こんにちは。ソーシャルメディアプランナーの小川直樹です。
突然ですが、みなさんはスーパーボウルをご存知でしょうか?
スーパーボウルとは、プロアメリカンフットボールリーグであるNFLの優勝決定戦のことです。アメリカの大会でありながらオリンピックやサッカーワールドカップを凌駕するほどのビッグイベントです。
今回は、なぜスーパーボウルとソーシャルメディアマーケティングが関係するのか?という点を踏まえて、最新事例を紹介します。
企業の話題作りの場として魅力的なスーパーボウル
スーパーボウルが企業の話題作りの場として魅力的な理由として2つのことがあげられます。
- 視聴者数が1億1,400万人を誇っていること(アメリカのテレビ史上トップ記録)
- 放映時の30秒間のスポットCM枠が破格の400万ドル(約4億円)
世界を見渡しても、こんなにたくさんの人の注目が集まる場は他にはないのではないでしょうか。そのため、CM枠は破格とはいえ多くのグローバル企業が出稿しています。
また最近は話題作りを最大化させるために、CM出稿だけではなく、ソーシャルメディアと連動した”マス×ソーシャルメディアマーケティング”が主流となってきています。
いかにしてソーシャルメディアとマスメディアを連動させるのか、またどのように施策を組み立てているのか、2つの成功事例をもとに、これからのソーシャルメディアマーケティングについて紐解いていきます。
KIA Motors(起亜自動車):テクノロジーを活用したキャンペーン
今年行われたスーパーボウルでは、米KIA Motorsグループが「#AddPizzazz」(活気を加える)と題し、CMとソーシャルメディアを連動させたマルチメディアキャンペーンを実施しました。
次世代のオプティマのコンセプトである洗練さ、乗る人を魅了するスタイリッシュさをベージュの靴下(従来の普通のもの)、カラフルな靴下(新オプティマ)に例え、表現しています。
またCMが放映される前に、選出された100名のインフルエンサーたちにカラフルな靴下を送付し、自分たちならではの活気ある生活を靴下で表現させることで、新オプティマが日々の生活を陽気に、そして活力を与える様子を可視化しました。
KIA Motorsのキャンペーンにおける最大の特徴とは?
今回のキャンペーン最大の特徴として次のようなことが挙げられます。
- IBMワトソンのPersonality Insightにより最適なインフルエンサーを選出できたこと
- それにより拡散及びエンゲージメントの効果を最大化できたこと
その結果、ソーシャルメディア上でインフルエンサーの投稿に触れた人の70%以上から肯定的な意見を集めるほど、成功へと繋がりました。
最適なインフルエンサーを選出したIBMワトソンとは?
IBMワトソンは、僕たちが知りたい・欲していることに対して、様々なデータを分析し、最適な答えを導くツールです。IBM社は「人間の持つ機能を拡張するもの」と発表しています。
例えば、料理を作るときにIBMワトソンを使えば、その日の気分や今ある食材、健康状態、あるいはニュースやソーシャルメディア上で話題になっている料理を分析し、最適かつ自分では思いつくことのできないレシピを提案してくれます。
今回のインフルエンサーを用いたキャンペーンでも、これまでの自社のプロモーション実績やソーシャルメディア上での影響力などを定量的に分析し、選出したからこそ成果がでたのではないでしょうか。
IBMワトソンをはじめとしたテクノロジーの力によって、効果を可視化・蓄積することでプロモーションのPDCAサイクルもより具現的かつ、速く回すことが可能となります。
2016年はテクノロジーを用いたプロモーション手法がトレンドとなってきそうです。
Oreo(ナビスコ社):リアルタイム性とアイデアを活かしたキャンペーン
第47回スーパーボウルの際、第3クォーター中に34分の停電が発生したのをご存知でしょうか? 滅多にない絶好の機会としてナビスコ社のOreoソーシャルチームはTwitterで次のような投稿をしました。
Power out? No problem.
— Oreo Cookie ()
15,467リツイートもされたこの投稿には、次のようなことが書かれていました。
「Power out? No problem(停電?問題ない)」
「You can still dunk in the dark(暗闇でもOreoをミルクに浸すことはできる)」
アクシデントもアイデアに変え、ソーシャルメディアのリアルタイム性も存分に活かしたキャンペーンとなり話題になりました。
なぜOreoソーシャルチームは素早く対応できたのか?
ではなぜこんなにも素早く対応することができたのか、それはOreoソーシャルチームがスーパーボウル中、いつ何時も対応できるよう15人体制で待機していたからです。
WEBデザイナーやマーケティング戦略、それぞれの専門家を待機し、臨機応変に対応することでどこよりも早く最もホットな話題を取り上げられるようにしていたのです。
スーパーボウルの視聴中は約4割以上の方々がスマートフォンを始めとするテレビ以外のスクリーンに触れているとも言われており、人の力で視聴者の“今”とコンテンツのストーリーを連動させることで成功へと導いた事例となっています。
まとめ
IBMワトソンというテクノロジーを駆使し、最適なインフルエンサーを選出し事前に盛り上がりを醸成したKia Motors(起亜自動車)の事例、15人体制のソーシャルメディアチームを組み、人の力でリアルタイムにイベントと連動したコンテンツを投稿したOreoの事例からわかるように、スーパーボウルのようなビッグイベントだからこそ、ソーシャルメディアを連動したプロモーションを実施することで他社との差別化、話題性の創出を実現することができます。
さらにスマートフォンの普及とともに、ソーシャルメディアユーザーが増えている今だからこそ、オフライン・オンライン問わず、個々のメディアだけのプロモーション、そしてキャンペーンの成功はありえません。
テレビを見ながらTwitterやFacebookを見る、ライブやイベントに参加しながら写真を撮りInstagramに投稿するなどマルチメディアで接しているユーザー個々の体験を考慮し、プロモーションストーリーを連動させることが必須となります。
これからは、ユーザー個々のストーリーに合わせたプロモーション設計をしていくにあたり、テクノロジーを用いた定量的なデータ分析、ソーシャルメディアの“今”を知っている専門家をいかに上手く活用するか、という点が重要になってくるのではないでしょうか。