ミレニアル世代・Z世代へのアプローチを事例から読み解く──PR TIMES根本智帆| パブリックファーストvol.6

2019 12.26

みなさんこんにちは。PR TIMES PRプランナーの根本と申します。 

本連載では「パブリックファースト」をテーマに、わたしたちPR TIMESのPRプランナーが、広報PRパーソンやデジタルマーケターに向けてPRやコミュニケーションについてお話しています。

本記事でこの連載も最後となります。普段私たちはさまざまな業界のクライアント様と一緒にPR・コミュニケーション施策を実施しておりますが、その中でも「10代~20代の新規ユーザーに知ってほしい!情報を届けたい!」「でも今若い人たちの関心事って何でしょう…」といったご相談をよくいただきます。

“10代~20代”は、大きく分けて「ミレニアル世代」と「Z世代」と呼ばれる層が該当し、年代や個人によってどちらの特性によった感性を持っているかは様々です。

私自身、この2つの世代について関心が高く、日々調べていますが、今回は改めて2つの世代の特徴を整理・比較したうえで、この世代をターゲットとし、彼・彼女らに受け入れられている事例を取り上げながら、成功のためのヒントを一緒に探っていきましょう。

ミレニアル世代とZ世代の比較

ミレニアル世代とは、1980年代以降に生まれ、2000年以降社会に出てきた20~35歳の若者層を指し、Z世代とは、1995年以降に生まれた世代のことを指します。※年代の区切り方には諸説あります

少し前までは、“若者層=ミレニアル世代”として扱われていましたが、Z世代の年長者も大学を卒業して社会デビューを果たす時期を迎えて購買力が高まっており、Z世代について注目される機会や彼・彼女に関するリサーチ結果等も増えてきました。(文末に参考情報を記載)

デジタル関与について

ミレニアル世代・Z世代ともに、インターネットやデジタルデバイスが浸透し始めた時期に育ったといえますが、ミレニアル世代は人生の早い段階でデジタルが普及し始めた「デジタルパイオニア」、Z世代の幼い頃にはデジタルデバイスがある程度成熟し、かつそれらを使ったサービスを利用できた「デジタルネイティブ」であるといえます。

具体的には、Z世代はミレニアル世代よりもSNSに親しんでいることから、社会問題についての興味関心が高いといわれています。

また、デジタルネイティブであるZ世代は、ミレニアル世代よりもネットリテラシーが高いようです。とくにプライバシーの取り扱いに関しては慎重で、Instagramの“ストーリーズ”やSnapchatのような「投稿しても消える」「あとに残らない」SNSを好んで利用することも特徴です。

Z世代とミレニアル世代の違い

ジェンダーや国籍など、どの世代よりも“多様性”を認めやすい傾向にあるのもZ世代の特徴的といえます。他人の多様性を受け入れることに抵抗がないだけでなく、自分自身が“どんなことに心を揺さぶられるのか”ということに敏感で、消費行動においても、自己表現としてそれをSNSで語れることが一つの基準になります。

故に、大衆化をすすめるようなメッセージよりも、“自分らしさ”“ユニークさ”を表現したメッセージのほうがZ世代をつかむといえるかもしれません。

また、この世代はデジタルネイティブでありながら、ECよりもリアル店舗で購入したり、デジタルでは体験できないリアルな体験に重きを置いたり、アナログなものに触れる体験を面白がる傾向にあります。

以上を踏まえ、Z世代のキーワードをいうならば、個性や、個人によりそったパーソナライズ、ユーザーのラベリングを問わないジェンダーフリーリアルさなどが当てはまります。

一方でミレニアル世代は、個性というよりはコミュニティや“共感”を重視することが特徴です。SNSを通じて、同じ趣味を持つ人や近い志向の人と繋がる傾向にあり、界隈での口コミをきっかけに購入にいたることも多いです。「好きなインスタグラマーが紹介していた」「この人のライフスタイルが好き、マネしたい」といった理由での購入も多く、誰かに共感してもらうために自ら情報発信することにも積極的です。

