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波及効果は95億円!「ULTRA JAPAN」クリエイティブ・ディレクター 小橋賢児 に聞くイベントにおける仕掛けづくりとは |石井リナ(連載20)

2016 1.5

こんにちは、石井リナです。

「小橋賢児」氏と言えば、あなたはどんな「小橋賢児」を想像しますか?

30代~40代の方は、俳優の印象が強いかもしれません。かたやプロモーション業界にいる方にとっては敏腕なクリエイティブ・ディレクター、マルチクリエイターの印象が強いのではないでしょうか?

世界最大ミュージックフェスティバル「ULTRA MUSIC FESTIVAL」を2014年に日本に持ってきたことでも有名だと思います。「ULTRA JAPAN」は2015年に9万人を動員し、経済波及効果は95億円にものぼると言われています。他にも、イベントプロデュースを数多くこなし、ハイファッションブランドから、カフェのリリースパーティーまでマルチに、仕掛け作りをしています。

今回は、多方面で活躍する小橋賢児氏に取材させて頂き、イベントにおけるデジタルプロモーション、仕掛け作りについて、今後の展望についてなど、お聞きしてきました。

小橋賢児とは一体何者?

リナ:まず最初になのですが、小橋さんの職業は何て説明したら良いでしょうか?

小橋:僕自身もよく分からないですが、ひとくくりにするのであればマルチクリエイターが分かりやすいかなと思っています。「ULTRA JAPAN」においてはクリエイティブ・ディレクターですし、イベントプロデューサー、俳優、映画監督などたくさんあるので。

リナ:俳優って表にでる仕事で、イベントプロデューサーって裏方だと思うのですが、共通することは何でしょうか?

小橋:そうですね、「クリエイティブを通して、『気付き』のきっかけを作る」仕事だと思っています。僕としては、そこが全て一貫しているので違和感はないです。

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リナ:小橋さんの様に、多くの肩書き持つ方も増えているなと感じていて、個人的にはすごく理想的だと思っています。

小橋:肩書きは人に説明するものだと思っています。なので、今後もぼんやりした感覚の様な未来はありますが、何になりたいとかって具体的にないんですよね。それに、旅と一緒で、そこで出会った人やモノに感化されながら、前に進む方が楽しいので、そうして仕事も職業も変えていっています。

「ULTRA JAPAN」におけるプロモーションは?

リナ:「ULTRA JAPAN」におけるクリエイティブ・ディレクターは何をされているんでしょうか?

小橋:「ULTRA JAPAN」における本質を常に考えて、プロジェクトを進めていくリーダーの様なポジションですね。コンテンツ内容やプロモーション方法、SNS運用まで「ULTRA JAPAN」はこうあるべき、というのを見せたり考えさせる仕事ですね。

リナ:初上陸の「ULTRA JAPAN」がこうあるべきと示していくことは、とても難しいと思うのですが、何か参考にされてましたか?
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小橋:まずアメリカと日本の肖像権の違いに着眼しました。マイアミの「ULTRA」だと「みんなも一緒にイベントを盛り上げましょう」と掲げているだけあって、お客さんもイベントの様子を自由に撮影することが出来るし、SNSにシェアするのも自由なんですね。一方日本ではLIVEの様子も撮影禁止、Youtubeの動画もすぐに削除されるなどの状況がありました。

リナ:確かに、その辺の規制はナンセンスですよね。

小橋:なので、僕達は海外同様、お客さんと「ULTRA」の相互が権利を持ちながら、Youtubeもフリーで解禁しましたし、当日の様子も生中継しました。

リナ:なるほど。SNSにも力を入れているとお聞きしましたが、どの様に運用されているんですか?

小橋:Facebookは、中心に音楽ファンがいることを前提した程度を考えたコミュニケーション、Twitterはユーザーの声も時にはリツイートしながら、カジュアルなコミュニケーション、Instagramはビジュアルを重要視したコミュニケーション、LINEはフランクで友達に話しかける様なテイストで運用しています。

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リナ:イベントは9月頃だと思いますが、それ以外の時にもSNSでの発信は熱心にされていますよね?

