絵と共に歩む人生。作家としての「自我」をいつか見つけられたら──町田メロメ|INSIDEHEAD vol.3

2020 1.29

インターネットが当たり前になった今、SNSを通じさまざまなクリエイターが生み出す作品に出会う機会が増えました。

誰でも表現できる時代、活躍するクリエイターには、他の人と異なる何があるのか──。クリエイターが作品を生み出すまでの過程やアイデアの源泉を覗くために、kakeruではその“頭のなか”を掘り下げていく連載「INSIDE HEAD(インサイド ヘッド)」を展開しています。初回の白水桃花さん、第2回目のルシュカさんに続き、第3回目では町田メロメさんにお話を伺いました。

シティポップでありながら、どこか異次元に迷い込んだような不思議な世界観のイラストや漫画を描く町田メロメさん。聞けば、イラストレーターのお父さんの影響を受け、幼い頃から、漫画や映画、音楽、ドラマ、アニメなど、さまざまなコンテンツにどっぷり浸かる生活を送られていたのだとか……。なんとプライベートでは歌も歌っていらっしゃるそう。クリエイターとしての才能あふれるメロメさんに、その制作の裏側にあるものについてお話を聞きました。

<プロフィール>町田メロメ。イラストレーター、漫画家。イラストレーターの父親の影響を受け、幼い頃から絵を描き始める。シティポップなタッチが人気を博し、ウェブ媒体やアーティストのジャケット挿入画など、幅広い媒体で活躍中。2020年2月末からebookjapanで漫画連載が決まっている。

Twitter:@qumolilon

Instagram:instagram.com/qumolilon/

イラストレーターの父親の影響で、サブカルチャーに夢中になった少年時代

── 今日はよろしくお願いします。

町田メロメ(以下メロメ):よろしくお願いします。

── メロメさんのイラストや漫画はキャラクターがどれも魅力的ですね。この天使の漫画もすごくよかったです。

メロメ:ありがとうございます。

── メロメさんは、いつから絵を描くようになったんですか?

メロメ:くわしくは覚えていませんが、幼稚園かその前からですね。父がイラストレーターで、ずっと家でガリガリ絵を描いていたので、ぼくも自然と描くようになりました。

── 幼い頃から絵がそばにある環境で育ったんですね。どんな子どもだったんですか?

メロメ:父からサブカルチャーを教わっていたので、クラスで1番強いオタクだったと思います。ジブリ、大友克洋、ガンダム、エヴァンゲリオン……。「この作品が生まれたのは、こういう理由からなんだよ」と、みんなに教えていました(笑)。あまり勉強はしていませんでしたね。

── わー、すごい子どもですね……(笑)。絵を描かなかった時期はあるんですか?

メロメ:それが、ほとんどないんです。中学校で音楽をはじめたときは少しだけ離れましたが、それも一瞬だったので。ずっと何かしら描いて生きていますね。

「このままじゃ食っていけないよ」。友達からのアドバイスで作風が変化

── 小さい頃から、今のようなテイストの絵を描いていたんですか?

メロメ:いや、父はよく動物のイラストを描いていたので、それをそのまま模写したりしていました。あとは、チョコチップクッキーの絵を描いて、それを切り取って「おいしそ~」って冷蔵庫に貼りまくったり(笑)。小さい頃は、人物じゃないものを好んで描いていましたね。

── そうなんですね。人物イラストを描かれるイメージが強かったので、意外です。

メロメ:今のテイストになったのは、ここ数年のことなんです。小学生の頃に人物を描くようになったのですが、それも少年ジャンプに掲載されている漫画のような、流行りのアニメっぽい絵柄でした。

── それもまた意外です。どうして作風に変化があったんでしょうか?

メロメ:高校を卒業した18歳ごろ、Twitterやpixiv(ピクシブ)などネットを見るようになり、世の中には同じような絵を描いている人が山ほどいることに気づいたんです。ここで勝負するのは難しいし、画力的にもかなわないなと思った。

そこで、「自分が本当に描きたい、好きな絵柄はなんだろう?」と考えたとき、佐々木マキさんのような絵柄であることに気づきました。動物と人間が混じったような、ちょっと不思議な作風です。

── 今のメロメさんのタッチにも通ずる部分があるような気がします。

メロメ:そうですね。そういう絵を描くようになった頃にTwitterを始めました。自分が描きたい作風の絵で更新していくと、2000人くらいまでフォロワーが増えていって。

ですがそんなある日、Twitterで知り合った編集者の友人に、「絵の仕事がほしいなら、この絵のままだと難しいよ」と言われたんです。人間を描けるようにならないと仕事は来づらいと。そして、おそるおそる人間の絵を描いてみたら、本当にすぐに仕事が来たんですよ。

── その編集者の方、すごい……!

