踏み出せば、応援してもらえる時代だから。今の気持ちをアクセサリーに昇華するyurika_akutsuの世界観づくり

2019 6.12

こんにちは。kakeru編集部の橋本です。

令和という新元号になり、これまで以上に個々人の才能や夢が実際の仕事に紐づく時代の到来を感じます。

そんな今においては、個人で事業の立ち上げをする人も珍しくなくなってきました。

アクセサリーブランドもそのひとつ。

しかし、ファンを作ってきちんと売上を立てていかないことには、いくら熱意があってもブランドとして継続していくことは困難です。

今回お話を伺ったのは、『_』のデザイナー・阿久津ゆりかさん。Instagramを活用した世界観づくりとECサイトを活かし、ファンを魅了する人気クリエイターです。

何より私自身、前から『yurika_akutsu』の大ファンでして…!
新社会人になったとき、親友に「きっと好きだから」とピアスをプレゼントしてもらってからというもの、阿久津さんにずっと憧れていました。

「人として、お客様一人ひとりと向き合っていたい」という意思や嘘のない温かさに触れ、最後はちょっと泣きそうになってしまいました。

「やりたいことはあるけど勇気が出ない…」そんな人にも、ぜひ最後まで読んでいただきたいです!

yurika_akutsu
美容師をする傍ら、専門学校の社会人コースでファッションを学び、OEM専門の企業に転職。その後本格的にアクセサリーブランド『yurika_akutsu』をスタート。現在はInstagramでブランドの世界観を発信し、ECサイトで商品販売を実施。その他、大阪・京都にあるセレクトショップ「印」でも実際に手に取ることができる。今後、台湾でのお取り扱いもスタート予定。また、近年は単独popupにも力を入れている。

今欲しいものを、今の感性で作っていく

橋本:はじめまして!今日は大好きな『yurika_akutsu』の取材ができるなんて、と感激しています…!

阿久津:嬉しいです!!どうぞよろしくお願いします!

橋本:こちらこそよろしくお願いします!実は今日、お気に入りのピアスをつけてきたんです。

阿久津:ほんとだ!ありがとうございます。このピアス、バランス感にめちゃめちゃこだわって作ったんです。

橋本:『yurika_akutsu』のアクセサリーって、どれも色味やバランス感、素材の質感などが本当に「今の気分にぴったり!」と思うものばかりで、いつも新作を楽しみにしています。

阿久津:そうなんです。「今欲しい」と思ったものをなるべく早く形にしてお客さんに届けたくって。だから『yurika_akutsu』では、来シーズンの展示会をしたことがないんです。「そんな先の気持ちなんて分からないよ」って私が思っちゃうから(笑)。

橋本:自分に正直なそのスタンスも素敵で、ますますファンになってしまいそうです。そんな阿久津さんは、どんなものからアクセサリーのインピレーションを得ているのでしょうか?

阿久津:自然の色や光、質感からが多いですね。私、地元が群馬県なんですけど、帰省したときに見る田舎の景色とか、草木や空の色、辺り一面に降り積もった雪とか…。「きれいだな」って、私だけじゃなく誰もが思うようなものをアクセサリーに落とし込んでいるんです。

橋本:そっか。だから、クリア素材やナチュラルな印象のパーツも多いんですね。

阿久津:そうそう。以前は、アンティークのパーツを使ったものが多かったけれど、オリジナルパーツを用意できるようになってから表現の幅も広がりました。

美容師時代に感じた「可愛いを表現したい」という気持ち

橋本:阿久津さんがアクセサリーブランドを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

阿久津:美容師を目指して専門学校に通っていた頃から、ヘアスタイル以外のトータルコーディネートが審査対象になるコンテストに出ていたんです。そのときに自分でアクセサリーを作って、モデルさんにつけてもらっていたのがきっかけかな。

そんなアクセサリーを友達にプレゼントしていたら、その友人が働くお店のバイヤーさんが「それ、誰が作っているの?」と見つけてくれて。そこから店舗に置いてもらえることになったんです。その前からInstagramにアクセサリーの写真を載せたりもしていたけれど、店舗に置いてもらうようになってから、フォロワーさんも少しずつ増えてきました。

橋本:お友達にプレゼントしていた優しさが、チャンスにつながるなんて素敵です。

阿久津:若手の美容師はお給料が少ない中で、毎日おしゃれをしなくちゃいけないから大変なんですよね。でも、アクセサリーなら手頃な価格でテイストを変えたおしゃれもできるかな?と。もともと「女の子の可愛いを応援したい」と思って生きてきたので、自分なりのやり方がアクセサリーなのかもなって気づいたんです。

橋本:そうだったんですね。現在はECサイトもありますが、これはどのタイミングで作ったのでしょうか?

阿久津:店舗に置いてもらえるようになる少し前です。無料で個人がECサイトを立ち上げられるSTORES.jpで自分で作って、今でも使っています。
今の時代はこんな風に個人の夢を応援してくれるようなサービスがあるから、ありがたいですよね。

橋本:ECサイトでアクセサリーが売れたときって、どんな気持ちだったんでしょうか?

