令和時代の「ポップアップストアPR」を最新事例から読み解く──PR TIMES渡邉梨夏子|パブリックファースト vol.4

2019 12.12

みなさんこんにちは。PR TIMESプランナーの渡邉と申します。

本連載では「パブリックファースト」をテーマに、わたしたちPR TIMESのPRプランナーが、広報PRパーソンやデジタルマーケターに向けてPRやコミュニケーションについてお話しています。 

いよいよ連載4回目。今回は「ポップアップストア」をテーマとして取り挙げたいと思います。なぜこのテーマ設定にしたのかと言うと、筆者自身が“ポップアップストアが好き”という理由もひとつあるのですが…ソーシャルでのコミュニケーションが当たり前になっている時代だからこそ、リアルな空間を作り出し、生活者やユーザーとのコミュニケーション接点を持てるポップアップストアは今後PRやマーケティング施策の大きな柱のひとつとして、益々注目を浴びていくはずだと考えているからです。

ポップアップストアを活用したPRに関連する最新事例や興味深いコンテンツを、わたしの視点を絡めてご紹介しながら、デジタルとリアルを横断する“ポップアップストアコミュニケーション”の成功のヒントと未来について考えていきたいと思います。

拡がる「ポップアップストア」PR

ポップアップストアとは、路面の空きスペースやショップの一部を利用して、期間限定で開かれる出店形態のことです。諸説ありますが、もともとは欧米を中心に拡がりをみせていたものが、日本国内でも注目が高まったのが2015年ごろだといいます。

令和元年、すでにkakeru読者のみなさんにとっては、耳慣れたことばになっているのでないでしょうか。EC中心の小売市場の変化やSNS利用シーンの拡大、ユーザーの購買行動の変化という背景も後押しして、ポップアップストア市場は近年益々拡大しているように感じられます。

まずここで「ポップアップストア」に関するプレスリリースの配信本数の推移と、メディアでの関連情報の報道機会・生活者の関心度の推移に関するデータを紹介します。

ポップストアの「開店数」

PR TIMES提供

ポップストアに関する「報道数」

ポップストアに対する「消費者の関心度」

「ポップアップストア」に関連する、プレスリリース配信本数(PRTIMES調べ)は2016年78本、2017年153本、2018年は266本と、2年間で約3.4倍に伸びています。あわせてメディアでの報道機会も増えたことで、生活者にとってもより馴染みのあるものになってきていると言えるでしょう。

多様化するポップアップストアは”五感”で楽しませる時代に

ポップアップストアは、消費者とのリアルな接点を生み出す場として、また実験的な販売の場としての活用されることが多いでしょう。ポップアップした空間のなかでは、対象となる商品やブランドの世界観を表現しやすく、テストマーケティングの場としても有効ですし、期間や場所を限定することで注目が得られやすくなるという利点があります。

ポップアップストアが登場しはじめた当初は、店舗での売上獲得が出店目的である場合が多かったように思うのですが、今では企業やブランドのストーリーを伝え、裏側にある“想い”を体験してもらい、さらにそれをSNSでシェアしてもらうことを前提とした出店が増えているように感じます。

たとえば、指定のハッシュタグを付けて投稿するとノベルティがもらえたり、一般向けにオープンする前には報道関係者へのプレビューだけでなく、インフルエンサーへのレセプションを設けたりして、ソーシャルでの情報量を増やす施策が当たり前になりました。

生活者を取り巻くテクノロジーの進化や接触するコンテンツの幅が広がり、単純に“ポップアップ”(=突然出店)しただけでは、関心を持たれにくくなっているのが現状です。近年のポップアップストアの構成要素を簡単に分析すると、様々な“刺激”に慣れつつあるターゲットに届けるために、五感で楽しませるようなコンテンツを準備していることがわかります。

■視覚
“映え”るコンテンツ・実際に来た人だけでなく、SNSで投稿したときに楽しめるかデジタルでシェアしたときに楽しめるかどうかも重要。動きがあったり、光ったり、他の人が投稿していないような、“ここだけ”の画が撮影できるかどうか

