こんにちは、元編集長のえとみほです。
「あれ?あんたkakeru辞めたんじゃないの?」って思ったそこのお方。安心してください、ちゃんと辞めてますよ。今回は個人的にどーしても会ってお話が聞きたい方がいたので、外部ライターという立場で記事を書かせてもらいました。
その「どうしても会いたいお方」というのは、この方。熊谷真士(Manato Kumagai)さん。「誰?」って思われた方も、このブログエントリーなら見たことがあるのではないでしょうか。
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ヤバいです。このテンション、この破壊力。未読の方はぜひご一読を。
ちなみにこちらのエントリー、はてなブックマークのブクマ数が2016年2月8日時点で1780件もついています。いま最もHOTなブロガーと言っても言い過ぎではないでしょう。
今回は、なんと偶然こちらの作者の熊谷さんにお会いする機会に恵まれまして、執筆現場にお邪魔してきました。
待ち合わせ場所にいたのは…普通の人ではなかった
えとみほ:あのー、もしや熊谷さん…ですか?
熊谷さん:geえjふぃfeじぇfじeeゃいjふぇ,おゔぃじゃ!!!!じぇふぃわjふぃおあいおがおえじ!!!!moon!!
えとみほ:…あのぉ〜、うちあんまり面白系の記事得意じゃないんで、このあとの編集が…(笑)。
熊谷さん:すみません、どうにか出会い頭に面白いことをブチかましたいという気持ちがあまりにも強く出すぎてしまい…。自分の未来が見えず途方に暮れています。こんにちは。
えとみほ:お忙しいところありがとうございます。意外にお若い方でびっくりしました。
熊谷さん:え、そうですか?会う人によく「オジさんだと思ってました」って言われるんですけど、なぜでしょうか。
えとみほ:うーん、なんででしょうね。ブログの見た目…?
熊谷さん:なるほど、デザインがダサいとはよく言われます。ちなみに年齢は、いま26歳で、2016年2月10日で27歳になります。
「テキストサイト」も「侍魂」も知らない平成生まれ
えとみほ:ということは…平成生まれですか?!じゃあ「テキストサイト」とか「侍魂」とか言われても意味わからないですよね?
熊谷さん:ええ、実はぜんぜん。どういう意味なんでしょうか。コメント欄にいっぱい書いてあったんですけど。
えとみほ:えぇと、ざっくり言うとまだブログとかがなかった頃、HTMLで作ったホームページに日記とか読み物とか書く文化がありまして。そういう読み物全般を「テキストサイト」って言ってたんですよ。で、そのテキストサイトの中でダントツで人気があったのが「侍魂」っていうサイトで。当時、ネットだけでなく雑誌でも大々的にフィーチャーされてたんですけど。聞いたことありますか?「先行者」とか。
熊谷さん:まったく聞いたことないです。実は、インターネット自体ほとんど使ってなくて…。
えとみほ:そうなんですね。はてブ(はてなブックマーク)界隈で「懐かしい」的なコメントがあったのは、熊谷さんの文章というかフォーマットが、その「侍魂」を彷彿させたからなんですよ、実は。
熊谷さん:なるほど。まさか自分の文章を懐かしんでもらえるとは思ってもなかったんで不思議な感じですね。でも、内心かなり嬉しいです。
えとみほ:いやー、いま書いたばかりのものを「懐かしい」とか言われたら困惑しますよね(笑)。
ブログは初めて。最初はバズったことにも気付かなかった
えとみほ:ところで、前々からブログとか日記とか書いていらっしゃったんですか?