メロメ:その絵がこれ。ぼくが仕事として描いた、初めてのイラストです。

正社員をしながら、イラストの仕事も受けるように

── メロメさんは、もともと絵で食べていきたいと思っていたんですか?

メロメ:他に何もできなかったから、一生の仕事にするかどうかはさておき、やってみたいなとは思っていました。でも「してみて嫌だったらやめようかな」くらいの温度感でしたね。

── 今はフリーランスとして活動されていると思いますが、今まで、どのようなキャリアを歩まれてきたんでしょうか。

メロメ:高校は美術系の学校のデザイン科に通っていました。大学も美大のデザイン科に行きたくて、予備校にまで通っていたんですけど、家庭の事情で行けなくなってしまったんです。それで、美大の通信教育課程に入りました。

でも、そこでは思っていた勉強ができなくて……。両親には申し訳なかったけど、1年ぐらいでやめました。

── それからはどうされていたんですか?

メロメ:最初はスーパーのバイトとかをしながら、好きな絵を描いてTwitterにアップする、みたいに呑気に過ごしていましたね。

でもその後、ひょんなことからTシャツプリントの会社に出会ったんです。そのお店ではIllustratorとPhotoshopを習得できそうで、ぼくもちょうど勉強したいなと思っていたところだったので、美大でお金を払いながら学ぶより、働いてお金をもらいながら覚えた方がいいと思って、そこでバイトを始めました。

── 今後のために、そこで働くことを選んだんですね。

メロメ:はい。そこでバイトをやりつつ、あいかわらず絵を描いたり、Twitter経由で仕事をちょっともらったりしながら毎日を過ごしていました。すると2年くらいたった頃、Tシャツプリントの会社から「正社員にならないか」という話をもらったんです。

ぼくでも会社員になれるのかどうかを試したいなと思って、その話を受けることにしました。もし会社員としても働けるのであれば、たとえ絵で食べていけなくなっても就職すればいいやと思えますから。

── 社会に適合できるかどうかのチェックテスト、みたいな感じですね。

メロメ:まったくその通りです。お店のためにという気持ちももちろんあったけど、1番は自分が社会に適合できるのかを試してみたいという気持ちでしたね。

── 実際会社員になってみて、どうでしたか?

メロメ:それが、結構ちゃんとできたんです。ぼくは社会人としても生きていけるんだという一種の自信が生まれました(笑)。

でも、その社員として過ごす2年の間に、絵の仕事が忙しくなったり、やりたい漫画の仕事をいただいたり、あとちょっと会社員生活にも疲れたり……。「会社員としても生きていけるけど、向いてはいない」と思って、貯金もある程度できたことだし、やめる決断をしました。

── フリーランスのイラストレーター、漫画家としてやっていこうと決心したんですね。

メロメ:でも、「フリーランスになるぞ!」という決心みたいな気持ちでは全然なかったんです。会社員をやりながら絵の仕事もしていた超忙しい日々を忘れたいという思いの方が強くて。誰かに説明する時のわかりやすい肩書きとして「フリーランス」と言うことはありますが、自分の認識としては、もう少しゆるやかに働いているイメージです。

両立が難しくてキャパオーバーに……。「もう趣味じゃなくて仕事なんだな」

── お話を聞いていて、メロメさんは、自然に無理せずマイペースに絵と共に生きられているような印象を受けたのですが、今までで挫折はあったんですか?

メロメ:去年の秋ごろ、フルタイムで会社員として働きながら、イラストの仕事も大量にこなしていたときに、キャパオーバーになってしまったことがありました。友達の編集者からはじめて大きな仕事をもらえたことが嬉しくて、絶対できない仕事の量なのに、つい「やります」と受けちゃって。本当に寝られなくって、会社から帰ってきて朝まで描いてシャワーを浴びてまた会社に行く、みたいな生活が続いていました。

── それは大変……。

メロメ:担当の人からの連絡がたくさんきているのに、まったく返信できなくなってしまって。完全にパニックになって、何をいつまでに返事すればいいのかとか、全部わからなくなりました。

それでとうとう、その友達の編集者から電話で本気で怒られたんです。「そういうのって友達なくしますから」って。それでめちゃくちゃ心にきて……。あれは完全な挫折でしたね。イラストをやめようと思うほど本気で落ち込みました。

メロメ:でもその経験のおかげで意識が切り替わって、「もう趣味じゃなくて仕事なんだな」と思うようになりました。仕事のやり方を見直さなければいけない。周囲に迷惑をかけないためにも、効率化して、できないものはできないと言わなきゃいけないと、そう思うようになって。怒ってくれた友達には本当に感謝しています。

── 「仕事のやり方を見直す」とは、具体的にどのように見直したんですか?