■聴覚
最近では“話題性”という観点からか、VR体験などが盛り込まれる場合も増えている・ライブパフォーマンス実施によるイメージ醸成やトークイベントを実施することにより、聴覚から得られる情報価値を高めるような取り組みもある

■味覚
食品関連のポップアップイベントはもちろんのこと、化粧品でも原材料に使用している素材を使用したフードやウェルカムドリンクを提供することも。味覚を満足させるだけでなく、写真映えするアイテム(視覚を楽しませる)として活用されることもある

■嗅覚・触覚
ポップアップストアの醍醐味でもある。実際にストアに訪れたひとだけが体験でき る。化粧品のタッチアップや香水のテスター・ファッションアイテムの試着など。近い将来はテクノロジーによってこれらもソーシャルシェアできるようになるかもしれない

最新事例から読み解く、ポップアップストアのトレンドとは

ここまでポップアップストアPRの拡がりや、多様化についてお伝えしてきました。ここからは、最新の事例やわたしが注目した興味深いコンテンツについてご紹介していきたいと思います。

※当社のプレスリリース配信プラットフォーム『PR TIMES』で、関連するプレスリリースを配信いただいた事例についてはURLを掲載しております。

ライブ配信にも対応した“ムービージェニック”なコンテンツを用意

事例:カネボウ化粧品『LUNASOL』

▲メイクブランド×ファッションショーでリブランディングのインパクトを表現

カネボウ化粧品が展開するプレステージブランド「ルナソル(LUNASOL)」。ブランド誕生20周年のタイミングで秋コレクションからコンセプトを刷新し、リブランディングを実施しました。

過去に同ブランドが実施してきたポップアップイベントは、新商品のタッチアップコンテンツがメインでしたが、今回の目玉はファッションショー。会場の中央には約12メートルのランウェイが設置され、国籍も様々なモデルたちが新コレクションを使用したメイクアップとともに、ハイファッションに身を包んで登場しました。

来場者の多くがこのステージにカメラを向け、Instagramの“ストーリーズ”に投稿したり、“ライブ配信”を実施したりする様子が見受けられました。

事例:FIVEISM×THREE

▲人気アーティストによるライブパフォーマンスを招待制のポップアップイベントで実施

メンズコスメとしても注目を集めている「FIVEISM×THREE」のコスメブランド。ローンチ1周年を記念し、完全招待制のクローズドなポップアップイベントが実施されました。

渋谷のライブハウスで話題のアーティストによるパフォーマンスとともに、コスメのタッチアップやメイク体験のコンテンツを用意。クローズドなイベントということもあり、常にメディアプレビューが実施されているかのような独特な雰囲気のなかで、会場でのライブパフォーマンスや、男性たちがメイクと音楽を楽しむ様子が次々とSNS上で拡散されることとなり、美容やファッション感度の高いZ世代に対して刺さるコンテンツを実施できたと言えそうです。

SNSキャンペーンやオンラインコンテンツとの連動施策

事例:株式会社明治・きのこたけのこ総選挙

▲「選挙にいったよ」をシェアしやすい仕掛けを、オフラインでもデジタルでも提供

株式会社明治のロングセラーブランド「きのこの山」「たけのこの里」のリニューアルに伴い、『きのこの山・たけのこの里 国民総選挙2019』を実施しました。特設サイトを用意し、オンラインでの投票を促すことはもちろんのこと、ポップアップイベントとして「実食投票」を実施するというユニークな形で味覚を楽しませる体験を用意しました。

若者の投票離れという社会課題にも言及し、投票者にはSNSに投稿したくなるような「投票証明書」や、SNSでシェアすることでデジタルコンテンツやノベルティを手に入れることができます。

ポップアップイベントにわざわざ足を運んでくれた来場者が楽しめたことはもちろんのこと、SNSキャンペーンとの大きな連動により、来場できない生活者に対しての接点づくりや興味喚起にも繋げることができた事例です。

