ゲーム界隈に秘められたマーケティング活用の可能性

2020 6.26

始めまして。kakeru編集部の伊藤@ゲーマーケターの人です。

突然ですが、私は最近思うのです。
たしかにゲーム業界は盛り上がっています。家庭用ゲーム、ソーシャルゲーム、VR・AR、クラウドゲーム、エトセトラエトセトラ。

2018年、家庭用ゲームやスマホゲームなどを合わせた国内のゲーム市場は1兆1660億円という莫大な規模となっています。
同年の映画市場が2225億円、アニメ市場が2900億円と言われており、いかにゲーム市場が大きいかが分かるかと思います。
※2019年度版は記事執筆現在で未発表です。

しかし、「ゲームはオタクのもの」「ゲームは所詮お遊び」と考える人が多いのか、「ゲーム界隈」はまだまだ発展途上ではないかと思うのです。
例えば、先に挙げた映画・アニメ業界では様々なコラボ事例、プロモーション事例があります。

映画業界では、映画に関する広告をテレビ等でよく見かけるかと思います。逆に、映画に広告を忍ばせる事例も記憶に新しいかと思います。新海誠監督の「天気の子」では日清食品やサントリーを始めとする有名企業がタイアップしたことでも話題になりました。

ゲームと同じく「オタクのもの」といったイメージの強かったアニメ業界でも、昨今では地方PRや商品タイアップに引っ張りだこです。

では、ゲーム界隈ではどうでしょうか。テレビでの露出は比較的少なく、タイアップ事例もあまりなく、ゲーム配信者をインフルエンサーとして起用する事例もゲーム自体のPRが主。1兆円を越える市場を有し、ゲーム生配信の延べ視聴時間は2020年1~3月期だけで48億2,400時間(Twitch、YouTube Gaming、Facebook Gaming、Mixerの合計)に上るのにも関わらず、「ゲーム界隈」は閉じたコミュニティとなっているのではないでしょうか。
(ファミ通調べ:https://www.famitsu.com/news/201906/07177561.html)

前置きが長くなりました。今回は、ゲーム界隈を開いたコミュニティにするコラボ事例を3つご紹介します。こうした事例は、界隈内にお金とモノの動きをもたらし、界隈の活性化に繋がるでしょう。これまでのお話でゲーム界隈について興味を持ってくださった方へ参考になればと思い、この記事を執筆します。

【事例1】League of Legends × リポビタンD(大正製薬)

最初の事例は世界有数のプレイ人口を誇り、大規模なプロリーグ・世界大会を開催しているゲーム、「League of Legends」(LoL)と大正製薬のリポビタンDの事例です。

今年のLoL日本リーグ(LJL)では、大正製薬や出前館などとスポンサー契約を結び、様々なコラボ事例を行っています。
その中でも、とくに興味深い事例がこちらになります。

リポビタンDと言えば、「ファイト!一発!」のあのフレーズ。加えて、「ここ一番に力を籠める」というフレーズのイメージがe-Sportsのシーンとこのフレーズの親和性が高い。

さらに、ケイン・コスギさんの起用も完璧でした。元々リポビタンDのCMでも有名なケインさんですが、プライベートでLoL配信もしているゲーマーとしての一面もあります。配信でのにわかではない本気のプレイングと、リスナーとの紳士的でフランクなコミュニケーションから、LoLプレイヤーの中で非常に人気が高い人物でもあります。

(Mildom ケイン・コスギさんのプロフィールページ: https://www.mildom.com/profile/10468083 )

このような状況で、盛り上がるプロリーグ開幕戦の会場にケインさんを呼び、観客と一緒に「ファイト!一発!」と叫ぶコーナーを設けました。マイクを付けていない観客たちの「一発!」の声が、インターネット配信からでもはっきりと確認できるくらいの盛り上がりを見せました。
インターネット配信サイト(Twitch)でも、「ファイト!一発!」と叫んだようにコメントする人がいたり、「現地で見たかった」「楽しそう」「激熱」「これヤベーやつ」といった非常に好意的なコメントが多数寄せられたりと、大盛況でした。
ケイン・コスギさんを会場に呼んだのは2月8日の開幕戦だけでしたが、それ以降も毎回実況・解説などのキャスター陣が「ファイト!一発!」と叫ぶなどの施策を行っています。

この体験は現地にいた人はもちろん、インターネット配信で見ていたリスナー(私含む)に、強烈なブランドイメージを持たせました。疲れた時、ゲームで大事なバトルがある時などに、「リポビタンDを飲んで気合を入れよう」と思わされる事例となっています。

