョセフ:僕がオリジナルのプロジェクトをやりたいと思ったことがきっかけです。僕自身も元々YouTubeを使って、J-POPを英語詞にするコンテンツ(チャンネル名:)を作っていたのですが、オリジナルでかわいい曲作りがしたいなと考えて彼女を誘いました。
佐藤:お二人ともYouTubeをメインで活動されていたのに、なぜTikTokを活動の拠点にしようと考えたのでしょうか?
すうれろ:いきなりYouTubeでフルの音源をあげても、最後まで聞いてくれるかわからない不安もあったので、まずはTikTokから始めてみようよと話していて。
TikTokだと15秒の時間制限があるので、そのぶん短く濃密なものが作れると思ったんです。
ジョセフ:TikTokでは、短いサイクルでユーザーの反応がわかるので、どんな音楽ならウケるのか対策がしやすいと思います。
佐藤:TikTokでは真似をする文化が浸透しているので、オリジナルコンテンツはより目立ちますよね。
ジョセフ:そうですね。やっぱり真似る文化があるので、一から作るクリエイターは少ないと思います。あったとしてもネタ系が多いので、僕たちは音を重視してミュージカル(音楽的)になるように工夫していますね。
すうれろ:最初のころは「この曲の歌手名を教えてください!」とコメントで質問されることがすごく多く、反響の大きさを感じました。
“病みかわいい”コンセプトで共感を生み出す
佐藤:曲と歌詞の雰囲気がすごくはっきりされていると思うのですが、コンセプトは決めているのでしょうか?
すうれろ:今は”病みかわいい”をテーマにしたものが多いです。コンセプトは絞った方がわかりやすいので、最初にどういうものを作るか二人で話し合いました。私も彼も過去に病気をしていて、やりたいと思っていることがうまくできない時期があり、その原体験からこのテーマを選びました。
佐藤:そうなんですね。
すうれろ:病気のことがあってもなくても、やりたいことを我慢してしまう若い子たちも多いと思います。そんなときに私たちの音楽を聞いて「明日からも頑張ろう」「こんな私でもいいんだ」と思ってもらえたら嬉しいですね。
佐藤:作る際にこだわっていることはありますか?
すうれろ:TikTokは特に流行りのサイクルが早いので、トレンドの言葉を見つけて語尾を変えたり、類義語を新しく作ったりしています。
短いなかでダイレクトに響くように、刺激の強い言葉をあえて歌詞にすることもあります。最後に問いかけを入れることで「私はどうかな」と考えてもらいやすくすることもポイントです。
あとは自分が悩んでいることを叫ぶのもいいんですよ。
佐藤:叫び…ですか?
すうれろ:はい。私は昔から声で「ぶりっこ」って言われることが多くて、そこが嫌だったので『ぶりっこって言うな』って曲を作りました(笑)。
そうすることで「わかる!」って思ってもらえることも多くて。
リアルに体験して感じた“病み”の部分を表に出すことで、自分自身も浄化されるような気がしています。
佐藤:すうれろさんのリアルがつまった歌詞だからこそ、共感されるコンテンツになるんですね。
TikTokで見てもらうためにこだわった4つの要素
TikTokでより多くの人に見てもらうために、コンテンツを作るときのポイントはありますか?
ジョセフ:主に4つの要素に気をつけています。
- 中毒性を生むテンポの良い曲
- 記憶に残るあまくてかわいい声
- ポップな楽曲に合う“かわいい”フィルター
- 流行りも取り入れた共感できる歌詞
僕らは楽曲制作もするので少し特殊かもしれませんが、この4つは意識していますね。
佐藤:「CHICKwarp」の楽曲は“病み”がテーマの歌詞でも、曲調がポップなので楽しく聞けるのもいいですよね。
ジョセフ:そうですね。歌詞だけ見ると暗くなってしまうので、テンポ良くして記憶に残りやすく、かつ中毒性を出すように意識しています。彼女のかわいい声を活かした曲作りもポイントです。
あとはフィルターでも意識してポップさを強調しています。
佐藤:「病みかわ」のバランスを意識されているんですね。TikTokといえば振り付けのイメージがあるのですが、動きに関してはどうですか?
すうれろ:動きは歌詞で誘導しているものが多いので、少し違う視点から新しいものを取り入れたいなと思っています。他の方が投稿しているもので流行りをチェックして研究しています。
ジョセフ:僕は30代なので20代の若者言葉がわからないときもあって、TikTokの流行りなどは彼女にヒントをもらっています。例えば、最近は歌詞に”キューティー”といれたら、それは古いよと言われたり(笑)。
ファンとのやりとりが曲作りのきっかけにも
佐藤:ファンの方からコメントをもらうことも多いと思うのですが、コミュニケーションのコツはありますか?