また、この世代の多くは景気の谷間に育った経緯もあり、むだなものを持たない “ミニマリズム”の価値観も特徴的です。彼・彼女らは高価なモノが欲しいというよりは、旅行やアクティビティへの参加など経験を得る「コト消費」が重んじられます。それ故、生活や娯楽に必要なモノは所有せず共有するシェアリングエコノミーやサブスクリプションのサービスが人気を集めるのです。

ミレニアル世代・Z世代へのアプローチを事例から読み解く

そんなミレニアル世代・Z世代に受け入れられている企業事例にはどのようなものがあるのでしょうか。サービス、商品・プロダクト、メディアという3つの観点で見ていきましょう。

サービス:FABRIC TOKYO×丸井

新宿マルイ 本館の店舗
プレスリリースより引用

オーダースーツのD2Cブランド「FABRIC TOKYO(ファブリック トウキョウ)」と、マルイやモディを運営する「丸井グループ」は資本業務提携を行い、デジタルとリアルを融合した“売らないお店”の展開をスタートしています。

ファブリック社はもともとネット専業でしたが、現在は実店舗を構え、このうち3店が「新宿マルイ」や「渋谷モディ」など丸井の店舗に入居しています。ユーザーは各店舗で採寸を行い、サイズデータをクラウド上に登録し、その後はワンタップでオーダースーツやシャツをオンラインで注文できる仕組みになっています。さらに、店舗では数百種類の生地を実際に見ることもでき、直感的に好みの質感や色合いを確認することができるのです。

店舗面積は通常のスーツ店の半分以下ながら、売上はほぼ同等通常店舗に比べ、坪単価で2倍以上の収益を上げているそうです。

オンライン上でいつでもどこでも、どんなモノでも買える時代。数百種類あるバリエーションから、採寸・生地の確認などリアルのほうが安心で必要とされるサービスを得られる経験部分のみを店舗で提供、購入はオンラインから自分のタイミングでスムーズに行うというのは、個性と品質をともに重視し、デジタル活用世代でありながら、「リアル」に重きを置くZ世代に適したサービスであるといえます。Z世代の年長者は大学を卒業し社会に出始めている今、ますます期待されているサービスです。

商品・プロダクト:FUJIFILM「チェキ・写ルンです」

プロモーションムービー(イメージ画像)
プレスリリースより引用

スマートフォンの普及により、カメラ市場が一気に縮小する中、1980年代~1990年代に人気を博したインスタントカメラ「チェキ」や使い捨てカメラ「写ルンです」が現代の女子大生を中心に流行しているのをご存じでしょうか。写ルンですの売り上げはブーム前と比べて3年間で5倍に伸び、チェキの販売台数は2018~2019年の1年間で1002万台を突破しています。

このブームの背景にあるのもやはりスマートフォンとSNS。Instagram上で「#写ルンです」のついた投稿だけで77万件以上流通しています。スマホで簡単に写真を撮れるようになった現代、“撮影してからみられるまでにタイムラグがありどんな写真が撮れているかわからない、枚数にも制限があり、しかも出来上がる画像にはノイズが入っている”というインスタントカメラや使い捨てカメラの特徴が、“エモい”と偶然性のある面白さのある新しい体験として受け入れられているようです。

この流行は、単なる偶発的な盛り上がりだけでなく、ターゲット女性の好む“韓国”のドラマで使用されたことや、実際にプロダクトのファンであるインフルエンサーがいることなど“小さなバズの芽”を活用したプロモーションを展開したりと、企業側が仕掛けていったことで広がりを見せました。スマホで撮影した画像をチェキプリントに出力できるプリンターやInstagramに対応したフィルム製品など関連商品も新たに発売しています。