メロメ:アナログからデジタルに絵を描くツールを変えました。それまではずっと紙に気が済むまで描いていたのですが、それだと時間が圧倒的に足りないことに気がついて。

── アナログとデジタルは、どのように使い分けられているんですか?

メロメ:今のところ、漫画を描くならデジタルで、原画はちゃんと手で思いを込めたものを売りたいのでアナログで、といった感じです。デジタルを始めて半年とちょっとなので、まだまだ模索中。仕事によってうまく使い分けていきたいなと思っています。

「仕事用」と「好き勝手にできる場所」。SNSは使い分けている

── 仕事をされていくなかで、SNSはどのように使い分けられているんですか?

メロメ:Twitterは最近告知ばっかりですね。始めたばかりの頃はくだらないこともつぶやいていましたが、最近はほとんどコンテンツ、ロボットみたいな運用になってきてしまいましたね…!

── インスタも同じような感じですか?

メロメ:そうですね。作品のアーカイブとして更新しています。

── noteもたまに更新されていますよね。noteで更新されている文章は、メロメさんの違った一面が垣間みえて、とても好きです。

町田メロメ|note

https://note.com/qumolilon

メロメ:ありがとうございます。絵を描いてると、文章でしか表現できない事とかにぶつかったりするのでnoteはその放出先なのかもしれません。書いても本アカにはあまり載せていなくて。Twitterのサブアカもですが、仕事とか対外的な事を意識せず自由に遊べる場所ですね。

漫画を描いていきたいし、音楽もやっていきたい

── これからはどんなことをやっていきたいですか?

メロメ:今はイラストレーターとして見られることが多いんですが、小さい頃からずっと漫画家になるのが夢なんです。だから来年からは、もっと漫画を描いていきたいと思っています。実は来年、とある媒体で漫画の連載が決まっていて。それに注力するつもりです。

── わあ、それはとっても楽しみです。どんなマンガにしていくか、構想はあるんですか?

メロメ:それはまだ悩み中です。ぼくは、作家としての「自我」がまだあまりないんですよね。作品を通して言いたいことが昔からなくて。

でも思い返してみれば、自分が好きな作品も、明確なメッセージ性があるよりも、そういうものを押し付けない漫画が好きなんです。たとえば、木皿泉さんの『すいか』とか。でも、あれは日常系に見えて重要なメッセージが差し込まれているので、そういった、日常の中に深いメッセージが込められているような漫画が描ければいいな、と思っています。

── なるほど。漫画のほかには、やってみたいことはありますか?

メロメ:あとは音楽ですね。中学から音楽をやっていて、それはこれからも趣味で続けていきたいです。最近、J-POPのプロデュースを手がけるロースケイさんの新曲『ハローアゲイン』を歌わせてもらったんですよ。

── イラストだけじゃなく、歌も歌われているんですね。

(『ハローアゲイン』を聴く)

── めちゃめちゃいい声……。

メロメ:ありがとうございます(笑)。これは、ジャケットも描かせていただきました。

ぼくはやっぱり、イラストでも漫画でも音楽でも、何か「残るもの」をつくることが好きなのかもしれません。形がないものは不安に感じてしまう。自分に対して「クリエイター」という自覚を持ったことはないですが、好きで作ったものが広く誰かの心に届いていくことはうれしいので、これからも、いろんなものを作っていきながら生きていきたいです。

好きなことと共に人生を歩む人の「ブレない強さ」

気負うわけでもなく、何か強烈な原体験があったわけでもなく、メロメさんは自然と「絵」と共に生きている方なんだな、とお話を聞いていて思いました。私たちが自然と文字をスラスラと書けるように、何も意識せずとも話すことができるように、メロメさんは、自然と絵を描くようになった。

凛としていて静かでありながらも、とても明るくポジティブなメロメさん。それは、好きなことと共に人生を歩んでいる人の、強くブレない「土台」がメロメさんの背景にはあるからなのかもしれないな──。そんなことを感じました。

これから漫画家としての「自我」を見つけていきたい、と言うメロメさん。メロメさんが伝えたいものを見つけたときの表現が、今から楽しみでなりません。

メロメさんが使っている道具の数々。ペンは、太さの異なるものを4本使い分けています。ハンドクリームは塗るよりも、匂いを嗅いでリフレッシュ用に。‘‘いい女‘‘の匂いがするそうです(笑)。


Interviewer&Writer あかしゆか
Editor とみこ
Photo きょーいち
Illustration 町田メロメ
Support 今城加奈子




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