事例:エルメス・ラジオエルメス

筆者撮影
筆者撮影

▲ブランドの世界観を物語る番組を発信する、“贅沢”なラジオ局

原宿のポップアップスペースに約1か月間『ラジオエルメス』というポップアップ・ラジオステーションがオープンしました。ハイファッションブランド×ラジオという“意外なコラボ”は話題化ポイントのひとつでもあるでしょう。

ラジオ局というだけあって、公開収録スペースが用意されているのはもちろんですが、エルメスブランドのメンズコレクションに使用されている「生地」の展示からVR体験というリッチなコンテンツが来場者を楽しませてくれます。他にも、写真映えするLPレコードの棚から、ゲストの好みのデザインのジャケットレコードを専用の台に置くことで、エルメスの過去のファッションショーで使用された様々な年代の音楽を聴くことができるというコンテンツも用意されていました。

普段はブランドと関わりが少ない人に対しても、ラジオというオンラインコンテンツで広く接点をもちつつ、ポップアップのラジオ局では商品や世界観、またブランドの歴史までをカジュアルに表現しており、“贅沢”な世界観を身近に感じさせることができたユニークなポップアップ施策です。

パーソナライズや“予約制”で特別感を醸成

事例:日本ロレアル・キールズ

▲パーソナライズできるコンテンツを仕込んで「自分ゴト化」を促す

ニューヨークで創業したスキンケアブランド「キールズ」は、同社のサステナブルな事業や取組みを体験できるポップアップイベントを実施しました。ポップアップストア内に、様々なブースを用意し、各ブースを回ることで、参加者は入場時に配られるシンプルなエコバックにスタンプを集めていきます。

アルファベットのスタンプなどで自由にバックをカスタマイズできるコーナーがあったり、参加者の名前入りのオリジナルラベルを作ることができるコーナーがあったりと、環境に配慮した活動をブランドからの一方通行ではなく、ブランド愛用者にも「自分ゴト化」してもらおうという意図が伝わるコンテンツが散りばめられていました。

事例:アマゾンジャパン合同会社・Amazon Bar

▲Amazonの品ぞろえを体験できる!完全予約制のポップアップバー

2014年からお酒の販売を開始したAmazon。日本最大級の品揃えを誇る一方で、『知らないお酒がたくさんある』、『味見する前に買うことに抵抗がある』というユーザーが多かったそう。そんな参加者に対して自分の好みのタイプにあったお酒を試飲できるシステムや、Amazonの品揃えをリアルな空間で表現した360°のリアルディスプレイコンテンツなどが用意され、いつもデジタル上でしか接点のないものがリアルに体験できる場が新鮮な価値を生み出しました。

6日間限定で開催されたこのポップアップバーは、毎日異なるイベントが実施され、事前予約でもチケットが早々に完売になる回もあるなど、コアなファンがより熱量を持って参加し、場合によっては情報を発信してもらうことに繋がっています。

進化を続ける、ポップアップスタイルのPR施策

いかがでしょうか。今回は令和時代になってからに実施された、比較的新しいポップアップストアを活用した事例をご紹介しました。ほんの一部の紹介にはなりましたが、「ポップアップストア」と言っても、その目的や体験できるコンテンツ、アイデアは実に多様化していることを感じ取っていただけたと思います。この勢いに比例するかのように、ポップアップストアやイベントを実施できる場所やスペースも自体もどんどん増えています。

たとえば、2019年3月にオープンした原宿の「jing」では、マスメディアでも大きく取りあげられた「タピオカランド」のポップアップイベントが実施されて注目を集めたポップアップスペースのひとつです。

また、2020年3月には東京・有明にポップアップモール&パークのオープンも控えるなど、ポップアップストア実施を促進させるような環境が整備されつつあるように感じます。その一方で、先に述べたとおりただポップアップストアを出店させるだけでは、商材自体の協力な魅力やバリューが無い限りは、メディアにも生活者にも情報は受け流されてしまうでしょう。

ポップアップストアの”ヒット”のためには、斬新なアイデアや新奇性を感じさせる切り口が必要とされるでしょう。これから、どんなポップアップストアが登場するのか。デジタルとリアルを横断する、貴重なPRコンテンツへの注目を続けていきたいと思います。


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