熊谷さん:いえ、ブログはまったくの初めてです。mixiとかFacebookで、身内向けにくだらない文章を書いて一人でニヤニヤしたりはしてましたけど、インターネットを普段まったくやらないので、他人のブログを読んだりすることもなく…
えとみほ:それがまたなぜ書いてみようと。
熊谷さん:勝木さんっていう大学の先輩が1年くらい前からずっと「ブログ書けブログ書けブログ書け」って勧めてくれてて。ちょっと面白そうだったので、今年になって「じゃあちょっとやってみよう」という感じで始めました。
えとみほ:軽い気持ちで。
熊谷さん:はい、典型的な軽い気持ちです。
えとみほ:それがすぐに、どかんとバズって。
熊谷さん:そうですね、ある朝突然Facebookやらなにやらにメッセージが100件以上きてまして。で、妹から「”畏敬の念”がツイッタートレンドに入ってるよ!」って連絡きて、あれ?なんかめっちゃ読まれてる?と気づきました。
えとみほ:ツイッターアカウントは持ってらっしゃらなかったんですよね?
熊谷さん:はい、そのときはなかったです。ブログを読んでもらえるようになってから、調子に乗っていそいそと始めました。
普段は二つの会社に所属する自由人
えとみほ:ちなみに、プライベートなことなので答えづらかったら答えなくていいんですけど、普段はなにをされている方なんでしょうか?
熊谷さん:一言で言い表しづらいんですが、いまは二つの会社に所属しています。一つはヘッジファンドで、大学の時に一番仲の良かった先輩が立ち上げたファンドです。僕は、親族、友人、前職の三井物産の職場の人たちからお金を預かって運用させてもらっています。
もう一つの会社は、前職を辞めるタイミングで仲の良い友達と立ち上げた会社なんですけど、そっちでは何をやるかはとくに決めてないんです。
えとみほ:というと?
熊谷さん:とりあえず「仲良い友達と何かやる」ってことだけが先に決まっていて、事業内容が決まってなかったんです。かなり暗黒カオスワールドな感じなんですけど、いまは飲食店を経営したり、リノベーション事業のフランチャイズビジネスをやったり、貿易やったりしています。
えとみほ:へぇ〜、自由な感じでいいですね。楽しそう。あ、この話は書かないんで安心してくださいね。
熊谷さん:いや、書いても大丈夫ですよ。とくに隠してることは何もないんで。
SNSとリアルの人格はなるべく一致させたい
えとみほ:え、平気なんですか?固有名詞とかも?
熊谷さん:はい。僕、日頃からネット上の人格とリアルの人格を使い分けるみたいなことはしないように心がけてるんです。最近は、友達の前、親の前、上司の前、SNS上みたいな感じで、キャラを使い分けたりするのが普通ですけど、なんかそういうのは良くないんじゃないかって思って。
えとみほ:そうなんですか?でも、いまの10代、20代はツイッターのアカウントだけでも3つも4つも持ってて、使い分けてますよね?友達とふざけてるところを親に見られたり、上司に見られたりしたくないって。「おばさんはインスタに来るな」みたいな。
熊谷さん:そうですね、僕もやっぱ前職の上司とかは怖いんですけど、そこは勇気を持って自分をさらけ出すように心掛けています。上司の前でも親の前でも友達の前でも、いつも同じ人間でいるのが、礼儀なんじゃないかと思うので。
本当の自分はこんなふざけたウンコ野郎なのに、それを出さないで真面目に振る舞うのは、一見礼儀正しいように見えて実は嘘をついてるのと同じなんじゃないか?不誠実じゃないんじゃないか?って思うんです。だから僕なりの礼儀として、ネット上でも仕事上でも家族の前でも、同じようにエグい下ネタを話します。
えとみほ:…いろんな考え方が、ありますね。
熊谷さん:だからSNSも基本フルオープンなんです。それでバッチリ失敗してるんですが。
えとみほ:失敗?
