\モモちゃんおかえり!/VR開発を機に振り返るPostPet(ポストペット)の今までとこれから

2017 11.28

こんにちは。kakeru編集長の三川です。

みなさんは「PostPet(ポストペット)」をご存知でしょうか?

PostPetは、インターネット黎明期に登場した“ピンクのクマがメールを運ぶ”というキャッチフレーズの愛玩電子メールソフト。30代〜40代の人にとっては、懐かしいメールソフトかもしれません。かくいう私も小学生の頃、愛用していたユーザーのひとりでした。学校に行けば友だちと会話できるのに、放課後急いで帰ってピンクのクマ”モモちゃん”にわざわざ手紙を託していたのを思い出します。

2016年末、新タイトル「PostPet VR」の開発が発表され、クラウドファンディングで資金調達が実施されました。少しずつ形になっているようで、今年の4月末、PostPet VRの体験が行われました。

本記事では、そのPostpetVR体験会の様子と当時の開発者メンバーのトークイベント、さらには八谷さんへの個別取材をさせていただき、PostPetの未来を紐解いていきます。

※本記事は2017年4月末に行われたPostPet VR体験会にて取材した記事となります。

PostPetのあの世界がVRで蘇る!

今年の4月末、PostPetのVR体験会にお邪魔してきました!八谷さんにVRの説明を受けます。

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VRゴーグルを装着し、その様子を見守るモモちゃん。

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仮想現実でモモちゃんをなでなでします。

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他のキャラクター(シンゴRとジンパチ)もいます。

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体験会では元So-net、PostPet開発メンバーによるトークセッションも催されました。開発者の八谷和彦さんにも話を伺ってきました。

元So-netメンバーによるトークショーで明かされる当時の裏話

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元So-netの中村恒司さん、中西康裕さん、小出ユリ子さん、またPostPet開発メンバーの幸喜俊さん、真鍋奈見江さんなどが集まったトークセッションでは、開発者の八谷さんも知らなかった裏話もありました。

PostPetは持ち込み企画で生まれた

開発者の八谷さんと、当時So-netでプロモーション担当だった小出さんによると、PostPetは漫画家のように、開発メンバー(八谷さん、幸喜さん、真鍋さん)が、プロトタイプを作ってSo-netに持ち込んだとお聞きしました。

当初からポストペットパークのような構想があり、ソフト単体で売るのではなく、継続してサービスを利用してもらうことで利益を生む仕組みを考えていたために、ISP(インターネットサービスプロバイダ)が必要だったとのこと。

その時のSo-netの窓口の小出さんに「こんなに可愛いなら、5万円でも買います!」という一言で取り組みが始まったそうです。

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PocketPostPetがdocomoとカシオの3社で開発された理由

PostPetといえば、当時So-net、docomo、カシオの3社でPocketPostPetが開発されました。開発背景としては、当時PCを個人で利用したいというエンドユーザーのニーズは高まっていたようですが、やはり価格面がネックだったようです。

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そこで、ハードウェアもPostPet側で制作しようと、親会社であるソニーのVAIO部隊に掛け合ったそうですが、諸々の事情から断られ、日立をはじめ他の企業に話を持ちかけ、最終的にカシオが協業してくれることになったとのこと。

そして、もう一社のdocomoに関しては、当時同社からリリースされていたポケットボードの開発者が持っていた携帯のストラップが「ももちゃん」ということが雑誌のインタビューで分かったそうで猛アプローチをかけたそうです。こうして、3社によりソフトだけではなく、ハード面でもPostPetオリジナルのサービスを展開できたのです。

iMac、iBookにPostPetが導入された理由

ハードウェア開発の取り組み以外にも、PCを購入した時点ですでにPostPetが導入されている状態を目指すべく、各PC企業にバンドリングを提案されていました。

一番最初に導入してくれたのは、コンパック社。その担当者がAppleに移った際に、日本のスタッフと共に直接Apple本社へ赴き、スティーブ・ジョブズに直接プレゼンをして導入が決定したそうです。この話は八谷さんもご存知なかったそうで、会場が1番盛り上がった瞬間でした。ジョブズも認めたソフトウェア!