小橋:そうですね。イベント間際にチケットやアーティストの情報だけを発信していても、意味がないと思っているので、1年間通してユーザーとはコミュニケーションを図っています。

にわかファンを巻き込むのは、彼らの方がピュアだから

リナ:「ULTRA JAPAN」の様な規模で、音楽フェスを実施して、コアなダンスミュージックファン以外の層(にわかファン)までを巻き込もうと思った理由は何でしょうか?IMGP0408_R

小橋:ピュアな人ほど人生が変わると思っているからです。洋楽にもフェスにも興味のなかったワカモノがいきなり最先端なテクノロジーや演出、音楽に触れたら、すごく衝撃を受けると思いました。

リナ:それは間違いないですね。私も初めての「ULTRA」は2014年の「ULTRA KOREA」だったのですが、セットやパフォーマンスを見て「こんな世界があったのか」と衝撃を受けました。

小橋:そうなんですよ。たまたま友達に誘われて行ったらめちゃくちゃ楽しかった、その後調べてみたら、韓国でも、マイアミでも、ヨーロッパでもやってると知って、海外渡航をしたり、音楽を聞く様になったり…。そういうワカモノが1人でも増えたら本望です。

インスタジェニックなリアルイベントの盛り上がりについて

リナ:「ULTRA」にも多いと思うのですが、音楽フェスでのコスプレファッションが加速していますよね。そうした若い子たちについてはどう思いますか?
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参照:http://woman.excite.co.jp/News/photo_news/photo/?id=2815923

小橋:そうですね。日本人は欧米人と比べてシャイで、1人でも行動しづらい人種だから、「ULTRA」というきっかけがあって、そうしたファッションや機会を楽しんでいるんだと思います。「我を忘れる瞬間」のきっかけが「ULTRA」なのかもしれないし、需要とマッチしているんじゃないでしょうか。

リナ:今では、「カラーラン」や、「ディネ・アン・ブラン」の様な、華美でインスタジェニックなリアルイベントが流行していると思いますが、どう思われていますか?

※ディネアンブラン…参加者全員が真っ白な装いで、公共のど真ん中で食事を楽しむフランス発のパーティー。
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Dîner en Blanc International
参照:https://www.facebook.com/DinerEnBlanc.Tokyo/photos_stream

小橋:海外では元々あったものがようやく日本に来たというのもありますし、写真を見て一瞬で「行きたい!」と思う、思われる様なイベントに行きたいと、変化してきていると思います。まさしくSNSで自己プレゼンする時代だからですかね。

リナ:ワカモノを中心にそうした欲求が加速してますよね。

小橋:遠くの森の中のイベントとかも行ってみて分かる良さがあるけれども、写真では伝わりづらい。そういうイベントよりも写真で楽しさが一発で伝わる面白さの方がユーザーは受け入れやすく、行きたいと思っていますね。

自発的にシェアしたくなる仕掛けを「線」で作る

リナ:「ULTRA JAPAN」に限らず、ハイファッションブランドのリリースパーティーなどイベントも数多く仕掛けられていますよね。イベントにおいて見栄えなども気にされていたりしますか?

小橋:もちろんそうですね。来てくれるお客さんが「楽しい」「カワイイ」「美しい」って思って自らシェアするようなポイントをいくつも用意するように心がけています。また、入り口からの導線にも気を使って、ここで期待値あがったら、その次はこれを用意しようとかって線で考えることもしています。

リナ:具体的にどの様な施策をされましたか?

小橋:イブサンローランのリップのリリースパーティーでは、1日目にインフルエンサーに来てもらい、2日目・3日目は一般のお客さんが行けるポップアップショップという形をとっていました。「ラビリンス」というテーマを掲げて、フォトコーナーを置いたり、フォグスクリーンを用意したり、タッチ&トライも出来る様になっています。

※フォグスクリーン…人工的に発生させた霧のスクリーン。プロジェクターで映像を映し出すことが出来る。
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リナ:今でこそハッシュタグ施策は一般化していますが、イベントハッシュタグを用意することもハイブランドや、リリースパーティーの中で、先進的だったと思います。他にはどの様なイベントをプロデュースされましたか?