また、この熱はTwitterにも飛び火しています。下のグラフをご覧ください。

これはTwitter上で「リポビタンD」という文字が含まれた投稿の数を日別で表したものです。赤い丸で囲った部分がLJLの試合が行われた日となります。見事に毎回盛り上がっていることが分かるかと思います。試合が無い日の投稿も増加傾向にあり、継続的な口コミの獲得に繋がっています。
(※上記グラフはサンプリングデータなので、実際の投稿件数は左軸が示す数値の5~10倍ほどになります。)

SNS全盛期の昨今、ユーザー制作のコンテンツ(UGC)の数がプロモーションにおいて重要だと言われています。その中でこれほどのUGCを創出したとなれば、非常に効果的な施策だったと言うほかないでしょう。

【事例2】ファンタシースターオンライン2 × ローソン、セブンイレブン

続いては人気MMORPGファンタシースターオンライン2(PSO2)と、コンビニのローソン、セブンイレブンの事例です。

非常に大規模なコラボを行っており、たとえば、
 ・ローソンのプリペイドカード「Pontaカード」のPSO2コラボ図柄を発行
 ・ゲーム内の東京を模したフィールドに、ローソンの店舗を配置
 ・現実世界のローソン店舗を、PSO2仕様に改装
 ・ゲーム内待機スペースに、セブンイレブンの店舗を模したオブジェクトを追加
 ・実際にコラボアイテムを購入できる
 ・毎日現実世界の店舗に行くと、ゲーム内アイテムなどがもらえるスタンプラリー
等々、ゲームとリアルを融合させた施策(一種のO2Oと言えるでしょう)を実施しています。

PSO2ではユーザーが自由にカスタマイズできる個人の部屋が割り当てられますが、コラボアイテムを使って現実のコンビニそっくりの部屋を作ったUGCも公開されていました。このようなUGCをはじめとする口コミの醸成・ブランド接触の強化が、この施策の効果と言えるでしょう。

また、直接売り上げ・契約に繋がる効果もありました。

こちらは、リポビタンDの事例と同じツールを用いて算出したTwitter上での「Pontaカード」の言及数です。ローソンとのコラボが発表された2019年6月8日から申し込み期限の7月15日まで、継続してUGCが投稿されていることが見て取れます。投稿内容を見ても、Pontaカードの購入報告や購入を進める投稿など、購買に直結するようなUGCが散見されます。

このようにゲームとコラボし、ゲーム内での露出やコラボ商品の発売などによってブランド認知や来店促進、売上向上など様々な効果が見込めるのです。

【事例3】Team Liquid × マーベル

最後は、Team Liquidとマーベルのパートナー事例です。
Team Liquidとは2000年に設立された古参のプロe-Sportsチームで、先述したLoLの欧州リーグでも強いチームとして有名です。

本コラボでは、特製Tシャツを販売しています。

(Team Liquid & Marvelコラボ特設ECページ:https://store.teamliquid.com/collections/shirts)

プロゲーマーは、ゲーマーにとっては(少なくとも私にとっては)ヒーローです。自分の好きなゲームの「魅せる」プレイングで観客を沸かせる。大きな大会で全力を尽くし、成績を収める。このような活躍をするプロゲーマーに、ヒーローを重ねてしまうのです。
そのような意味で、ゲーム・e-Sportsとマーベルは相性が良いといえます。

また、本コラボではマーベルコラボのユニフォームも制作しています。マーベルのヒーロー、キャプテンアメリカのユニフォームを着て実際に試合をしたこともあります。
(登場シーンは3:20~です)

これはTeam Liquid、マーベルそれぞれのファンにとって非常に印象深いシーンとなったでしょう。特に冒頭で、選手がキャプテンアメリカの盾を持って入場するシーンは興奮間違い無し!
Twitchの配信では、「どっちが本物のアメリカだ!?」「アメリカ vs アメリカだ!」といったコメントが寄せられて、ユーザーも盛り上がっていました(この試合は欧州リーグのTeam Liquidと、北米リーグの強豪Fnaticとの国際試合でした)。

このコラボをきっかけにコラボグッズの購入のみならず、LoLのゲームプレイやマーベルのコミックの購買にも繋がる可能性があるでしょう。

以上のように、ゲーム界隈にはまだまだ秘められた可能性があります。加えてARゲーム、VRゲーム、5G、クラウドゲームなど界隈にとって追い風が吹いています。この状況で、ゲーム界隈に乗らない手はないでしょう。
ゲーマーにとっても楽しく、ゲーム界隈の促進に繋がり、社会全体を活性化する。そんな事例を作っていきたいものです。

Writing 伊藤正志
Design 會川誠也
Support 酒井大輔今城加奈子


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