PostPetはユーザーサポートがあって成り立ったもの。だからこそ、クラウドファンディングを活用した

開発者の八谷さんに個別インタビューもさせていただきました。

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今回発表した「PostPet VR」を開発しようと思った理由、またクラウドファンディングを活用することにした理由を教えてください。

八谷:PostPetが今年で20周年を迎えるにあたって、グッズの発売は計画されていたみたいなのですが、自分たちでも何かできないかな、と思っていたんです。ただし、予算が潤沢にあるわけではないので、自然とクラウドファンディングを活用する方向になっていきました。

また、PostPetは当時にしては珍しく、一般ユーザーが参加する形で開発されていたので、クラウドファンディングを活用したら、当時の雰囲気を演出できるのではないかな、という思いもありました。リターンのコースに「ナースコース」や「ドクターコース」があるのは、スタッフの力だけでなくユーザーサポートがあってPostPetが成り立っていた、という歴史があるからです。

VRの技術を活用しようと思った理由は、すでに自分の作品として開発したものがあり、面白いことができると分かっていたので、VRを活用することにしました。

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当時のPostPetはメールのやり取り、キャラクターとのコミュニケーションがメインだったと思うのですが、コミュニケーションという観点でPostPet VRはこれまでと目指しているところは異なるのでしょうか?

八谷:目指しているところは全然変わらないです。VRは導入のハードルが低いから選んだだけであって、最終的にはPostPetのスマートフォン版を出したいと思っています。

PostPet VRは2002年にリリースした「PostPet V3」をもとに開発していて、ローポリゴンですごく軽いのでスマートフォンでもサクサク動きます。ただし、いきなりスマートフォン版を出すのではなく、まずはVRだとどんな感じになるのか、見ておきたかったんです。自分たちとしては、PostPet VRはスマホ版の前段階のサービスというイメージを持っています。

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目指すべきはPostPetのスマートフォン版のリリース

今後はメールではなく、メッセージが主体になっていくのでしょうか?

八谷:そうですね、メッセージ主体のものになると思います。自分たちがメール版をあまり開発しなくなった背景には、メールの普及によるスパムメールの増加があったんです。単純にスパム対策ができているか、がメーラの性能を決めるようになり、そこに関してはGmailが圧倒的にノウハウがあり有利でした。また、プライベートのものがメールからメッセージに変わりつつあったので、メールではなくメッセージングアプリにしようと思いました。

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ただし、基本的な設計の思想は昔から変わっていなくて。PostPetのペットたちは“切手の精霊”という扱いで、本当に大切な人としかやり取りできないような設計でずっとやってきました。だからこそ、新たに開発したとしても、友達をどんどん増やす系ではなく、大切な人と密なコミュニケーションをするためにペットを使う。そこの思想はブラさずに開発していくつもりです。

— LINEに近いイメージでしょうか。

八谷:初期のLINEに近いかもしれませんね。最近、どのSNSも「友達かも?」と交流を促進する設計になってきていますが、数十人の大切な人とだけメッセージのやり取りをするサービスもあって良いと思っているので、PostPetがその役割を担えたらな、と思います。

まとめ

最初にも書きましたが、私にとってPostPetは非常に思い出深いサービスです。友だちと仲良くなるためのツールでもあり、パソコンが大好きになったきっかけでもありました。イベント当日、参加者の方々が盛り上がっている様子を見たり、開発者の方々のお話を聞いたりして、「PostPetは昔から深く愛されているし、これからも愛されつづけるんだな」と感じました。

PostPetVRを筆頭に、今後開発されるであろうスマートフォン版のPostPetはどういったコミュニケーションを生み出してくれるのか、これからの動きが楽しみです!


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