小橋:Fashion Night Out(FNO)でラグジュアリーブランドの「Dior」を担当させて頂きました。

※FNO(FashionNightOut)…表参道・青山・原宿エリアのショップを中心に実施されるファッション業界の活性化を目的に実施される一夜限りのイベント。およそ600店舗以上が参加する。

リナ:FNOでは数多くのブランドがハッシュタグ施策をされていましたが、トップクラスで、投稿数が集まったとお聞きしました。どのような施策をされたのでしょうか?

小橋:イベントハッシュタグに関しては、入ってすぐ、目に着く場所に掲げました。
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小橋:他にも、撮影ポイントの設置や、写真をプリントアウト出来る機械を置いたりしました。フィルムの中に入った様に見せかけて、急にダンスが始まるゲリラライブも実施しました。

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リナ:来場した人はワクワクしますし、思わずムービーや写真を撮ってしまいますよね。

小橋:「撮ってください、シェアして下さい」というのは簡単ですが、自発的に撮りたい、シェアしたいって思わせることを追求しています。

今だからこそ 3カ月間インドへ

リナ:私もリリースパーティーなどのイベントに行かせて頂くことが多いのですが、最近はどれも施策が一緒だなあと感じることも増えました…。

小橋:それは僕も全くの同感ですね。だからインドに3ヶ月間行こうって決めたんですよね。もちろんそれだけが本当の理由ではないですが。(笑)

リナ:え、どういうことですか?(笑)

小橋:自分のコミュニティ内での正解って果たして正解なのか、ってよく感じていて。「中道」っていう言葉があるように両極端な環境を見て、自分や社会の中心を知るように心がけています。

リナ:なるほど、その両極端を見るということが、小橋さんの場合、旅に出ることなんですね。

小橋:そうなんです。情報社会とは程遠いパプアニューギニアや、インドを行き当たりばったりで旅することが、僕にとってそれにあたります。

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小橋:「ULTRA JAPAN」のクリエイティブ・ディレクターが3ヶ月日本にいないことは、リスクの様に感じられるかもしれないですが、自分の為にも、会社の為にも、「ULTRA」の為にも、結果的に良いことになると思っています。

リナ:ちなみに、今後していきたいことや目標はありますか?

小橋:まだ見ぬ職業に出会いたいし、作っていきたいという気持ちが強いですね。個人的には街づくりにも興味があって、町が変われば、人も変わって、人々のライフスタイルも変わるじゃないですか。そういう意味でも、「クリエイティブを通して、気付きのきっかけを作りたい」という気持ちが強いので関心ありますね。

リナ:街づくりも素敵ですね。本日はお忙しい中お時間頂きありがとうございました。

さいごに

「人からみたら良いポジションを確立したと思われるかもしれないが、世界にはもっとすごい人がいるし、面白い人もいる。今こそ日本で仕事しろよと言われるかもしれないが、もっと高みに行くために、インドに行く」という言葉は、私の考え方を変えさせられる様な、なんとも衝撃的な一言でした。

小橋賢児氏に取材させて頂き、感じたのは、奢らない姿勢と、行動力の高さ。今こそインドへ、という判断が出来るのも彼自身の生き様や価値観を表しているのではないでしょうか。

また、彼が語る「職業観」についても、共感する人々は多い様に感じます。職業が1つである必要もないし、未来についても、「ぼんやりとした感覚で描く方が楽しい」という言葉が、私自身、刺さりまくりでした。

携わってきたプロモーションを見ても、小橋賢児氏が、イベントプロデューサーやクリエイティブ・ディレクターとして有能だということはお分かり頂けると思いますが、それを越える人間力に、ハッとさせられる時間でした。引き続き、彼の生み出す「気付きのきっかけ」を楽しみにしていきたいと思います。

それではまた。

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