阿久津:すごく不思議な感覚でした。確かはじめの頃に買ってくれたのは札幌在住の方だったんだけど、「遠く離れた場所に住んでいる人が、私のブランドを知って、ほしいと思ってくれたんだ」ということに感動して。お客様とはオンラインでメッセージのやり取りをしたりもするのですが「お気に入りです!」と言ってもらえたのがすごく嬉しかったのを覚えています。

技術よりも大事な、「気持ち」と「つながり」

橋本:ブランドを始めた当初は、どんなスキルをどれくらいお持ちでしたか?

阿久津:アクセサリーを作るのに必要なスキルは、全部独学でした。
私、小さい頃から運動が苦手な代わりに手先は器用だったんですよね。

お人形に合わせる服や鞄を手作りしたり。もともと「これってどうやって作るんだろう?」と興味が湧くタイプで、気になったら調べて作ってみる子供でした。

橋本:小さい頃から才能があったんですね…!

阿久津:というか、気持ちが強かったのかも。こんなこと言ったらアレだけど、ブランド立ち上げに必要なのは「絶対にやりたい!!」っていうアツい想いが一番大事です!!
あとは、それをチャンスに変えてくれる人とのつながりかな。

橋本:阿久津さんは美容師になってからも、専門学校に通われていたんですよね?

阿久津:美容師経験後、バンタンの社会人コースに一年間通って、ファッションに関する総合的な知識を学んでいました。その後にアパレル系のOEMの会社に転職して、2年間デザイナーさんとのものづくりも経験しました。

橋本:そのときの経験で、今に活きていることはありますか?

阿久津:うーん、あえて言うなら「私はこういう慣習みたいなものが向いていないな」って分かったことかも(笑)。

橋本:「こういう慣習」とは、具体的にどんなことでしょうか…?

阿久津:ファッション業界の「こうするんだよ」っていう王道ってあるじゃないですか。例えばさっき話した展示会のこととか。でも、「一年後に自分が身に着けたいもののことなんて私は分からないな」と思っていて。

でも私より先に個人でブランドを立ち上げている人もいたので、どういう風に始めたか相談してました。

橋本:人とのつながりが大事というのは、そういうことだったんですね。

『yurika_akutsu』が「可愛い」にこだわる理由

橋本:『yurika_akutsu』の世界観づくりについてお聞きしたいのですが、アートディレクションはすべてご自身でやっているんでしょうか?

阿久津:そうですね。写真が可愛いこともすごく大事だと思っているから、アートディレクションの中でも特に、ビジュアルにはこだわっていて、自分でカメラを構えて撮ることにしています。

橋本:本当に、『yurika_akutsu』の写真はいつもめちゃくちゃ可愛いです…!

阿久津:ありがとうございます。『yurika_akutsu』の世界観は、言葉じゃなくて目で世界観を感じてもらいたいんです。

それに、モデルさんに身に着けてもらって撮影するときも、「どんな風にしたら、アクセサリーをつけたモデルさんが一番可愛くなるか」を本気で考えていて。そうなると、アートディレクションは、自分でやるのが一番納得できるんですよね。

橋本:身に着けたときに可愛く見えるって、アクセサリーにとっては一番重要かもしれないです。

阿久津:そうなんですよ!だから、例えばいま橋本さんがつけてくれているピアスも、垂れる感じのバランスとか、揺れ方とか、何度もなんどもやり直して決めていったんです。そのプロセスは、美容師がカットのバランスを考えるときと似ているかも。

橋本:なんだか納得しました。美容師さんって女の子が可愛くなるようにいつも全力で相談に乗ってくれるけど、阿久津さんのアクセサリーもそれに近いものがあるんですね。

『yurika_akutsu』にとってのオンラインのセオリー

橋本:『yurika_akutsu』のInstagramには、アクセサリー以外に風景写真などもあると思うのですが、それも世界観の表現につながるのでしょうか?

阿久津:そうですね。私にとってInstagramは、『yurika_akutsu』の世界観を構成しているパレットを見せているようなもので。
投稿一枚一枚はもちろん、それ以上にトップページで見たときにどんな印象になるかを重視しています。

スマホのアルバムに専用のフォルダを作って、InstagramにUPしたときのバランス感を考えながら投稿している感じ。iPhoneのアルバム内の写真は、指で長押しすると移動できるようになるので、結構便利なんです。

橋本:こうやって改めて拝見すると、隣り合う写真の色が微妙にリンクしていたり、全部が寄りの写真じゃなくて空白が多いものもあったりしますね。見ていてなんだか気持ちいいと感じるのには、そんな配慮があったなんて知りませんでした。

阿久津:アクセサリーの写真のほうがいいねが増えるのは分かっているけれど、私がしたいのはそういうことじゃないんですよね。
アクセサリーの形はECで見てもらえばいいから、Instagramではより世界観を感じてもらうために、「私自身がどんな風景を素敵だと思って、ものづくりをしているのか」を伝えたいんです。

橋本:阿久津さんならではのオンラインのセオリーが他にもありそうだなと思ってきました。

阿久津:そうかな?どうだろう(笑)。

橋本:ECでオーダーを受けるときに、気をつけていることなどはありますか?