すうれろ:いただいたコメントには、なるべく返すようにしています。悩みを相談してくれる方もいて、やりとりをすることによって新しい曲作りのきっかけになることもあります。
例えば、オリジナル動画の中に『同担拒否のうた』があるんですけど、これはアイドルやアニメの好きなキャラクターに対して、喧嘩がしたいわけではないけれど独占欲が生まれてしまうファンの複雑な気持ちを聞いて作成しました。
投稿したら「すごくわかります」とコメントをたくさんいただけて嬉しかったですね。
ジョセフ:僕たちの曲を使ってくれることももちろん嬉しいんですけど、それ以上に曲に共感してもらえることのほうがモチベーションも高まりますね。なのでこういうやりとりも大切にしたいと思っています。
佐藤:真似よりも共感性を大切にしているんですね。
すうれろ:はい。なので、コメントやハートの数を見ています。そこが増えるとすごく嬉しいです。
佐藤:フォロワーには色々なユーザーがいると思うんですが、嫌なコメントなどが来ることもあるんですか?
すうれろ:最初の頃は、「よくわからない」と言われたり、批判されてしまうこともありました。でも、何を言われても軸をぶらさずに続けることで「“病みかわいい”音楽ユニット」だとわかってもらえると思ったので、とにかく発信し続けました。
ジョセフ:ご意見をいただけるのはとてもありがたいですし、真面目に対応したいなとは思いますが、すうれろのハートは特に傷つきやすいのであまりにも厳しすぎるコメントは僕が対応するようにしています。
佐藤:役割分担をされているんですね。
ジョセフ:ユニットを組んでやっていると役割分担もしやすいですし、仮説検証をスピーディにできるのも良いですね。
ノウハウ動画から高クオリティなものまで。独自の文化を生み出すTikTok
佐藤:TikTokで作った曲を、他のSNSにあげることはあるんでしょうか?
すうれろ:特に反響の良かった曲はフルバージョンにして、YouTubeに公開しています。元々それぞれの個人チャンネル&カップルチャンネルはあるんですが、音楽ユニット用のCHICKwarp (音楽ユニット用のチャンネル)を作ってアップしています。TikTokでも人気のあった『あなたと私の絶対ルール』はフルを作成したら30万再生してもらうことができました。
佐藤:フルにすることで何か工夫したことはありましたか?
ジョセフ:15秒のものを2分以上にするので、歌詞を増やしたり合間にラップに入れています。YouTubeは収益化ができるので、今後はもう少し注力したいなとは思っています。
佐藤:TikTokとYouTubeは相性が良いんでしょうか?
すうれろ:同じ動画メディアだからか、どちらもやっている人が最近は多い気がします。「続きはYouTubeで」みたいな使い方をしている人もよく見かけますね。
佐藤:これからTikTokはどんなものが流行っていくと思いますか?
ジョセフ:ノウハウ系の動画が増えると思います。中国だとリップシンクよりも、料理やメイクなどを教える動画が増えていますし、「#TikTok教室」のハッシュタグも生まれているので。このカテゴリは、今後どんどん増えていくんじゃないかなと思っています。
すうれろ:私は、もっと高いクオリティのオリジナルコンテンツが出てくると思います。エフェクトやモーションなど、動画加工の技術が上がっているので、それが加速するんじゃないかな。
今はスマホでパッと撮ってそのまま編集した動画が多い印象ですけど、PCで編集する作り込んだ動画が増えると思います。
佐藤:そういったなかで、お二人はこれからどういうことをやっていこうと考えていますか?
ジョセフ:今やっているかわいい系コンテンツに加えて外国語を使ったコンテンツも作りたいなと思っています。TikTokは韓国でもすごく人気ですし、元々やっていた英語を活用して海外向けの動画を作りたいですね。
すうれろ:私たちはまだまだ始めたばかりのユニットなので、とにかくたくさんの方に知っていただくことが大切だと考えています。今はファン層を広げている段階。今は”病みかわいい”がテーマですけど、縛られすぎずに試行錯誤しながら活動の場所を広げていけたらと思います。
ありがとうございます。
短い動画の中で伝えたい情報を詰め込むTikTok。若年層だけに留まらず、企業アカウントの参入も少しずつ増加。幅広いユーザーに広がっていく中で、TikTokでの文化も変化していくのではないでしょうか。
真似する文化が浸透している中で、唯一無二のコンテンツで共感を生む「CHICKwarp」。
人気を生み出す秘訣はコンセプトを決め、流行りを取り入れつつ自分たちの世界観をしっかりと作り込むこと。そして、一人ひとりのファンと向き合い、コンテンツ作りに生かしていく真摯な姿勢にあるのかもしれません。
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