熊谷さん:大学4年生のときの話なんですけど、海外に卒業旅行に行って、帰りの飛行機に乗り遅れて内定式をブッチしちゃったんです。で、そのとき暇ですることがないからカンボジアでワニ釣りをしてたんですけど、その写真をTwitterにアップしたら、内定先の人事の人に見つかってしまって。
えとみほ:あら。いまでいう”バカッター”みたいな。
熊谷さん:しかもmixiのエントリーでは、「丸紅という会社はかまぼこ屋さんか何かで、三井物産というのは引越し屋さんか何かでしょうか?」みたいなことを書いてたのも見つかっちゃって。呼び出されてめっちゃ怒られました。
えとみほ:そら怒られますわ。よく内定取り消されませんでしたね。
熊谷さん:はい、本当に人事の方が優しい人で良かったです。感謝してます。まあ、そのタイミングでTwitterとmixiのアカウントは削除することになったんですが。
えとみほ:まぁ〜、それはしょうがないですよね。良い意味で組織に向かないタイプなのかも(笑)。
文章にこだわりはない。勢いだけで書いている。
えとみほ:ちょっとブログの話に戻るんですけど、私みたいな90年代のテキストサイトを知ってる人間からすると、あの改行のしかたとか、スクロールを意識した空行のあけかたとか、絶妙だなぁと。ああいうフォーマットをとることによって、面白さが倍増してると思うんですよね。スマホでも読みやすいですし。
熊谷さん:そうなんですか。なんか、ありがとうございます。テンションがぶち上がっています。
えとみほ:あんまり文体とか、どうやって書こうとか考えてない感じですか?
熊谷さん:この受け答え、「天性の勘に身を任せて書いてます、ドヤ」みたいな感じでウザくなってしまいそうですが、正直に言うと深く考えず頭に浮かんだことをそのまま書いています。改行のしかたについてよく感想を言われるんですが、改行はしたりしなかったりで、正直それも意識していなくて…。自分の書いている文章が面白いのか、どう思われるのかもあまり考えてないです。壮大な自己満足です。
えとみほ:そうなんですか。でも、そのPVとか狙ってない勢い任せな感じがいいんだと思いますよ。ちなみに、書くのにどのくらい時間かけてるんでしょうか?
熊谷さん:書くのは結構早いと思います。スタバ女子の記事も1時間はかかってないかと。読み返したりもしないので、誤字脱字はめちゃくちゃ多いと思いますが。
スタバでダベっている女子は本当に存在したのか?
えとみほ:えっ、あれで1時間かかってないんですか?めちゃくちゃ速いですね!ちなみに、ブログに書いてあることって、実体験なんでしょうか?それとも創作?
熊谷さん:あれは完全なる事実です。
えとみほ:えっ、じゃあ代々木上原のスタバでダベってた女子も実在する、と。
熊谷さん:はい、もちろん実在します。実は、あの後また会えるんじゃないかと思って何回か行ってみたんですけど、会えてないんですよ。もしかしたら僕のブログを読んで、気味が悪くなってスタバに行くのをやめたのかもしれませんね…。
素人ネット文学よ、再び(まとめ)
「ブロガー」や「アフィリエイター」という言葉が聞かれるようになって以来、Web界隈ではPVやSEOを意識した記事がものすごく増えて、かつてのWeb日記やテキストサイトで見られたような、エンタメ色の濃い長文を読む機会が激減したような気がしています。
それゆえに、熊谷さんのブログは昔を知っている者からすれば懐かしく、知らない者からすれば新鮮な驚きを与えてくれたのではないでしょうか。「一周回って新しい」というやつです。ブログのプラットフォームとしてテキストサイトの流れをくむ「はてな」を選んだことも、本人が意図していなかったとはいえ、思いのほか早く世に存在が知れ渡った一因ではないかと感じました。
熊谷さん自身の印象は、一言でいうと「ゆとり教育が生んだ天才」。仕事やプライベートの話を根掘り葉掘り聞いてみると、文章は彼の才能のごくごく一部なんだなということがわかります。
こんなふうに突然ネット上で注目を浴びると、「もっと面白いものを書かなければ」と肩に力が入りすぎて自滅してしまったり、自意識過剰になって叩かれたり、逆に怖くなってフェードアウトしてしまったりするケースをいままでたくさん見てきましたが、熊谷さんに限ってはそんな心配はなさそうだと思いました。
ちなみに、最近始めたというので、こちらもおすすめ。要チェックですよ。