阿久津:お客様と交換日記をしている感覚はあるかもしれないですね。

橋本:交換日記…??

阿久津:はい。大手のECサービスみたいに「注文したら翌日に届く」みたいなものじゃなくて、制作の間お時間をもらうこともあるからこそ、血の通ったやりとりをしたいというか。
「彼女にプレゼントしたい」って男の子から連絡をもらって、「前にアレを買ってくれたからきっとこういうの好きだと思いますよ」ってこっそり教えてあげたりとか(笑)。

橋本:すごい…!頼りになるお姉さんみたいです。

阿久津:ありがたいことにオーダーをたくさんいただいているので、頻繁には返せないけど、その分一つひとつのやりとりは丁寧にしたいと思っているんです。

ライフスタイルに合わせてブランドも自由に変化させていきたい

橋本:これからも阿久津さんと 『yurika_akutsu』のファンで居続けるんだろうなって思っているので、今後の展望などがあれば教えていただきたいです!

阿久津:30代になって思うのは、故郷の群馬に拠点を移すのもアリかなって。今後結婚や出産を経験したらそれを機にライフスタイルが変わることで見る景色も違く見える瞬間があると思います。自分の気持ちに嘘をつかずにブランドのデザインも変わっていくかもしれません。

橋本:阿久津さんご自身のライフスタイルが、『yurika_akutsu』のアクセサリー作りに直接つながっている証拠ですね。

阿久津:そうなんです。今のデザインって、例えば子育て中の方にとってはちょっと大ぶりだと思うんですよね。でも、もしも今後私がお母さんになったら、作風が変わって子育て中でも身に着けやすいものになっていくかもしれない。

そんな風に、ライフステージに合わせてブランドも一緒に成長していけたらいいなと思うんです。

橋本:今後作風が変わったりしたら、阿久津さんにそんな心境の変化があったんだなって思えるような気がします。それもまた楽しみ…!

阿久津:『yurika_akutsu』はもともと「私らしい」ものづくりをしたいと思って立ち上げたブランドだから、それは大事にしたいです。

その時その瞬間に「可愛い」って感じるものを形にできることが、私らしいって思うから。

夢を語ると味方が増える。これからブランドを立ち上げたい人へ

橋本:最後に、これからブランドを立ち上げてみたいと思っている人にアドバイスをいただけないでしょうか?

阿久津:そうだなぁ…どんな世界を描きたいかを考えてまとめておくのが大切かもしれません。
私もはじめの頃は、美容師時代にやっていた雑誌の切り抜きなどを見返して、「こんな子に着けてほしいな」とか「こんな色味すてきだな」とかイメージを膨らませていきました。

橋本:つくりたいものを明確にしていくことが大事なんですね。

阿久津:あとはさっきも少し話したけれど、「やりたい」という気持ちですね。
たまに学生さんから相談を受けたりするけど、気持ちがあるなら学校とかはもったいないから行かなくてもいいと思う!これは極論だけどね(笑)。

自分の生き方次第でどうとでもなる時代だから、形にしてから悩めばいいと思うんです。

橋本:阿久津さんがそう言ってくださると説得力がありますね…。

阿久津:あとは、想いを言葉にすることも大事です。私も「アツいな」と思われてもやりたいことを言うようにしていたら、周りが「こういうのあるよ、行ってみる?」とチャンスがありそうな場に誘ってくれたりしたし。
毎日の行動が、自分のやりたいことにつながっていくはずです。

最初から大きく挑戦しなくたっていいから、まずはできる範囲で一歩、小さな挑戦を積み重ねていったらいいと思います。

YouTubeでシルバーアクセサリーの作り方を学んでブランドを立ち上げた友達もいるし、やっぱり気持ちが大事だと思いますよ!

温度のあるアクセサリーブランド。それが『yurika_akutsu』

阿久津さんにお会いして感じたのは「気持ち」が原動力になっている方だなということ。

いま身に着けたいものを作り、心で感じてもらうためのInstagram運用、お客様との血の通ったコミュニケーション。

話してくださる言葉の節々に、温度を感じるようなインタビューでした。

『yurika_akutsu』に根強いファンが多いのは、そんな阿久津さんの温かみのある人間性と世界観が心に響くからなのかもしれません。

「やりたい」という気持ちに蓋をせずに、挑戦していった先に拓けた道。これからブランドを立ち上げたいと思っている方も、まずはその「気持ち」にしっかりと向き合い、「好き」に正直になることが大切なのではないでしょうか。

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