インターネットが日常にしみこんでいるZ世代の目には、逆にアナログなものが新鮮に映っているということもいえるのかもしれません。そして、その新鮮さは必ずしも「目新しいもの」ではなく、懐かしさを感じる(子どもの時に見た、親兄弟が使っていた、など)ものを“エモさ”として楽しむ傾向があるようです。

さらに、だれもがスマホのカメラで撮影をする中「人と違った投稿をしたい」という欲求に対して、独特な味わいのあるインスタントカメラや使い捨てカメラの写真の特徴がマッチしたともいえます。

他業界でも、「クリーム・ソーダ」やレトロな空間のある純喫茶がブームになったり、2019年のトレンドアイテムであるハンディファンやココアシガレットなど、レトロやアナログなものが人気を集め、SNSでも多数投稿されています。”この時代にあえてレトロ・アナログな〇〇”という切り口は、様々な業界で挑戦できる枠組みかもしれませんね。

メディア:コスメECプラットフォーム「NOIN」

プレスリリースより引用

Z世代・ミレニアル世代の中でも20代 のユーザーに支持される化粧品に特化したECプラットフォーム「NOIN」は、Instagram公式アカウント・スマートフォンアプリ・ECサイトを総合的に運営しています。設立2年弱で、月間流通額1億円、アプリDLも200万円突破と、急成長しているメディアの1つです。

NOINのユーザーとのファーストタッチポイントの多くは公式インスタグラム「noin.tv」で、フォロワー数は23万人を超えます。集客のエンジンともいえるこのアカウントの月間リーチ数は1000万、インプレッション数は5000万と大きな規模。

人気の秘訣は、“人間味あるコミュニケーションから生まれるロイヤリティ”です。コンテンツの制作は一切外注をせず基本的に社内の編集部で内製しており、ユーザーからの悩みや問い合わせには、美容部員のキャリアを持つ専属スタッフが1対1でカスタマイズ対応しているのが特徴的です。

テンプレートは一切使わず、1日数百件のやりとりをしており、「初めてのデパコス(デパートで販売されているブランドコスメ)を買いたいのですが何がおすすめでしょうか」「皮脂による化粧崩れに悩んでいて、メイク直しに良いファンデーションを知りたい」など様々なユーザーから寄せられる声に向き合って、コミュニケーションを図っています。さらに問い合わせ対応にとどまらず、ECで購入された商品の発送時には全ての商品に「大切に届けてください」とスタッフによる手書きのメッセージを添えています。

プレスリリースより引用

こうしたコンテンツ制作から実際の商品を手元に届けて使ってもらうまでの現場スタッフの熱量と、ひとつひとつのきめ細かく人間味の感じられる対応が、NOINに対する信頼につながっているようです。

おわりに

今回は、コミュニケーションをとる「ターゲット」を知るため、「ミレニアル世代」「Z世代」について、整理していただくことができたでしょうか。社会全体で多様化が進む中、ミレニアル世代・Z世代はとくにその傾向が強く、一概に「〇〇が好き」と世代全体をくくることは難しいものです。そのため、傾向を抑えたうえで、この世代の中でもどんな属性・志向の方々にアプローチしていきたいのか、発信者側が明確にしておくことも必要かもしれません。

社会的な意義や背景が、選択の際の一基準となりうるミレニアル世代・Z世代をよく理解し、寄り添っていくと、彼・彼女らとだけのコミュニケーションを考えるのでなく、それを取り巻くステークホルダーとの関係性をよりよくすることが相互に関連していることに気づきます。まさに「パブリックファースト」な発想や視点が今後より求められることになっていくのでしょう。

参考情報(国内)
Z世代の特徴と傾向ーー「Criteoショッパーストーリー」に もとづくレポート
ミレニアル世代(19~25 歳)の価値観と旅行に関する調査
消費者事故等に関する情報の集約 及び分析の取りまとめ結果の報告(2019年)

参考情報(国外)
STRESS IN AMERICA™ GENERATION Z
The Next 20 Years: How Customer and Workforce Attitudes Will Evolve
The Deloitte Global Millennial Survey 2019


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